医療情報室レポート No.242 特集 :令和2年をふりかえって

2020年12月18日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集 : 令和2年をふりかえって

 昨年、中国湖北省武漢市で発生が確認された新型コロナウイルス(COVID-19)は全世界へと感染が拡大し、未知なる感染症への対応に追われた今年は新型コロナウイルス一色の年となった。誰もが経験したことのない日常を送ることになり、「3密を避ける」ことや「新しい生活様式の実践」、「マスク着用・手洗い」といった行動は現在では当然のこととなっている。医師を始めとする医療従事者は、試行錯誤をしながらこの感染症と闘い、我々地域医師会としては行政と緊密な連携を図りながら、迅速な医療提供体制の構築や整備に努めてきた。
 本来であれば夏季としては56年ぶりとなる東京オリンピック・パラリンピックが開催され、大会を通じて目指したはずの未来への遺産(レガシー)を次世代に受け継いでいくといった期待に満ち溢れた年となるはずだったが、一年を通じて新型コロナウイルスの話題は尽きることはなく、未だ社会には閉塞感が漂ったままである。一方で12月には英国や米国で新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されるなど、収束に向けて少しづつ希望の兆しが見え始めてきた。
 今回は、毎年恒例の特集である今年一年の出来事をまとめ、“令和2年をふりかえって”みた。

●令和2年の主な出来事

  医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
1月
  • 日医会員数17万2,763人(2019.12.1付)、前年比1,613人増で7年連続増加。
  • 日医、「新型コロナウイルス感染症対策本部」設置。
  • 日医、「学校保健を通して児童生徒等の健康と安全を守る」宣言を発表。
  • 日医、国民向けミニドラマ「なな色健康家族」制作。        
  • 中国湖北省武漢市で原因不明のウイルス性肺炎患者が多発。
  • 新型コロナウイルス国内初の感染者が確認。
  • 帝国データバンクが倒産動向調査結果公表。2019年の医療機関の倒産件数は前年比5件増の45件で、過去10年間で最多。
  • 世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染拡大を受け緊急事態宣言を発表。
  • 政府、武漢からの帰国希望者にチャーター機を手配。
  • 地質時代名に初の日本由来の「チバニアン」が命名される。
  • 第162回直木賞受賞作、川越宗一「熱源」。第162回芥川賞受賞作、古川真人「背高泡立草」。
  • 英国がEU離脱。
  • 台湾総統選で蔡英文氏再選。 
2月
  • 日医、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」にJMAT派遣。
  • WHO、新型コロナウイルスによる病気の正式名称を「COVID-19」に決定。
  • 政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が初会合。
  • 政府、新型コロナウイルス感染症を「指定感染症」、「検疫感染症」に指定。
  • 乗客の感染が確認されたクルーズ船が横浜港に入港。合計712人の集団感染が発生。
  • 福岡市で新型コロナウイルス感染者が初確認。
  • アメリカとタリバンが和平合意。
  • スケート羽生結弦選手、4大陸選手権で初優勝。
  • 新型コロナウイルス、世界各地で感染拡大。
  • マスクが市中から徐々に品薄に。
3月
  • 市医、橋本信男会員(南区)、「第8回赤ひげ大賞」功労賞受賞。
  • 福岡市より友好都市である中国・広州市からのマスク10万枚寄贈。             
  • WHO、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大についてパンデミックを宣言。
  • 新型コロナウイルスを対象に加える改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が成立。
  • 全国の小中高校が一斉休校。
  • 新型コロナウイルスのPCR検査が保険適用。
  • 2019年の全国の救急出動件数、前年比3万4,538件増の663万9,751件、10年連続最多更新。
  • 2019年の全国の自殺者数は前年比671人減の2万169人、10年連続減少。
  • 入国拒否、渡航中止等水際対策が大幅に強化。
  • 新型コロナウイルスの影響により東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定。
  • プロ野球開幕延期、Jリーグ開催中断等、プロスポーツ界で延期や中止が相次ぐ。
  • タレントの志村けん氏が新型コロナウイルスによる肺炎で死去。
  • イタリアで新型コロナウイルスによる死者が1万人を超える。
  • 選抜高等学校野球大会が中止。
4月
  • 日医、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて「医療危機的状況宣言」を発表。
  • 日医、「日本医師会COVID-19有識者会議」設置。
  • 日医、「新型コロナウイルス感染症外来診療ガイド」を作成。
  • 日医、医療従事者への風評被害に理解を求める国民向け啓発動画を公開。
  • 市医、安増進会員(中央区)、「瑞宝双光章」受賞。
  • 市医、Web会議システム導入。
  • 政府、福岡を含む7都府県に「緊急事態宣言」を発表。その後、対象を全国に拡大。
  • 国民へ一律10万円現金給付を柱とした補正予算が成立。
  • 政府、全世帯に布マスク配布を表明。
  • 時限的、特例的な対応として初診患者へのオンラインや電話での診療が解禁。
  • 診療報酬改定、改定率本体0.55%(働き方改革対応分0.08%)、薬価等-1.01%、全体で-0.46%。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で300万人超。
  • イギリスのジョンソン首相が新型コロナウイルスに感染。
5月
  • 日医の医業経営状況等アンケート調査、診療所の2020年3月の初診料算定は前年同月比3割減が判明。
  • 県医、新型コロナウイルスの治療薬候補「アビガン」の臨床研究促進を目指し、福岡県に協力を求める。
  • 市医、ドライブスルー方式のPCR検査センターとして「福岡市医師会診療所」を開設。
  • 「緊急事態宣言」1ヵ月半ぶりに解除。
  • 厚労省、従来の「37.5度以上の熱が4日以上」としていた新型コロナウイルス感染症の相談・受診の目安を見直し、変更。
  • 厚労省、医療機関の資金繰り対策として診療報酬の概算前払いを認める特例措置を発表。
  • 新型コロナウイルスの抗原検査が保険適用。
  • 福岡市の推計人口が初めて160万人を突破。政令指定都市で160万人超は5都市目。
  • 「新しい生活様式」の実践例が公表。
  • 東京高検の黒川弘務検事長が緊急事態宣言中に賭け麻雀をした問題で辞表提出。
  • 昨年起きた京都アニメーション放火殺人事件で入院中の容疑者が逮捕。
  • アメリカで警官の暴行を受け黒人男性が死亡。黒人差別撤廃の抗議デモが全米に広がる。
  • アメリカで民間初の有人宇宙船が打ち上げ成功。
  • 全国高校野球選手権大会、戦後初の中止。
6月
  • 日医、任期満了に伴う会長選挙を実施。副会長の中川俊男氏が現職の横倉義武氏を破る。
  • 県医、第6期松田峻一良執行部スタート。
  • 市医、第18回定例代議員会開催。平田泰彦新会長による執行部がスタート。
  • 市医、「福岡市医師会診療所」のサテライトを市内3ヵ所(東・南・城南)に設置。
  • 「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」を大幅拡充した第2次補正予算が成立。
  • 厚労省、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」をリリース。
  • 政府、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」を廃止し、新たに「分科会」を設ける方針を表明。
  • 唾液によるPCR検査が保険適用。
  • 警察庁、認知症か疑いによる行方不明の届出件数公表。2019年は前年比552人増の1万7,479人、7年連続過去最多更新。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で1,000万人超。
  • 政府、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止を表明。
  • 日本のスーパーコンピューター「富岳」が9年ぶりに世界一。
  • 衆院議員河井克行前法相と妻の案里参院議員が公職選挙法違反の疑いで逮捕。
  • あおり運転に対する罰則を規定した改正道路交通法が成立。
7月
  • 日医、「新型コロナウイルス感染症対策再強化宣言」を発表。
  • 日医の医業経営状況等アンケート調査、前年3~5月と比較すると小児科、耳鼻科で外来受診3割以上減が判明。
  • 市医、「第1回新型コロナウイルス感染症対策委員会」を開催。
  • 「第51回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会(宮崎)」中止。
  • 政府、アメリカのファイザーと新型コロナウイルスのワクチン供給で合意。
  • 無症状者の唾液を用いたPCR検査等可能に。
  • 福岡県で1日最多169人の新型コロナウイルス感染が確認。
  • 中国で人にも感染する新しい豚インフルエンザが発見。
  • 「令和2年7月豪雨」が発生。熊本県の球磨川が氾濫し、介護施設が浸水被害を受ける。
  • 難病ALS女性を安楽死させた医師2人が嘱託殺人容疑で逮捕。
  • 「Go To トラベル」キャンペーンが開始。
  • レジ袋有料化の制度開始。
  • 第163回直木賞受賞作、馳星周「少年と犬」。第163回芥川賞受賞作、高山羽根子「首里の馬」。
  • 将棋の藤井聡太七段が最年少でタイトル獲得。
  • 中国で香港の統制強化を目的とした「香港国家安全維持法」が成立。
8月
  • 日医、感染症対策実施医療機関に対し「みんなで安心マーク」の発行開始。
  • 福岡市三師会、福岡市長へ要望書提出。
  • 「第51回中四九地区医師会看護学校協議会(大牟田)」中止。
  • 安倍首相が持病悪化を理由に辞意発表。
  • ロシアが新型コロナウイルスのワクチンを完成したことを発表。
  • 全国で1日最多1,595人の新型コロナウイルス感染が確認。
  • 県が「福岡コロナ警報」を発表(警報は10月に解除)。 
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で2,000万人超。
  • 4~6月期GDP(国内総生産)年率27.8%減。戦後最悪のマイナス成長。
  • レバノンのベイルートで爆発発生。死者135人。
  • モーリシャス沖で貨物船座礁、重油流出。
  • 福岡市中央区の大型商業施設で女性が刺殺される事件が発生。
9月
  • 市医、定例記者会見を初開催。(以降、偶数月に開催。)
  • 市医、登録医療機関でのPCR検査等を可能とする集合契約を福岡市と締結。
  • 市医、医業経営状況の調査を実施。6~8月分で約7割の会員医療機関で受診減、小児科・耳鼻科では前年比3割以上減が多数。
  • 菅義偉氏第99代首相に就任、新内閣が発足。
  • 政府、新型コロナウイルスワクチンを複数国で共同購入する国際的な仕組み「COVAXファシリティー」に参加する方針を表明。
  • 厚労省、「2019年人口動態統計」を公表。出生数が前年比5万3,161人減の86万5,239人で統計開始以来初めて90万人を下回る。
  • 総務省、「統計からみた我が国の高齢者」を公表。65歳以上の高齢者人口は前年比30万人増の3,617万人で過去最多を更新。
  • アメリカで新型コロナウイルスの死者が20万人超。世界では死者100万人超。
  • 大型で非常に強い台風10号が九州に接近。
  • マイナンバーカードの保有者にポイントを還元する「マイナポイント」事業が開始。
  • 「Go To Eat」キャンペーンが開始。
  • 電子決済サービス「ドコモ口座」を悪用した銀行預金の不正引き出し被害が相次ぐ。
  • テニスの大坂なおみ選手が全米オープンで2年ぶり2度目の優勝。
10月
  • 「第59回十四大都市医師会連絡協議会」をテレビ会議で開催(担当:大阪府医師会)
  • 市医、新型コロナウイルス感染症対策「今冬の診療所等における外来診療ガイドライン」を作成。
  • 市医、「妊婦への新型コロナウイルス感染症PCR検査費用助成事業」を開始。
  • WHO、世界の新型コロナウイルス感染者のうち、14%が医療従事者との推計を発表。
  • 福岡県、発熱患者等の診療・検査を行う「診療・検査医療機関」を指定。
  • 厚労省、今年5~7月受理の妊娠届の件数が前年同月比11.4%減(2万6,331件減)と公表。
  • 政府、来年から「緊急避妊薬」を薬局で購入可能とする方針を表明。
  • ロタウイルスの予防接種が定期接種となる。
  • 福岡市、接触確認アプリ「COCOA」インストールで子どものインフルエンザ予防接種の自己負担分を一部助成。
  • 福岡県、高齢者インフルエンザ予防接種の自己負担分を無償化。
  • 政府、2050年までに温暖化ガス排出ゼロの「カーボンニュートラル」を目指すと表明。
  • 総務省消防庁、熱中症による救急搬送数(6~9月)が前年比2,000人減の6万4,869人と公表。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で4,000万人超。
  • アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスに感染。
  • 東京証券取引所でシステム障害が発生し、全銘柄の売買が終日停止。
  • アニメ映画「鬼滅の刃」が国内最速で興行収入100億円突破。
11月
  • 市医、「出張PCRセンター」の運営開始。
  • 市医、鳥越隆三会員(西区)、「瑞宝双光章」受賞。
  • 「第120回九州医師会連合会総会・医学会」をテレビ会議で開催(担当:宮崎県医師会)
  • 「第57回九州首市医師会連絡協議会(宮崎)」を書面協議で開催。
  • 厚労省、新型コロナウイルス感染拡大関連の解雇や雇い止めが7万人超えと発表。
  • 厚労省、2020年10月の自殺者数が前年同月比40.2%増(619人増)の2,158人と発表。
  • 厚労省、「平成30年度国民医療費の概況」を公表。前年度比3,239億円増の43兆3,949億円。
  • 福岡県内で初の鳥インフルエンザが発生。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で6,000万人超。
  • 「立皇嗣の礼」が行われる。
  • 大阪都構想の是非を問う住民投票が反対多数で否決。
  • 「Go To トラベル」の対象から札幌市と大阪市の一時除外が決定。
  • 米大統領選接戦、バイデン氏が当選確実。
  • 日本を含む15カ国が東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名。
  • 福岡ソフトバンクホークスが4年連続日本一。
12月
  • 県医、「医師の働き方改革に係る要望書」を日医中川俊男会長と羽生田俊参議院議員に提出。
  • 市医、「福岡市医師会診療所」のサテライトを天神に設置。
  • 市医、「第2回新型コロナウイルス感染症対策委員会」を開催。
  • 全国で過去最多を更新する1日3,211人の新型コロナウイルス感染が確認。
  • イギリス、米ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを承認。
  • 新型コロナウイルスワクチンの接種無料化を柱とする改正予防接種法が成立。
  • 医療現場の人手不足が深刻な北海道と大阪府に自衛隊所属の看護師が派遣。
  • 県が2度目の「福岡コロナ警報」を発表。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で7,000万人超、死者が160万人超。国内では感染者18万人超、死者2,700人超。
  • 今年の漢字は「密」に決定。
  • 今年の新語・流行語大賞は「3密」に決定。
  • 日本の探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から持ち帰ったカプセルが地球に帰還。
  • 「Go To トラベル」の全国一時停止が決定。

※ゴシック表記は福岡市医師会関係

医療情報室の目

 新型コロナウイルスの影響により、今まで当たり前だった日常の景色はこの一年で一変してしまった。医療現場で働く従事者には心身ともに過大な負担がかかり、長期間に亘るこの感染症への対応で疲労はピークに達しており、離職が相次げば医療崩壊へとつながる恐れがある。医療機関では陽性患者や疑い患者を受け入れた場合は感染対策のコストがかさみ、また、受診時の感染を過度に恐れた患者の受診控えにより、診療所や病院の経営にも多大な影響を及ぼしている。政府や都道府県等による財政面の支援はあるものの、今後も継続的でより一層充実した内容の支援が求められる。
 今冬懸念された新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行は、現時点でその兆候は見られないが、全国の新型コロナウイルス感染者が今月に入って一日最多の3千人超が確認されるなど、「第3波」の感染拡大に歯止めがかかっておらず、人の往来が多くなる年末年始に向けて予断を許さない状況にある。寒冷地の北海道では新規感染者数が増加して医療提供体制は危機に陥っており、これから寒さが本格的になれば、地域医療が逼迫する同様の事態は全国どの地域でも起こり得る。個人の感染対策だけでは限界があるため、政府には後手に回ることなく、感染状況を見極めて迅速に政策を見直す姿勢や明確な情報発信が必要である。
 新型コロナウイルスの影響により時限的・特例的な対応として今年解禁された初診患者へのオンライン診療について、政府は恒久化を表明するなど、これを機に規制改革の動きを進めてきているが、医療界全体が疲弊している今、経済効率のみを重視するような改革を拙速に進めることなく、今一度立ち止まり熟考することを望みたい。
 来年の干支は「辛丑(かのとうし)」で、草木が枯れ、また新しくなろうとする状態と言われている。来る年が、新型コロナウイルスに対する検査や治療薬、ワクチンの開発が進むことでこの感染症が収束し、人類にとって新しき時代の芽吹きを感じる年になることを願ってやまない。


編集
福岡市医師会:担当理事 立元 貴(情報企画担当)・牟田浩実(広報担当)・江口 徹(地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。

(事務局担当 情報企画課 上杉)