医療情報室レポート No.250 特集 :新型コロナウイルス感染症への対応~その12~

2022年1月26日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集 : 新型コロナウイルス感染症への対応~その12~

 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が南アフリカや欧米諸国をはじめ、世界各国で猛威を振るっており、国内でも年明けから急速に感染拡大している。政府は令和4年1月9日に3県(広島、山口、沖縄)、21日には13都県(東京、埼玉、千葉、神奈川、群馬、新潟、岐阜、愛知、三重、香川、長崎、宮崎、熊本)に「まん延防止等重点措置」を適用、27日から18道府県(北海道、青森、山形、福島、茨城、栃木、石川、長野、静岡、京都、大阪、兵庫、島根、岡山、福岡、佐賀、大分、鹿児島)を対象区域に追加する。1月25日には1日あたりの感染者が初めて6万人を超え、我が国では「第6波」の局面を迎えている。
 米CDC(疾病対策センター)は、オミクロン株の感染力は最大でデルタ株の3倍と推計しており、2回のワクチン接種を終えていても感染する「ブレークスルー感染」が多発する一方、オミクロン株はデルタ株に比べ重症化や入院リスクは低い傾向があることを示唆する研究結果が報告されている。
 感染拡大を受け、政府は新型コロナワクチンの3回目接種について、2回目終了から原則8ヵ月としていた接種間隔を前倒しするよう自治体に求めており、各地では接種体制の整備や打ち手の確保に追われている。
 今回は、福岡県の医療提供体制と感染状況、経口治療薬の承認や福岡市におけるワクチン接種体制、本年4月に予定されている令和4年度診療報酬改定への影響についても特集する。

●福岡県の医療提供体制と感染状況

○「第5波」の経験を踏まえた対策
 福岡県は令和3年11月30日、「第6波」に備えた対策として、従来の病床等の確保だけでなく、保健所の役割なども加えて充実させる「福岡県保健・医療提供体制確保計画」を策定したことを公表した。酸素投与ステーションについて既存の施設と合わせて最大200床を確保自宅療養者の外来受診や往診などに対応可能な医療機関1,000機関確保の体制整備を掲げている。
 また、ワクチン接種の進捗等を踏まえ、これまで以上に医療提供体制に係る指標を重視するため、独自の指標である「福岡コロナ警報」を見直し、発令基準を病床使用率のみとした。
 現在の県内確保病床数は1,558床(うち重症病床206床)、宿泊療養施設は11施設2,234室(市内7施設1,585室)を確保している。

○「第6波」際立つ感染スピード
 福岡県では1月7日、約3ヵ月ぶりに1日100人超の感染者が確認された後、わずか8日後の1月15日には感染者が1日1,000人超に急増するなど、「第5波」と比べ「第6波」は約3倍のスピードで感染者が拡大している。
 1月24日現在の「病床使用率」25.4%(397床使用)「宿泊療養施設稼働率」54.8%(1,225室使用)、自宅療養者は17,534人となっている。
 「病床使用率」が15%を超えたことから、1月20日に県は「福岡コロナ警報」を発令、1月25日には県内で過去最多の3,389人(市内1,780人)の感染者が確認された。

●経口治療薬の承認

 昨年12月24日、厚生労働省は軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症患者に対する経口治療薬「モルヌピラビル(販売名:ラゲブリオ)」を特例承認した。自宅で服用できる国内初の抗ウイルス薬となり、対象は「18歳以上の重症化リスクがある患者」で、発症から早期投与(5日程度まで)することで、重症化予防の効果が期待できる。
 政府は「モルヌピラビル」について、米メルク社と160万回分の供給を合意しているが、当面は流通量が限られることから一般流通は行わず、厚生労働省が所有した上で、対象患者の発生時などに配分される。一般診療所でも広く処方が可能となれば、医療提供体制の維持や感染拡大防止にもつながるため、今後の安定的な供給が望まれる。
 また、日本での製造販売承認が厚生労働省に申請されている米ファイザー社製の治療薬についても、政府で200万人分の供給を合意しており、国内での使用が承認されれば、より治療の選択肢が広がることになる。

<新型コロナウイルスの軽症者向け治療薬> 

  薬剤名(販売名) 企業名 投与方法 投与条件 備考
1 カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ) 中外製薬 点滴 軽症~中等症Ⅰ、発症抑制 2021.7承認、オミクロン株には効果低下のため、投与を非推奨
2 ソトロビマブ(ゼビュディ) グラクソ・スミスクライン 軽症~中等症Ⅰ 2021.9承認、オミクロン株にも効果継続
3 モルヌピラビル(ラゲブリオ) メルクなど 経口薬 予防、軽症~中等症Ⅰ 2021.12承認、入院・死亡リスクを30%減少
4 ニルマトレルビル/リトナビル(パクスロビド) ファイザー 予防、軽症~中等症Ⅰ 承認申請中、入院・死亡リスクを88%減少
5 S-217622 塩野義製薬 無症候、軽症 最終段階の治験

※厚生労働省資料等をもとに作成

●福岡市のワクチン接種体制等

○3回目ワクチンの接種体制
 福岡市では1・2回目接種と同じ「個別接種」「集団接種」の接種体制を構築しており、対象者には順次接種券が発送される。
 予約方法も1・2回目と同様、「専用の予約サイト」ならびに「コールセンター」にて事前予約が必要となる。

項目 内容
1 接種対象者
(3回目)
2回目接種から次の期間が経過した18歳以上の市民(対象者には接種券が順次発送) 
 ○医療従事者、高齢者施設等従事者、入院患者、65歳以上の高齢者、60~64歳、基礎疾患がある方、市独自優先接種者 → 6ヵ月
 ○上記以外の59歳以下 → 7ヵ月
2 使用ワクチン ファイザー社製と武田/モデルナ社製を使用 ※2回目接種までと異なるワクチンを接種する「交互接種」が認められている
3 接種場所 個別接種 地域の接種可能なクリニック(福岡市内約800箇所) ※ファイザー社製ワクチン使用 [開始]1月5日(水)
集団接種 市内9箇所を順次開設 ※武田/モデルナ社製ワクチン使用
 ①中央体育館(開設時間 11~21時)   [開始]1月 5日(水)
 ②KITTE博多(開設時間 11~18時)   [開始]1月 5日(水)
 ③中央ふ頭クルーズセンター(開設時間 11~18時) [開始]1月20日(木)
 ④なみきスクエア(開設時間 11~17時) [開始]2月 1日(火)
 ⑤さざんぴあ博多(開設時間 11~17時) [開始]2月 1日(火)
 ⑥ももち体育館(開設時間 11~17時)  [開始]2月 5日(土)
 ⑦南体育館(開設時間 11~17時)    [開始]2月 5日(土)
 ⑧城南体育館(開設時間 11~17時)   [開始]2月10日(木)
 ⑨さいとぴあ(開設時間 11~17時)   [開始]2月10日(木)

(令和4年1月26日現在)

○3回目ワクチンの供給
 米ファイザー社製ワクチンの確保量は1・2回目に比べると減っており、政府は3回目を異なる種類のワクチンを打つ「交互接種」の有効性を発信し、米モデルナ社製ワクチンの積極的な活用を呼びかけているが、今回絶対的なワクチン確保量が少なく、「個別接種」を行う各医療機関へのワクチン供給が潤沢ではないために接種促進を妨げる一因となっている。

○医師会と行政の連携
 新型コロナウイルス陽性者の同居家族等については、保健所が濃厚接触者の判断を行い検査を実施するが、感染拡大時期には保健所業務が逼迫し、濃厚接触者への調査が遅れる等のケースがあった。そこで、福岡市医師会では行政と連携し、医療機関で陽性と診断された者と同居している家族等で無症状者に対して、保健所の調査を待たずに登録医療機関において検査を可能とする体制を構築している。(実施期間:感染拡大時期で福岡市が指定した期間)

●令和4年度診療報酬改定への影響

 本年4月は2年に一度の「診療報酬改定」が予定されており、新型コロナウイルスの本格的な感染拡大後、初めての改定となる。昨年12月22日の予算大臣折衝では、医師の技術料や人件費に当たる「診療報酬本体」+0.43%、薬の公定価格である「薬価等」-1.37%と決定、「診療報酬本体」「薬価等」を差し引きすると全体では-0.94%で、4期連続のマイナス改定となった。
 「診療報酬本体」は看護師の処遇改善(+0.2%)、不妊治療の保険適用(+0.2%)で財源を確保する一方、繰り返し利用できる「リフィル処方箋」の導入(-0.1%)、新型コロナ特例の小児科医療の見直し(-0.1%)で財源を抑制し、実質的な「診療報酬本体」の改定率は+0.23%となる。
 今回の改定で導入が決まった「リフィル処方箋」は、医師が認めた場合に一定期間内であれば、医療機関の再診を受けずに繰り返し利用できる処方箋である。厚生労働省は慢性疾患で症状が安定した患者への利用を想定しており、対象薬剤や上限期間等については今後、中央社会保険医療協議会(中医協)で議論が予定されているが、疾病管理の質を下げるリスクがあり、慎重な検討が求められる。

<分割処方とリフィル処方の違い>

例)医師が90日分の内服薬を患者に投薬するため、30日分ごとに薬局で調剤して交付する場合

項目 内容 導入時期
分割処方 90日分の処方箋を発行し、薬局に対して3回の分割を指示 平成28年4月
リフィル処方 30日分の処方箋を繰り返し利用できる回数(3回)を記載した上で発行 令和4年4月(予定)

※中医協資料をもとに作成

医療情報室の目

感染症対策の継続的な実施

 新型コロナウイルスのオミクロン株の国内流入を防ぐために、政府は徹底した水際対策を実施したが、完全に防ぐことは困難で、年明けから今までに無かった驚異的なスピードで感染が拡大している。オミクロン株は従来株よりも発症までの潜伏期間が短く、感染力が強い特徴があり、今回の第6波は若年層や子どもへの感染が広がり、また、家庭内での感染や濃厚接触による医療従事者不足で、医療提供体制が逼迫した地域も発生している。
 国立感染症研究所はオミクロン株の重症例は従来株と比べて約8分の1との分析結果を示しているが、現在の感染拡大が続き、高齢者や基礎疾患を持つ人などの感染が増えれば、第5波以上の重症者が発生し、病床が逼迫する恐れは十分にある。また、無症状や軽症患者の自宅療養者も急増することから、各地の実情に応じた自宅療養者の支援体制の強化と維持が欠かせない。
 2年を超える新型コロナウイルスとの戦いの中で、「ワクチン」と「経口治療薬」という二つの武器が揃った今、ウイルスと共生する世界が目前に迫りつつあるが、ワクチンの3回目接種は医療従事者には継続中で、高齢者への接種は開始されたばかりであり、経口治療薬の確保と医療現場への供給もまだ不十分な状況の中では、現在可能な対策としては今まで続けてきた感染防止の行動を一人ひとりが今一度着実に続けていくことが肝要である。

診療報酬改定への危機感

 令和4年度診療報酬改定は「診療報酬本体」だけをみれば8期連続のプラス改定であり、厳しい国家財政の中、プラス改定となったことを評価する声もあるが、看護師の処遇改善や不妊治療の保険適用のために確保された財源等を差し引きすれば、実質的な改定率は2年前の改定と比べると近年の水準以下の改定率となる。また、各個別の診療報酬点数や算定要件等はこれから中医協で議論されるため、プラスの数字に安堵することなく、今後決まる具体的な内容について注視が必要であることを忘れてはならない。
 特に「リフィル処方箋」については、医師による健康観察の機会が減り、疾病増悪につながる恐れがあるなど、医療の質を下げる可能性がある。今改定の重点課題である「新型コロナウイルスのような感染症に対応できる医療体制構築」や「リフィル処方箋」について、中医協で適切な議論が行われているか否か、現在の医療提供体制の維持向上に関わることになるため、日本医師会には微細にわたる精査に基づいて、反対するところは反対するという態度で臨むことを要望する。

編集
福岡市医師会:担当理事 立元 貴(情報企画担当)・牟田浩実(広報担当)・江口 徹(地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。

(事務局担当 情報企画課 上杉)