自覚がないまま重症化も注意したい「低温やけど」

 「低温やけど」は体温以上、60℃以下の熱源が原因で起こるやけどを指します。熱湯や加熱金属によるやけどに比べて、比較的低い温度が長時間肌に接することで生じます。原因は湯たんぽ、こたつ、あんか、電気毛布、電気式カイロ、ファンヒーターなどの暖房器具によることが多く、患者さんは1~3月の寒い時期に増えます。体の部位では長時間局所に熱負担のかかりやすい、すね、足にできやすいです。

 患者さんの年齢分布は30代後半~90代。特に高齢女性の受傷が多く、これは日常生活の動作が減っていることに加えて、冷え性の方が多いのも関連しているでしょう。末梢が冷えていると神経の反応が鈍りがちになるのです。若い人でも飲酒による泥酔などで長時間、体が動かない状態であれば、低温やけどになることがあります。体の動きが鈍るため寝返りが打ちにくくなり、暖房器具に接する時間が長くなってしまうといった場面が考えられます。また、糖尿病で神経障害のある人はなりやすいといえます。

 最初、見た目が赤くなり、その後、水ぶくれができることが多いです。一般的なやけどに比べて思いのほか重症であることが多く、受傷当初に重症度を見極めるのは、極めて困難です。重症化すると患部が白っぽい色や黒っぽい色になります。自覚がないまま進行して初めて異変に気付き受診に至ることもあります。

 高温によるやけどに比べて傷が皮膚の深い部分まで進行するため、治るまでに長い時間がかかることが多いといえます。治癒までに60日以上を要したという報告もあります。

 軽症例では抗潰瘍剤の塗り薬だけで十分ですが、重症の場合には手術などが必要になることもあります。

 最初の見掛けだけで安易に軽症と判断せずに皮膚科や形成外科の専門医を受診することをお勧めします。


安川皮ふ科医院院長 安川晋輔先生


取材記事:ぐらんざ