家の中を歩きやすく整頓 転倒の危険を避けよう

 高齢になると筋力、バランス感覚、平衡感覚が低下し、ふらつきが生じて転倒しやすくなります。高齢者が転倒しやすいのは意外なことに家の中です。敷居やドアの段差にひっかかったり、フローリングの床で滑ったり。踏み台に乗って高いところにある物を取ろうとし、バランスを崩して後ろにひっくり返るケースもあります。屋外では、でこぼこした道や店の駐車場にある車止めにつまずく、坂道で転ぶなどの例が挙げられます。

 高齢者の転倒のけがで一番の問題となるのが骨折です。多い症状の一つが背骨に起こる脊椎圧迫骨折。後ろに転んだときのほか、いつの間にか生じることもあります。基本的に装具で固定し治療します。ほかに目立つのは、太ももの付け根に起こる大腿(だいたい)骨近位端(きんいたん)骨折、大腿骨頸部(けいぶ)骨折です。滑って横に倒れた場合などに、とっさに手が出ず骨盤を強打してしまいます。手術が必要ですが、治療しても後遺症が残りやすく、つえがないと歩けなくなるなど歩行能力が低下します。要介護の認定を受けている人は、要介護度が上がりやすく、健常な人は「要支援」になることが多いといえるでしょう。骨折自体は骨粗しょう症の割合が高い女性に多く見られます。

 残念ながら転倒の頻度を下げる確証ある予防法はありません。有効だと言われているのが、片足で立ち、ゆっくりバランスを取る太極拳です。この太極拳に似た動きの片足立ち体操が効果を出しているという報告もあります。片足30秒ずつ両足で行ってみてください。

 家の中の転倒しやすい場所の改善、整備も大切です。よく通る場所は整理整頓しましょう。高齢者は夜中にトイレに行くことが増えます。転倒しやすいので廊下の明かりはつけておくなど、足元が見えるようにしておくと安心です。玄関、風呂場、トイレに手すりをつけることも転倒の危険を避けることにつながるでしょう。


石橋整形外科 院長 石橋 裕一先生


取材記事:ぐらんざ