臨時増刊号
 
医療情報室レポート
 

bP55  
 

2011年4月1日 
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1505・FAX852-1510 

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報 告 : 東北関東大震災における医療支援
 

 2011年3月11日、東北・関東地方を襲った大震災(東北地方太平洋沖地震)は、国難とも言うべき戦後最大の被害をもたらした。現時点において死者・行方不明者数は2万人を超えており、未だその全容が把握しきれていない。
 甚大な被害を前に、各方面より様々な物的・人的支援が行われているが、医療に関しては医師会や医療関連団体、民間医療機関等が被災地に赴き、医療支援に全力を尽くしている。本号外では、代表的な医療支援チームの概要を解説するとともに、今回の震災における福岡市医師会の支援活動について緊急に報告する。


医療支援チーム
 今回の震災において、『DMAT』や『JMAT』等の様々な医療支援チームが被災地での支援にあたっているが、その組織構成や主な役割は以下のとおりである。
 DMAT
 (Disaster Medical
   Assistance Team)
 医師、看護師、業務調整員などで構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(概ね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた災害派遣医療チームのこと。
 阪神・淡路大震災において、平時の救急医療レベルの医療が提供されていれば、救命できたと考えられる犠牲者が500名存在した可能性があったとされたことから、医師が各機関と連携し、災害現場で医療を行う必要性が認識され、厚生労働省によって平成17年4月、日本DMATが組織された。
 JMAT
 (Japan Medical
   Association Team)
 日本医師会主導により、都道府県医師会が郡市区医師会を単位として編成し、被災地で活動する災害医療チーム。災害発生後に日医から都道府県医師会への要請に基づき待機・出動し、DMAT及び被災地医師会との間で役割分担、有機的連携を行いつつ、主に災害急性期の医療、被災地医師会等との協力、活動支援を担う。3月31日現在で延べ259チームが支援にあたっており(派遣済含む)、今後142チームが派遣に向けて準備中である。
 十四大都市医師会の協
 定に基づく支援チーム
 平成19年10月、全国14の政令指定都市医師会で組織される「十四大都市医師会連絡協議会」において「災害時における相互支援に関する協定書」が締結された。有事の際、被災にあった地区を除く医師会で支援チームを組織し、支援活動を行うこととしており、今回の震災発生に伴い、仙台市医師会に最も近い札幌市医師会が各都市医師会からの医師の派遣等の連絡調整を担っている。以下に記す福岡市医師会3班の活動は、本協定に基づき行われたものである。

福岡市医師会における現在までの支援活動報告

第1班:現地調査隊 日程:3月16日(水)〜18日(金)
グランディ21における検視の様子 給油規制がとられているガソリン
スタンド(仙台市内)
医薬品の不足を掲示する調剤薬局

第2班:検視班 日程:3月18日(金)〜21日(祝)
検案書を作成する大木医師(右)、
勝田医師(左) (増田体育館)
臨時の遺体安置所とされている
廃業したボウリング場
一人ひとりの遺体が確認されている様子

第3班:医療救護班 日程:3月24日(木)〜26日(土)
診察にあたる入江尚福岡市医師会専務理事
(六郷中学校)
避難所(六郷中学校)に設置された掲示板 倒壊している家屋(仙台市若林区)
<医療情報室の目>
 かつて我が国が経験したことのない大規模な地震・津波の発生から3週間が経過し、一部の被災地では次第にライフライン復旧等の兆しが見えてきたものの、点在する避難所の環境格差や、捜索活動が遅々として進まない沿岸部、原発事故の長期化による住民の混乱など事態の収束は見通せていない。
 このような中、現地ではJMATや独自の支援チームなど全国から様々な医療関連団体が被災地での支援活動を展開しているが、各団体間における情報の共有と連携が十分機能しているとは言い難く、市の中心部に支援チームが集中するなど地域によって医療支援体制に偏りが生じている。
 被災地の復興に向けた動きは長期化の様相を呈しており、今後も各地の医療関係者による継続した医療支援が求められると思うが、刻一刻と変化する被災地の全容を迅速に把握し、統率のとれた支援活動を展開できる指揮系統窓口の確立が必要ではないだろうか。当然、被災地の当事者がこの役割を担うことは難しく、支援協力団体の中からサポート要員を派遣して調整役にあたる必要があるだろう。被災地復興への尽力とともに、長期的な支援体制の整備が急務である。

今回の東北地方太平洋沖地震により、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地の一刻も早い復興を祈念申し上げます。

ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡下さい。
   (事務局担当 情報企画課 下田)

担当理事 原  祐 一(広報担当)・原村耕治(広報担当)・竹中賢治(地域医療、地域ケア担当)


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