医療情報室レポート
No.229

2019年2月1日発行
福岡市医師会医療情報室
TEL852-1505・FAX852-1510
印刷用

特 集 : GW10連休がもたらす医療への影響  

 
 2019年5月1日は、新天皇が即位し新たな元号に改められる歴史的な節目の日となるが、同時にこの日は祝日となり最大10日間のゴールデンウィークとなるため、社会・経済への影響を不安視する声が上がっている。特に医療現場に関しては、長期休暇に伴いスタッフの確保、医療材料の調達等が難しくなることから、ゴールデンウィーク期間中は多くの医療機関が休診となる可能性があり、緊急患者への対応の遅れや、急患センター及び二次・三次病院といった一部医療機関への患者集中など、様々な弊害が懸念されている。
 今回の医療情報室レポートでは、本会が昨年12月に実施した「2019年ゴールデンウィークの診療体制に関するアンケート」や、日本医師会の各都道府県医師会アンケートで浮かび上がってきた具体的な問題点を踏まえながら、地域医療にどのような影響があるか考えてみたい。

●5月1日「改元」に向けての医療現場の留意点

 改元に伴う「新元号」の公表時期は、国民生活や社会への影響を最小限に抑える目的から、2019年4月1日に行われることが決まったが、医療機関としてどのような点に注意が必要なのだろうか。

【システム関連(電子カルテシステム等)】
 例えば、Microsoft Windowsのように広く汎用的に使われているシステムは、インターネットを介したアップデート等による対応が可能であるが、外部ネットワークから遮断されている電子カルテシステムなどは、ベンダーによる個別の改修作業が必要になると考えられる。従って、新元号が発表された4月1日以降に医療機関での作業が集中する可能性があるため、早めに作業計画の確認をしておく必要があるだろう。 

 【様式関連】
 医療現場では、院内で使う問診票をはじめ、検診や予防接種、検査申込書など様々な様式が使われているが、これらの印刷物に和暦が印字されている場合、新元号への書き換えや印刷物の刷り直しといった対応が必要になる。なお、福岡市で使われている検診申込書については、5月1日以降も在庫がなくなるまでの間は現行の様式を使用し、「平成」を新元号に読み替えることで対応するとしている。
 

●大型連休による診療体制への影響

日本医師会「2019年10連休対策に関するアンケート」
 日本医師会は、2019年ゴールデンウィークが最大10連休となることを踏まえ、昨年12月に常任理事5人によるプロジェクトチームを立ち上げ、各都道府県医師会にアンケートを実施した。その回答によれば、在宅当番医制や病院群輪番制、休日夜間急患センターの実施体制について「通常のゴールデンウィークと同様の体制」を予定している地域が多く、行政の危機意識もさほど高くないとの結果だった。日医はこれを受けて、「10連休の一時的な対応として、一般医療機関の協力を得て、在宅当番医制、病院群輪番制による休日診療の体制を整えることが重要」との考えを表明している。
 また、10連休中の医療について「現時点で考えられる課題」を取りまとめており、特に医療機関に関わりそうな課題として、以下のような内容を示している。

【2019GWの医療提供体制に対する「現時点で考えられる課題」(一部抜粋)】
 ・人工透析やがん化学療法などの継続的な実施が不可欠な処置の維持(関係医会、事業者との連携)
 ・計画的な検査手術・入院の連休前後への集中、待機患者の増加(早期の検査、入院、手術が必要な患者の不利益)、緊急手術への対応 困難
 ・医師会病院などの共同利用施設、地域の入院患者受け入れ施設としての有床診療所の活用可否
 ・在宅療養患者(高齢者、医療的ケア児等)の急変時対応、訪問診療・看護
 外国人診療体制の確保(中国では、5月1日のメーデー(労働節)から始まる大型連休(黄金週)があるため、多数の訪日旅行客を予想)
 ・在宅患者の急変対応  在宅における終末期とかかりつけ医への連絡  ・介護施設等における人員確保(訪問看護、リハビリテーション他)

福岡市医師会「ゴールデンウィークの診療体制等に関するアンケート」
 福岡市医師会では、ゴールデンウィーク期間中の診療体制に関する問題点を把握し必要な対応を検討するため、昨年12月から今月にかけて会員医療機関にアンケート調査を実施した。(回答数(回答率):191/1,287医療機関(14.8%):2019年1月25日締切)

【10連休中の診療体制について】
 本アンケートでは、10連休中の診療体制の「傾向」を把握するため、各日の診療予定について「診療」「休診」「未定」の選択肢の中から 回答を求めた。
 特にポイントとなる日程は、今年限りの「祝日」となる5月1日及びその前後を含む3日間の「休日」であるが、この3日間は、他の休日よりも「診療する」との回答が比較的多くなっている。また、有床診療所は無床診療所に比べて、「未定」との回答が少ないが、この理由としては、有床診療所には入院患者への対応等で医師が常駐しているため診療に踏み切りやすいためではないかと考えられる。

 今回のアンケートは、あくまでも「傾向」を把握するためのものではあるが、いずれにせよ、大半の医療機関が9連休となることが予想される。なお、病院については現時点で回答が少なかったため、今回は統計の掲載を省いている。
     
  
 【医療機関において懸念される問題点】
 その他アンケートでは、各医療機関において大型連休により診療体制等にどのような問題が生じるか、およびその問題点に対しての具体的な対策案について自由記述で回答を求めた。以下、多かった回答を上位から抜粋し紹介する。    
 

 
 【2019GW期間中の福岡市急患診療センターの診療体制等について】
 アンケートでは、福岡市急患診療センターや福岡市医師会臨床検査センターの実施体制等に関する問い合わせが複数寄せられたが、ここでは、問い合わせが多かったものについて、現時点における状況などをお知らせする。  
Q.GW期間中の福岡市急患診療センターの診療予定について
A.4月27日(土)は、通常の土曜日体制、4月28日(日)〜5月6日(月)の9日間は日曜・祝日体制となります。(右表参照)

Q.福岡市医師会臨床検査センター、訪問看護ステーションの稼働予定について
A.現在、検討中です。決まり次第、ホームページや週報等でお知らせします。

Q.「国民の休日」に診療することについて厚生局等への届出は必要か?
A.診療(開院)自体については、届出の必要はありません。

Q.5月のレセプト提出期限を延長できないか?
A.支払基金・国保連合会に確認したところ、通常どおり5月10日(金)の締切を予定しているとのことです。


 

医療情報室の目

 ★ゴールデンウィークまで残り3ヵ月、万全の体制づくりを望む。

  異例の最大10連休という今春のゴールデンウィークを前に、連休中の医療への影響について不安が高まっている。
 このような中、福岡市医師会では、ゴールデンウィーク期間中の診療体制に関する問題点を把握し必要な対応を検討するため、昨年12月から今月にかけて会員医療機関にアンケート調査を実施したところであるが、今春のゴールデンウィークは大半の診療所が9連休となる可能性が示され、大型連休が地域医療にもたらす影響についても、急患センターや一部中核病院への患者集中など様々な問題点が浮かび上がってきた。
 厚生労働省は今月、ゴールデンウィーク期間中の医療提供体制の確保に関する通知を全国の都道府県に発出し、住民らに対する連休中の診療体制の十分な周知、行政と医師会など医療関係者間の連携推進などを求めるとしているが、医療機関に対しても、在宅当番医制度への参画や緊急時の連絡体制の整備など、できる限りの対策を要請することとしている。
 本会アンケートを分析するに、「職員に休日出勤を強いることができない」「手当の支給が難しい」などの意見が複数あり、やむなく休診せざるを得ないという事情がみえてくるが、一方で「一部日程の診療を検討中」という回答も多数寄せられている。
 ゴールデンウィークまで残り3ヵ月。地域の医療機関においては、休診予定と併せ、連休前早めの受診を自院の患者に呼びかけたり、在宅医療患者の急変時の対応を周知するなど万全の体制づくりに努めていただくとともに、行政や医師会などは救急車の適正使用や不要不急の急患診療センターの受診を控えるなどの広報が必要になるだろう。


編集  福岡市医師会:担当理事 庄司 哲也(情報企画担当)・清松 由美(広報担当)・松浦 弘(地域医療担当)
 ※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。
(事務局担当 情報企画課 石橋)
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