ママを支える輪を

 読者の皆様の中には、お孫さんの誕生を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか? 厚労省の統計によると2022年、出生数は80万人割れとなり、出生率は過去最低の1.26でした。我々産科医も日々の多忙さから、少子化の現実味がありませんでしたが、昨年の急な出生数減には改めて現実を突きつけられた気がします。

 少子化対策には議論が尽きない一方、妊産婦さんをサポートする環境は日々改善されています。

 2017年から市町村に設置された子育て世代包括支援センターでは、行政や医療機関が一体となり、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を行っています。行政の支援は母子手帳の交付時点で始まりますし、産後健診でも質問票を用いたメンタル面の評価を行い、必要な支援につなげる仕組みも当たり前になりました。たとえば出産後の娘さんがぼんやりしていて「産後うつ」かも? と思われたら、センターに相談するのも一つの手です。

 お産についても多様化しています。無痛分娩を選択できる施設も、希望される妊婦さんも増えています。医療者の教育システムも充実してきました。特に、日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS)が2015年に設立され、母体の急変に関するシミュレーション教育を展開しています。この教育が画期的なのは、産科医、助産師、産科看護師のみでなく、救命医、麻酔医も一緒になって行う点です。救命措置と妊婦さんの特有の病態や対応について双方が理解を深める機会となり、一般産科における母体急変時の対応と高次病院との連携がより円滑に進むようになりました。

 新生児の心肺蘇生(NCPR)についても、2007年より新生児蘇生法普及事業が開始されました。新生児期には脊髄性筋萎縮症(SMA)や重症複合免疫不全症(SCID)を検出する拡大新生児スクリーニング検査や、新生児の聴覚検査も実施されています。

 産科や小児科の医師は減少しています。「子宝」を育む体制、ママを支援する体制を、これからも社会全体で一緒に取り組んでいただけたらと思います。


医)清和会はちすが産婦人科医院 蜂須賀 正紘 先生


取材記事:ぐらんざ