医療情報室レポート No.282 特集:生活習慣病とヘルスリテラシー

2026年10月2日発行
福岡市医師会医療情報室
TEL852-1505・FAX852-1510

特集:生活習慣病とヘルスリテラシー

 アメリカには1970年代から「健康のための旅行」として宿泊して集中的に健康について学ぶ取組みがある。医師や栄養士から食事について学び、運動の実践から生活習慣そのものを学び直す内容で興味深い。身近なところに視点を移してみるに宿泊せずとも健康について学び、専門家への相談と自身の生活を見直すことのできる場所が福岡市にもある。本会運営の福岡市健康づくりサポートセンターや糖尿病教室がそれにあたる。糖尿病専門医、管理栄養士、保健師、健康運動指導士等が其々の専門性を生かし市民の健康づくりを支えている。
 生活習慣病は、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等が発症や進行に関わる疾患群で遺伝や社会環境等も影響し、がん、心疾患、脳血管疾患等が含まれる。糖尿病等初期には自覚症状が乏しいものもあり、動脈硬化が進むと脳卒中や虚血性心疾患に至りやすくなる。
 一方で医療情報・健康情報に接するにあたり、情報通信技術の発展は目覚ましく、既に身近になったSNSやインターネット、近年急速に普及する人工知能(AI)を通じて容易にアクセスできる環境にはあるが、溢れる玉石混淆の中から正確で信頼に値する情報を取捨選択することは容易にはいかない。「情報リテラシー」「金融リテラシー」等の用語に触れる機会も増えてきたが、医療・健康分野にも「ヘルスリテラシー」との考え方がある。今回は生活習慣病を取り巻く現状や医療・健康情報との向き合い方、福岡市医師会の取組みについて特集する。

●医薬品の目的外使用

 マンジャロ等のGLP-1受容体作動薬等について、2型糖尿病及び肥満症の治療目的外として美容・ダイエット目的で使用されるケースが確認されている。
 厚労省や日本医師会からは適正利用について記者会見を通じ注意喚起や医療機関には通知が発出され、警察等によるサイバーパトロールも実施されている。

〇健康被害(下表参照)
〇医薬品副作用被害救済制度の救済給付対象外の可能性
〇SNS等での個人間売買は違法
〇偽造医薬品・品質劣化の医薬品・成分含量不明な医薬品が含まれる可能性

●ヘルスリテラシー

〇ヘルスリテラシー
 健康や医療に関する正しい情報を入手し理解して活用する能力。
 ヘルスリテラシーを高めることが病気予防や健康寿命を延ばすことにも繋がる。

〇ヘルスリテラシー向上のため
 日本医師会「アップデートしよう!わたしのヘルスリテラシー」

PART1「.その情報、信じて大丈夫?」…「スぺ120」を例に信頼できる情報を見分けることの大切さを説明
PART2「ヘルスリテラシーってなんだろう?」…ヘルスリテラシーの力について高い場合と低い場合で起こること等を説明

〇情報の見極め方 
 情報に接する際の留意点(「情報を見極めるための10か条」より)
  ①根拠確認 ②情報の偏り ③数字のトリック ④出来事の分母 ⑤複数の原因
  ⑥因果関係 ⑦比較の確認 ⑧ネット情報妄信 ⑨情報の出所  ⑩利益・危険比較
          ※厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』eJIMより作成

〇ヘルスリテラシー尺度(HLS-14)
 ヘルスリテラシーを評価する尺度で、「機能的」「伝達的」「批判的」の3段階からなり、一人ひとりの理解や情報の受け止め方を踏まえた説明やコミュニケー ションを考える手がかりとなる。

機能的リテラシー
基本的な情報を理解する力
伝達的リテラシー
情報を入手し、伝え、活用する力
批判的リテラシー
情報を吟味し判断する力
病院や薬局からもらう説明書や
パンフレット等を読む際に
病気や治療・健康法について 病気や治療・健康法について
見聞きした情報に対して
① 読めない漢字がある ⑥ いろいろなところから
情報を集めた
⑪ 自分にもあてはまるか
どうか考えた
② 字が細かくて読みにくい ⑦ たくさんある情報から
自分が求めるものを選び出した
⑫ 信頼性に疑問を持った


③ 内容が難しくて
分かりにくい

⑧ 自分が見聞きした情報を
理解できた
⑬ 正しいかどうか聞いたり
調べたりした
④ 読むのに時間がかかる ⑨ 自分の意見や考えを
医師や身近な人に伝えた
⑭ 病院や治療法等を
自分で決めるために調べた
⑤ 誰かに代わりに
読んでもらうことがある
⑩ 見聞きした情報を
もとに実際に生活を変えてみた

※厚生労働省『「統合医療」
に係る情報発信等
推進事業』eJIMより作成

●生活習慣病と特定健診

 日本人の死因は、がん、心疾患、脳血管疾患等の生活習慣病が約5割を占め、糖尿病が強く疑われる者は約1,100万人と推計されている。
 生活習慣病の予防や発症リスクの早期把握に有用なのが特定健診で福岡市国民健康保険では「よかドック」の名称で実施。40~74歳を対象に血糖、血圧、脂質、腹囲等を調べ生活習慣病に繋がるリスクを確認。リスクが高い場合は特定保健指導につなげ、生活習慣の改善を支援する。
 よかドック受診率は28.8%(R6年度)。自覚症状がなくとも健診から生活習慣病のリスクを発見できる為、定期的な受診が効果的。

★よかドック・よかドック30・特定健診・保健指導
(福岡市国保以外)実施医療機関は福岡市医師会ホームページより検索できます。

 

●福岡市医師会の取り組み

〇第47回ふくおか市民糖尿病教室
 糖尿病を正しく知り、自分の健康について考える契機として本会では福岡市等と糖尿病教室を共催。

〇福岡市健康づくりサポートセンター
『血糖改善サポート』
 糖尿病専門医や管理栄養士、健康運動指導士等専門職により食事や運動等について、生活や身体の状態に合わせた方法を一緒に考え、無理なく続けられる生活習慣の改善を支援。

福岡市健康づくりサポートセンター
福岡市中央区舞鶴2丁目5-1あいれふ4階
TEL:092-751-2806

〇福岡市医師会方式
『糖尿病地域連携パス』
 かかりつけ医から専門医や眼科、腎臓内科、歯科等へ患者を紹介する際に診療情報を共有、必要な医療に繋げる為の仕組み。専門医療機関での診療後はかかりつけ医へ逆紹介、継続した治療に繋げる。

医療情報室の目

★予防医療とヘルスリテラシーの向上

 令和8年7月、「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針2026)が閣議決定された。医療分野では全世代型社会保障の構築②として「攻めの予防医療」が掲げられており、予防医療としては病気にならないための健康づくり(一次予防)、健診・検診等による早期発見・早期治療(二次予防)、病気やけがの後の重症化予防やリハビリテーション(三次予防)迄が含まれる。
 厚生労働省では関連施策として「U.E.N.O.Plan」を公表、その中では自身の健康づくりを主体的に取組めるよう健康リテラシーの向上が図られ、併せて行政や保険者等が実際の行動変容に繋げていくようこれ迄以上に働きかける内容となっている。重点領域として「栄養・食生活」「がん・循環器病等」「歯科保健」「認知症」「リハビリテーション」「性差に由来するヘルスケア」の6つが位置づけられ、地域医療の現場においてもこれら施策に基づいた取組みへの対応が求められていくものと思われる。
 こうした予防医療を進める上でも、健康・医療に関する情報を適切に理解し、自らの健康について考え、行動するためのヘルスリテラシーは欠かせない。健康情報に接した際には前述の「情報の見極め方」に従い、根拠や情報の出所を確認する、示された数字は何人中の何人なのか、他と比較した結果なのかを見極め、都合のよい情報だけが示されていないか、他の原因や可能性はないか、利益だけでなく危険も含めて捉える必要がある。インターネット上の情報についても、検索順位や口コミだけで判断せず複数の情報を比較したい。専門家による情報は、不確実性や個人差を踏まえ、慎重な表現となることが多い一方で、十分なエビデンスに基づかない情報には、目を引くような派手な表現等が用いられることもある。判断に迷う場合には、医療従事者や専門家への相談が有用である。
 必要な情報を分かりやすく伝え、一人ひとりの理解や状況に合わせ共に考えていくことも、我々医療従事者に求められる役割の一つであり、予防医療の充実に努めていきたい。

編集
福岡市医師会:担当理事 高森 義博(情報企画・広報担当)・江口 徹(地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。

(事務局担当 情報企画課 竹川)