医療情報室レポート No.278 特集:OTC類似薬の現況と今後
2026年2月2日発行
福岡市医師会医療情報室
TEL852-1505・FAX852-1510
特集:OTC類似薬の現況と今後
「OTC類似薬」とは、医療機関で処方される薬(医療用医薬品)の中で、ドラッグストアなどで購入できる市販薬と成分や効果がほぼ同等の薬を指し、かぜ薬、胃薬、湿布、塗り薬など主に軽い症状に使われるものが含まれている。
令和7年6月に自民・公明・日本維新の会の3党が「OTC類似薬」の保険適用除外を含む社会保障改革に関する合意を行い、保険給付見直しの動きが活発化した。これは膨張する医療費を抑えつつ、限られた財源の中で医療保険制度を将来にわたって持続させることを目的としたものだが、患者の自己負担増や受診遅れによる健康被害増大などの懸念も指摘されている。
政府は令和7年12月、「OTC類似薬」について患者に追加負担(薬剤費の4分の1)を求める方針を決定、令和8年度中に具体的な制度設計を行い、令和9年3月から新たな仕組みの開始を予定している。
今回はOTC類似薬の概要や保険適用見直しを巡る動き、政府方針と今後予定について特集する。
●OTC類似薬とは?
○カウンター越し(Over The Counter)に買える医薬品
薬局やドラッグストア等で処方箋無しで入手可能な市販薬は「OTC医薬品」と呼ばれ、全額自己負担での購入となる。一方、成分や効果が市販薬とほぼ同等で、医師の処方箋が必要な医療用医薬品は「OTC類似薬」とされ、保険適用で1~3割の患者負担で入手できる。

○保険適用除外の検討
高齢化や医療の高度化により、年間約48兆円の国民医療費(令和6年度)は年々増加しており、上昇抑制のため、約7千種類あるとされるOTC類似薬の保険適用除外を複数の政党が主張した。医療費の削減効果が期待される反面、患者負担増や受診控えが懸念されることから政府での検討が進められており、日本医師会からも健康被害・症状悪化への強い懸念が示されている。
<「OTC類似薬」保険適用除外のメリット・デメリット>
| 項目 | メリット | デメリット |
| 財政面 | 国の医療費抑制、国民の社会保険料増加の抑制 | 患者の経済的負担増 |
| 薬の使い方 | 軽度の不調は自身で対応 | 誤った使用や相互作用による健康被害増大 |
| 医療へのアクセス | 軽症受診・頻回受診減による医療機関の混雑緩和 | 受診控えや所得格差による症状悪化 |
○保険適用見直しを巡る動き
| 時期 | 内容 | |
| 令和7年 | 6月 | 政権の重要課題等を示す「骨太の方針2025」では、持続可能な社会保障制度、国民負担軽減の観点から「OTC類似薬の保険給付の在り方を見直し」を明記 |
| 11月 | 日本医師会は保険適用除外の主張を受け、国民に重大な危険性が伴うとして強い懸念を表明、問題点を説明したYouTubeショート動画を公開(※) | |
| 12月 | 保険適用を維持したうえで、患者に追加負担を求める新たな仕組みの導入が決定 | |
※にちいくんと考えよう!「OTC類似薬の保険適用除外」
◆OTC類似薬の保険適用除外①(日本医師会公式YouTubeチャンネル)
◆OTC類似薬の保険適用除外②(日本医師会公式YouTubeチャンネル)
◆OTC類似薬の保険適用除外③(日本医師会公式YouTubeチャンネル)
●政府方針と今後予定
令和7年12月、厚生労働省はOTC類似薬を処方された患者に対し、通常の自己負担とは別に薬剤費の4分の1を「特別の料金」として追加徴収する方針を示した。対象は77成分(約1,100品目)が検討されており、代表的な薬として解熱鎮痛剤(ロキソニン)、花粉症等の抗アレルギー薬(アレジオン)、痰切り(ムコダイン)、うがい薬(イソジン)、軟膏(ワセリン)、保湿剤(ヒルドイド)などが含まれる。
今後、具体的な品目や難病・慢性疾患を抱える患者への配慮等について検討し、法改正を経て令和9年3月から開始予定である。
○「OTC類似薬」追加徴収のイメージ

※厚生労働省資料をもとに作成
○「特別の料金」対象医薬品の成分一覧(案)
| 用途 | 有効成分 | |
| 1 | 抗ウイルス薬 | アシクロビル |
| 2 | 抗アレルギー薬 | アシタザノラスト水和物 |
| 3 | ビタミン剤 | アスコルビン酸 |
| 4 | 鎮痛鎮痒収斂消炎剤 | アンモニア水 |
| 5 | 抗真菌薬 | イソコナゾール硝酸塩 |
| 6 | 殺菌消毒剤 | イソプロパノール |
| 7 | 胃薬 | イトプリド塩酸塩 |
| 8 | 非ステロイド性抗炎症薬 | イブプロフェン |
| 9 | 非ステロイド系消炎鎮痛剤 | イブプロフェンピコノール |
| 10 | 鎮痛消炎剤 | インドメタシン |
| 11 | 殺菌消毒剤 | エタノール |
| 12 | 抗アレルギー薬 | エピナスチン塩酸塩 |
| 13 | 去痰薬 | L-カルボシステイン |
| 14 | 点鼻用血管収縮剤 | 塩酸テトラヒドロゾリン・プレドニゾロン |
| 15 | 抗真菌薬 | オキシコナゾール硝酸塩 |
| 16 | 抗生物質・副腎皮質ホルモン配合剤 | オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン |
| 17 | 殺菌消毒剤 | オキシドール |
| 18 | 皮膚保護剤 | オリブ油 |
| 19 | 殺菌消毒剤 | 希ヨードチンキ |
| 20 | 抗真菌薬 | クロトリマゾール |
| 21 | 抗生物質 | クロラムフェニコール |
| 22 | 抗生物質 | クロラムフェニコール・フラジオマイシン硫酸塩・プレドニゾロン |
| 23 | 殺菌消毒剤 | クロルヘキシジングルコン酸塩 |
| 24 | 抗アレルギー薬 | ケトチフェンフマル酸塩 |
| 25 | 総合感冒剤 | サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩 |
| 26 | 寄生性皮膚疾患剤 | サリチル酸 |
| 27 | 鎮痛消炎剤 | サリチル酸メチル・dl-カンフル・トウガラシエキス |
| 28 | 鎮痛消炎剤 | サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル |
| 29 | 鎮痛消炎剤 | サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル・グリチルレチン酸 |
| 30 | 制酸・緩下剤 | 酸化マグネシウム |
| 31 | 収れん・消炎・保護剤 | 酸化亜鉛 |
| 32 | 殺菌消毒剤 | 次亜塩素酸ナトリウム |
| 33 | 非ステロイド性抗炎症薬 | ジクロフェナクナトリウム |
| 34 | 殺菌消毒剤 | 消毒用エタノール |
| 35 | 痔治療薬 | 静脈血管叢エキス |
| 36 | 溶解剤 | 精製水 |
| 37 | 胃腸薬 | 炭酸水素ナトリウム |
| 38 | カルシウム配合剤 | 沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム |
| 39 | 消炎薬 | チンク油 |
| 40 | ステロイド | デキサメタゾン |
| 41 | 抗真菌薬 | テルビナフィン塩酸塩 |
| 42 | ビタミン剤 | トコフェロール酢酸エステル |
| 43 | 口内炎・舌炎薬 | トリアムシノロンアセトニド |
| 44 | 皮膚軟化剤 | 尿素 |
| 45 | 軟膏基剤 | 白色ワセリン |
| 46 | 矯味剤 | ハチミツ |
| 47 | 緩下剤 | ピコスルファートナトリウム水和物 |
| 48 | 便秘薬 | ビサコジル |
| 49 | 抗ウイルス薬 | ビダラビン |
| 50 | ステロイド | ヒドロコルチゾン酪酸エステル |
| 51 | 抗アレルギー薬 | フェキソフェナジン塩酸塩 |
| 52 | 抗アレルギー薬 | フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン |
| 53 | 非ステロイド性抗炎症薬 | フェルビナク |
| 54 | 抗真菌薬 | ブテナフィン塩酸塩 |
| 55 | 口腔用殺菌消毒剤 | 複方ヨード・グリセリン |
| 56 | 滋養強壮薬 | ブドウ酒 |
| 57 | 頻尿・残尿感薬 | フラボキサート塩酸塩 |
| 58 | ステロイド | フルチカゾンプロピオン酸エステル |
| 59 | ステロイド | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル |
| 60 | ステロイド | ベタメタゾン吉草酸エステル |
| 61 | ステロイド | ベタメタゾン吉草酸エステル・フラジオマイシン硫酸塩 |
| 62 | 血行促進・皮膚保湿剤 | ヘパリン類似物質 |
| 63 | 抗アレルギー薬 | ベポタスチンベシル酸塩 |
| 64 | 抗アレルギー薬 | ペミロラストカリウム |
| 65 | 止瀉剤 | ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス |
| 66 | 殺菌消毒剤 | ベンザルコニウム塩化物 |
| 67 | 眼科用剤 | ホウ砂 |
| 68 | 眼洗浄・消毒薬 | ホウ酸 |
| 69 | 殺菌消毒剤 | ポビドンヨード |
| 70 | 高脂血症薬 | ポリエンホスファチジルコリン |
| 71 | 乳幼児用便秘薬 | マルツエキス |
| 72 | 抗真菌薬 | ミコナゾール硝酸塩 |
| 73 | 殺菌消毒剤 | 無水エタノール |
| 74 | アレルギー性鼻炎治療薬 | モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物 |
| 75 | 殺菌消毒剤 | ヨウ素 |
| 76 | 解熱消炎鎮痛剤 | ロキソプロフェンナトリウム水和物 |
| 77 | 抗アレルギー薬 | ロラタジン |
※厚生労働省資料をもとに作成
医療情報室の目
★医療費の効率化と患者の安心の両立
今回のOTC類似薬の保険給付見直しにより、政府は約900億円規模の医療費削減を見込んでおり、この仕組みは令和6年10月に開始された後発医薬品の処方可能な薬で先発医薬品を希望した場合に、特別の料金を徴収する「長期収載品の選定療養」と同様の「保険外併用療養費制度」を活用するものである。
市販薬でも対応可能な症状について、一定程度の自己管理を促すという考え方には合理性があるとの見方もある。しかし、軽症に見える症状の背後に重大な病気が隠れていることも少なくなく、とりわけ高齢者や慢性疾患を抱える人にとって、薬の選択や使用を自己判断に委ねることは常にリスクが伴い、経済的理由から受診を控えることで、結果として症状が悪化する事態も懸念される。国民を医療から遠ざけるような仕組みにならないよう十分な準備が求められる。
医療費削減を巡っては、政府が「高額療養費制度」の自己負担上限額の引き上げを検討したものの、がんや難病患者を中心とした強い反発を受け、令和7年3月に撤回に追い込まれた経緯がある。患者の理解が得られないまま拙速に制度改正を進めれば、同様の混乱を招きかねず、また、医療現場への負担増にも繋がりかねない。
国民皆保険制度を維持していくためには、今後も医療と給付のバランスを見直す議論を避けて通ることはできないが、合理性や効率性を追い求めるがあまり、国民生活の安全・安心を蔑ろにすることはあってはならない。医療費の効率化と患者の安心は対立するものではなく、丁寧な制度設計と分かりやすい情報提供によって両立は可能と考えられる。国民一人ひとりが制度の背景を理解し、納得した上で選択できる環境を整えることが、これからの医療政策に強く求められている。
編集
福岡市医師会:担当理事 江口 徹(情報企画・広報・地域医療担当)
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(事務局担当 情報企画課 上杉)

