医療情報室レポート
 

bS9  
 

2002年5月31日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 



 
特集:特定療養費
   






 
 2002年4月の診療報酬改定は、再診料・入院基本料等が大幅に引き下げられる史上初のマイナス改定となり、多くの医療機関に対して重大な影響を及ぼす内容となりました。
 今回、診療報酬の引き下げとともに行われた主な改定の一つとして、長期入院患者に対する特定療養費の導入があげられますが、これは入院基本料の給付を減額し、減額分を患者の自費負担とするもので、平成16年4月の完全実施以降は、入院患者に対してひと月あたり4〜5万円の負担増を強いることになるといわれています。
 今回は、特定療養費制度の概略、問題点等について特集します。

 
 
  特定療養費制度とは?
 
   現在の日本の医療保険制度では、保険診療と保険外診療の混在、いわゆる「混合診療の禁止」が原則とされており、「混合診療」の
  禁止」を例外なく適用すれば、例えば保険適用外である高度先進医療を行った場合など、治療に係わるすべてが患者の自費負担となる。
   「特定療養費制度」は、医療技術の進歩、患者ニーズの多様化等に柔軟に対応するため、混合診療禁止の規定の例外として昭和59年
  の健保法改正時に創設された。
   基本的な考え方としては、特に定められた特別のサービス(アメニティ部分)や高度医療を含んだ療養については療養全体にかかる
  費用のうち基礎的な部分を保険給付とし、特別サービス部分を自費負担とすることによって患者選択の幅を広げようとするものである。
 
 
  特定療養費の対象となる主なサービス
 
    @特別の療養環境の提供(差額ベッド代、室料差額)
    A200床以上の病院における紹介なし初診料    
    B予約に基づく診療
    C患者側の都合による時間外診療
     (医療機関が表示する診療時間以外の時間において)
    D医薬品・医療用具の治験に関わる診療
    E高度先進医療の提供        
 
  ★以下は、2002年4月より新たに対象となったもの
 
    F200床以上の病院における再診
    G薬事法承認後であって保険収載前の医薬品の投与
    H長期入院に係る保険給付の範囲の見直し(180日超入院患者への特定療養費の給付)
 
 
  180日超入院患者への特定療養費の給付について
 
   対 象 者
      ○一般病棟、療養病棟、老人病棟、有床診療所療養病床等への入院期間の合計が180日を超える患者。
     ただし、以下については対象から除外。
 
      @厚生労働大臣の定める状態(主なもの)
       ・難病患者等入院診療加算を算定する患者
       ・悪性新生物に対する腫瘍用薬(重篤な副作用を有するものに限る)を投与している状態
       ・人工呼吸器を実施している状態にある患者
      A平成14年4月以降の新規入院患者については、180日経過後の10月より直ちに特定療養費の対象となるが、3月31日以前に
       入院期間を有している患者
については、平成16年3月31日までの間以下の経過措置が設けられており対象除外となる。

期  間

除外対象者

 平成14年4月1日〜平成15年3月31日

 平成14年3月31日以前の入院期間を有する者

 平成15年4月1日〜平成15年9月30日

 入院期間の通算が3年以下の者

 平成15年10月1日〜平成16年3月31日  

 入院期間の通算が2年以下の者  
 
   特定療養費として給付する額
 
    ○激変の緩和を図るため、以下の通り経過措置が設けられており、平成16年4月の完全実施まで段階的に実施される。

 平成14年10月1日〜平成15年3月31日

 入院基本料等の基本点数の95%

 平成15年4月1日〜平成16年3月31日

 入院基本料等の基本点数の90%

 平成16年4月1日以降  

 入院基本料等の基本点数の85%   
 
   入院期間の計算
 
    ○長期入院とみなされる180日超入院とは、他の医療機関での入院期間も含まれる。
 
     (医療機関) @患者を入院させる際は過去3ヶ月以内の入院状況の確認が必要
             ※確認を怠った場合、入院料の算定ができない
 
             A患者退院の際に、退院証明書を患者に渡すことが望ましい
 
     (入院患者) ・医療機関の求めに応じて、自己の入院履歴を申告
             ※虚偽申告を行った場合は、それにより発生する損失について後日費用徴収される可能性がある
 
      ※入院期間の通算がリセットされる場合
       1)自宅や介護保険施設などに退院してから3ヶ月以上、同一疾病に関してどの保険医療機関にも入院しなかった場合
       2)自保険医療機関の介護療養施設等に転棟し3ヶ月以上を経た場合
 
 
  特定療養費制度の拡大に伴い予想されうる問題点
 
   日本の医療保険制度は、公平・平等に国民に良質な医療を提供できる国民皆保険制度を基本としているが、特定療養費制度の安易
   な拡大は、以下のような問題を招く恐れもあり、国民皆保険制度の基盤を大きく揺るがす可能性がある。
 
    @公的医療保険制度による給付レベルの低下
    A民間医療保険の参入
    B際限のない患者負担の増大
    C支払能力により享受できる医療サービスが限定される(差別医療の拡大)
    D患者の支払能力には限度があるため、貧困による疾病の増悪を促す

   <医療情報室の目>
  本来、特定療養費は患者の選択と同意を前提に医療の周辺部分のサービスとして適用されてきたものですが、今回の180日超入
 院患者の入院基本料の特定療養費化は医療本体(技術料)の部分に及ぶものであり、患者の選択の余地がないものとして「特定療
 養費の範囲」を踏み越えたものであるといえます。
  厚労省によれば、推定約5万人の患者がこの特定療養費の対象になるといわれており、介護保険施設の絶対的な不足・受け入れ
 体制の不備や在宅介護体制の不十分さを解決しないままの今回の措置は、国家としての責務を棚上げし、当面の医療費抑制にの
 み重点を置いたものと考えます。
  日医は、今回の長期入院の特定療養費化に対し、長期入院の要因分析を行ったうえで特定療養費の適用除外の拡大を要求して
 いく構えをみせており、今後の日医の行動に強く期待をしたいものです。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 中道 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄  均・江 頭 啓 介・入 江  尚


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