医療情報室レポート No.280 特集:令和8年度診療報酬改定のポイント
2026年5月29日発行
福岡市医師会医療情報室
TEL852-1505・FAX852-1510
特集:令和8年度診療報酬改定のポイント
令和8年度の診療報酬改定は3.09%の改定率となり30年ぶりの高い水準となった。病院の7割、診療所の4割強が赤字となる極めて厳しい経営環境にある中、政府は物価高騰や人材不足への対応を重要課題として先に実施された令和7年度補正予算による支援に続き、①物価高騰・賃金高騰への対応、②2040年を見据えた医療機能分化・連携・地域医療確保、③地域包括ケアシステムと安心・安全の医療推進、④医療保険制度の安定性・持続可能性向上 を基本方針に改定されたものである。
今改定の特徴として物価変動等への細かな対応に1年毎の改定率が指定され、改定率3.09%は令和8年度2.41%と令和9年度3.77%の平均値となっており、引上げ分の多くは医療従事者の処遇改善や物価高騰対応に割り当てられている。また、入院医療では新たな地域医療構想を念頭にした機能評価や高度急性期・急性期への配分、外来医療での病院・診療所の機能分化・連携等、在宅医療における重症患者への評価等が行われた。
今回は診療報酬改定率の推移や令和8年度改定における外来医療・在宅医療のポイント、福岡市医師会の取り組みについて特集する。
●令和8年度診療報酬改定の改定率
今回の診療報酬本体改定率3.09%のうち賃上げ対応分が1.7%、物価対応が0.76%、医療機関の経営環境悪化を踏まえた緊急対応分が0.44%と半数以上は物価高騰や賃上げの対応となった。

●改定の主なポイント
賃上げ・物価対応
○継続的な賃上げの有無でベースアップ評価料に差
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は令和6年度改定から賃上げ実施の場合は前回評価料相当分を含む点数からの算定、令和8年度から賃上げを行う医療機関では新たに算定。
※令和9年6月から2倍算定
対象職種…従来の対象医療職に加えて40歳未満の医師、事務職等にも拡大
初診・再診料等
初診料は変わらず、再診料は1点増。
○物価対応に向けた評価
物価対応料が新設。初診時、再診時算定。※令和9年6月から2倍算定

外来医療
○生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)
| (Ⅰ)(Ⅱ)共通 | ・療養計画書への患者署名を不要 |
| ・眼科医療機関連携強化加算・歯科医療機関連携強化加算を新設 | |
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・生活習慣病管理料の算定患者に関するデータ提出を行うことで |
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| (Ⅰ) | ・原則として必要な血液検査等を少なくとも6か月に1回以上は行う |
| (Ⅱ) |
・生活習慣病とは関係のない管理料等は(Ⅱ)の包括範囲から除外 |
○医療DX推進体制整備加算等の見直し
「医療DX推進体制整備加算」、「医療情報取得加算」を廃止し
「電子的診療情報連携体制整備加算」(新設)に再編・統合。
○地域包括診療加算
対象患者に、慢性疾患を有する介護給付又は予防給付を受けている
要介護被保険者である患者を追加。
○時間外対応体制加算
時間外対応加算について評価を引き上げ、名称を時間外対応体制加算に変更。
○機能強化加算の施設基準見直し
施設基準にBCP(業務継続計画)要件が設けられ(R9年5月まで経過措置)、
「外来データ提出加算」の届出を行っていることが望ましいとされた。
○大病院からの逆紹介を推進
診療所または200床未満の病院では、特定機能病院等からの逆紹介を
受けて初診を行った場合に、「特定機能病院等紹介患者受入加算」が新設。
「連携強化診療情報提供料」は算定対象を特定機能病院等、200床未満の病院、
診療所などにも拡大。紹介元・紹介先のいずれによる診療情報提供でも算定可能。
○特定疾患療養管理料の見直し
対象となる疾病について、消化性潰瘍のある患者への投与が禁忌である
非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている場合には、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍の
対象から除外。
○一般名処方加算
後発医薬品の普及が進み、一般名での処方は9割を超えていることから、
「一般名処方加算」が2点引き下げ。
在宅医療
〇地域において重症患者の訪問診療や在宅看取りなどを積極的に担う医療機関を評価。
〇質の高い訪問看護の評価、提供内容やコストに応じた適正な評価。
| 在宅医療充実体制加算 の新設 |
・在宅緩和ケア充実診療所・病院加算について、重症患者の対応体制を有し、地域で在宅医療において積極的役割を担う医療機関を更に評価 在宅時医学総合管理料 (新)在宅医療充実体制加算(単一建物患者が一人の場合)800点 |
| 適切な在宅医療の推進 |
・連携型機能強化型在支診について、平時から訪問診療等を行っている医師により時間外往診体制を確保している医療機関と、それ以外に分けて評価 |
| 同一建物に居住する 利用者への 訪問看護の見直し |
・同一建物に居住する医療者への訪問看護について、人数および一月あたりの訪問日数に応じてきめ細やかな評価に見直し |
| 質の高い訪問看護の評価 | ・地域と連携して精神科訪問看護を提供する訪問看護ステーションの評価を新設 (新)機能強化型訪問看護管理療養費4 9,030円 |
※厚生労働省資料をもとに作成
●福岡市医師会の取り組み
医療・介護保険診療支援講演会<令和8年4月3日(金)>
「令和8年度診療報酬改定について ~改正の背景と概要~」
中央社会保険医療協議会委員 日本医師会 常任理事 黒瀨 巌 先生
※講演動画・当日資料は福岡市医師会会員専用ページ掲載
医療情報室の目
★令和8年度診療報酬改定の影響と今後の体制
国内経済が物価高騰によるインフレで国民生活が苦しい状況の中、医療機関でも公定価格の診療報酬による苦しい経営状況に直面していることは広く知られてきたところだが、今回改定で純粋に財源が上乗せされたことについて、日本医師会松本吉郎会長は、高市早苗総理始め関係大臣・国会議員の方に地域医療の窮状を理解いただけた結果であり、インフレ下での「道しるべ」となる極めて重要な改定との認識を示している。今回の改定が賃上げや物価高騰に重点が置かれたことで、医療業界における人材流出の防止や経営基盤の改善が期待されるが、各医療機関で算定する点数は診療内容に応じ様々である為に今後はその実効性について検証が待たれる。ベースアップ評価料については前回改定からの算定と今回から算定する場合に点数に差分が設けられたこと等での影響が考えられるが、各医療機関には改定の都度遺漏ない手続きが求められる。
超高齢化を迎えた「2025年問題」(団塊世代が後期高齢者入)の年を超え、現役世代の減少から人手不足が深刻化する「2040年問題」(団塊ジュニア世代65歳以上で高齢者数ピーク)への対応に局面が移行しており、今回改定は来る時代を見据え、医療提供体制維持・再構築を図るため医療機能の分化を踏まえた内容ともなっている。入院・外来・在宅医療など多くの分野での実績要件が強化され、医療機関には従来の外来中心の機能に加え、地域における機能分担により、継続的な患者管理と医療機関同士の連携に必要なデジタル情報活用による共有化やスリム化、医療従事者の負担軽減や働きやすい環境を整備していく方向性が示され、今後の医療提供体制の持続性を左右する対応が求められている。
編集
福岡市医師会:担当理事 江口 徹(情報企画・広報・地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。
(事務局担当 情報企画課 竹川)

