要介護を招く “フレイル”にご用心

 フレイルのお話をする前に、まずサルコペニアについてお話したいと思います。サルコペニアとは、加齢や疾患によって筋肉量や筋力が低下する状態のこと。骨格筋の筋肉量や握力また歩行速度が一定の基準を満たさなければサルコペニアと診断されます。このサルコペニアが今、フレイルや要介護の大きな原因ではないかといわれているのです。

 ではフレイルとは何のことでしょう。簡単にいえば、身体や活力が低下し虚弱になった状態。自立から要介護に至るまでの移行状態をいいます。診断基準は歩行速度や筋力の低下で、つまりサルコペニアがベース。ここに加齢や慢性疾患が加わると、活動量やエネルギー消費量の低下を引き起こし、結果として食欲不振が起こり慢性的な低栄養状態になります。低栄養はさらにサルコペニアを助長する悪循環をつくってしまいます。半年間で意図せず体重が2〜3kg以上落ちたり、疲れやすくなったり、活動量の低下はフレイルの兆候。早く正しく介入すれば自立の状態に戻ることができるのも特徴です。

 また、要介護になる原因も注目。全体の約30%が生活習慣病で、約50%が老年症候群になっています※。特に後者は高齢による衰弱が多く、これはフレイルそのもの。骨折・転倒、関節疾患など他の要因を見てもかなりの割合でフレイルやサルコペニアを経由して要介護になっているのです。

 それでは、フレイルの予防にはどうすれば良いのでしょう。まずは、併発疾患をなくすために生活習慣病を管理すること。バランス良く栄養を取ること。そして筋力の低下を防ぐためにある程度の運動をすることも大事です。また積極的に社会へ出ていくことも予防につながります。体調不良を感じても歳のせいにせず、少しの心掛けで自立した状態に戻ることができることを本人はもちろん周囲の家族も心に留めておきましょう。

※厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査の概況」より


福岡市健康づくりサポートセンター センター長 井口 登與志先生


取材記事:ぐらんざ