医療情報室レポート
 

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2003年11月28日
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 



特集:いわゆる『混合診療』

 今月初めに行われた衆議院選挙の結果、第2次小泉内閣が発足することとなった。
 小泉政権下では引き続き、医療制度改革が行われると考えられるが、政府の総合規制改革会議や経済財政諮問会議の医療制度改革案では、いわゆる「混合診療の導入」が議論されている。
 しかし、「混合診療の導入」は国民皆保険制度の崩壊にもつながる危険性を孕んでおり、そもそも「混合診療」の定義自体が議論する者の立場によりずれが生じていることもある等、曖昧な性質を持ち、言葉のみが一人歩きしているような感もある。
 今回の医療情報室レポートでは、現在「混合診療」として議論されているものの定義や、何故導入が議論されているのか、また制度導入に潜む危険性等について特集してみたい。

いわゆる「混合診療」とは

 ★言葉の定義
 

日医の見解
「混合診療とは、健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、範囲外の分を患者さん自身が費用を支払うことで、費用が混合すること

※医療現場に於いては、「保険診療と保険外診療の併用が
 全額自己負担となること」を混合診療として捉えている
 場合もあるが、現在議論されているいわゆる「混合診療」
 は上記の定義による。


 ★特定療養費制度
 

現行の制度では、例外的に特定療養費制度(医療情報室レポートNO.49 参照)が認められている。
特定療養費制度は、医療技術の進歩や国民ニーズの多様化等に柔軟に対応するために、一定のルールの下に保険診療と保険外診療を組み合わせた制度である。
主に @高度先進医療(臓器移植など) A選定療養(差額ベッド等快適性に関するもの) がある。

各団体の主張とその根拠

 



予測される「混合診療」導入に伴う危険性

 

いわゆる「混合診療」導入に関しては、賛成の意見もあるが、公的医療保険制度の給付縮小や、歯止めの無い患者負担の増大、経済力格差による医療の不平等などの問題がその背景にある。
 
 
「混合診療」導入により考えられる危険性を以下のように纏めてみた。

 


 

西島英利氏(日医常任理事)は規制改革・経済諮問両会議の民間委員は、医療を市場化して自分たちのビジネスチャンスを広げたいだけだとの見方を示した。
 
 
「株式会社の医療参入は、混合診療(保険診療と保険外診療の併用)、公的保険の守備範囲の見直しとで3点セットと考えなくてはならない。公的保険の範囲を縮小して混合診療を認めて自由診療を拡大し、民間保険でみるとなったところで株式会社参入の意味が出てくる。安心して受けられる医療体制を縮小して民間を伸ばす野望があるので日医は反対している」と話した。
 
 
<日本医師会「JMA PRESS NETWORK」ニュース(2003.10.27)>

規制改革会議の動き

 ★現在の状況
 

総合規制改革会議では10月7日に従来のアクションプラン「12の重点検討事項」に5項目(労災保険・雇用保険事業の民間開放促進等)を追加し、これらについて関係省庁と折衝・調整し、年末の第三次答申に得られた成果を盛り込むことを決めている。

 ★特区における動き
 

構造改革特区推進室と総合規制改革会議では11月を秋の規制改革集中受付月間と位置づけ、構造改革特区の第4次提案と全国規模の規制改革要望を同時に受け付けている。

 

本年6月に寄せられた構造改革特区第3次提案には、「混合診療の解禁」及び「株式会社の医療経営参入」については全国で4件程度しか要望が寄せられていない。

 ★外国からの要望
 

総合規制改革会議は11月6日に米国・EUから規制改革の要望を受けている。米国製の医薬品や医療機器の価格交渉や規制改革会議での意見表明の機会要望、また外国企業による医業経営参加及び混合診療導入等を日本政府に迫っている。

<医療情報室の目>
★医療制度改革の中で
 混合診療については、医療業界の中においても「容認してもよいのでは?」との意見もある。
 しかし、「混合診療導入論」の背景には、その他の規制改革論の背景と同様に財政主導の見地に基づいている。
 経済的弱者は置き去りにして、強者のみが利益を得るというアメリカ型の2極化の社会の先には医療の差別化・疾病の増大がある。
 個人主義が発達し、経済的格差の広がった上に崩壊しているアメリカの社会保障制度を真似ることが、本当に我が国にとって必要であろうか。
 「自助自立」の個人主義を基本とした制度改革の路線を推し進めようとする国策は、今まで我が国に於いて築かれた地域社会の連携・世代間の助け合いなど、自助・互助・公助の概念を崩そうとしているように思われる。
 我が国が持っている良い部分を伸ばしていくことが本来の国民のための医療制度改革であろう。

★弱者は切り捨てる?
 「混合診療」制度を導入すれば、患者負担が増えることが予想される。経済力のある人たちには選択肢の幅も広がり、また、個人的に民間保険に加入していくであろう。しかし、病弱な人たち等(身体的弱者)には、民間保険に加入の際には高い保険料を求められ、さらには加入さえも出来ないかもしれない。その上、低所得者(経済的弱者)なら尚更加入は難しくなることが予想される。
 「混合診療」の問題を考える時には、「自分だけが満足したい」と考えるのではなく、常に「社会としてどうあるべきか」を考える必要があるのではないだろうか。

★衆議院選挙が終わって
 今月初めには、衆議院の総選挙が行われ、結果、今後は自民・民主の二大政党制に変わっていくことが予想されるも、自民党の勝利に終わった。今回の選挙では各党とも「マニフェスト」(政権公約)を提示しての選挙戦であったが、自民党のマニフェストには日医の要望により「国民皆保険制度・フリーアクセスの堅持」が謳われている。今後の医療制度改革の在り方に注目していきたい。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄 均(広報担当)・江 頭 啓 介(地域医療担当)・入 江  尚(情報担当)


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