医療情報室レポート
 

bP64  
 

2011年12月26日  
福岡市医師会医療情報室  
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特集:平成23年をふりかえって

 2011年の世相を表す漢字は「絆」に決まった。
 今年は、未曾有の大惨事となった東日本大震災に加え、多数の死者・行方不明者を出した新潟・福島豪雨、紀伊半島豪雨など、数多くの甚大な災害に見舞われた年だったが、これらの災害を通じて、人と人との「絆」の尊さ、ありがたみが改めて感じられた年だったとも言える。また、女子サッカーワールドカップを制し、日本中に感動を与えてくれた「なでしこジャパン」。見事世界一に輝いた彼女たちの強さの原動力は、固い絆で結ばれたチームワークだといわれている。「絆」はこれらの想いを込めた文字として選ばれた。
 来年の干支は「辰」である。震災の影響は未だ暗い影を落としているが、2012年は、天を駆け上る龍に肖り、躍動に満ちた一年となることを願うばかりである。
 今回は恒例の今年一年の出来事をまとめ、平成23年をふりかえってみた。


●平成23年の主な出来事

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
1月
日医会員数16万5,841人(2010.12.1付)、前年比42人減で戦後初の減少
日医、各都道府県における医療ツーリズムの動向の調査結果を発表。約7割が反対の意向示す
県医、「保険指導会」実施
福岡市妊婦健診にHTLV-1抗体検査追加
2010年の医療機関の倒産件数は41件。前年度に比べ11件減少するも、負債総額は約50億円増額となる
治療行為を目的とした場合の長期滞在を可能とした「医療滞在ビザ」の運用開始
厚労省、2010年人口動態推計の年間推計公表、出生数107万1,000人で前年比2,000人増
高病原性鳥インフルエンザの感染広がる。3月までに21道府県で確認、約185万羽を殺処分
霧島連山の新燃岳が189年ぶりに噴火
世界各地で大規模な洪水が発生。オーストラリアでフランスとドイツの国土の合計を上回る地域が被災、ブラジルでは800人超の死者が出る
ブラジル、初の女性元首となるジルマ・ルセフ大統領就任
イラン、国内旅客機がオルーミーイェ湖に墜落。77人が死亡
児童福祉関連施設などに匿名で寄付を送るタイガーマスク運動が全国に広がる
2月
日医、「国民皆保険50周年〜その未来に向けて」をテーマに医療政策シンポジウムを開催
市医、かかりつけ医うつ病対応力向上研修実施
総務省消防庁が2010年の救急出動状況を公表、546万3,201件で過去最高を記録
TPPに反対する超党派の国会議員や団体などにより構成される「TPPを考える国民会議」が発足
大相撲で八百長問題が発覚し、春場所が開催中止となる。本場所の中止は65年ぶり
ニュージーランド、マグニチュード6.3の地震が発生。日本人28人を含む181人が死亡
3月
東日本大震災:市医、「十四大都市医師会災害時相互支援協定」に基づき検視並びに医療支援チームを派遣
市医看護学校、看護師国家試験、准看護師資格試験ともに合格率100%を達成
市医、子宮頸がん等ワクチン接種事業開始(子宮頸がん予防(HPV)ワクチン、ヒブ(Hib)ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン)
福岡市介護予防健診事業廃止
第105回医師国家試験合格者発表、合格者7,686人、合格率89.3%、合格率は前年からほぼ横ばい
新型インフルエンザワクチン接種事業終了
3月11日、東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)が発生。死者・行方不明者併せ2万人を超す戦後最大級の災害となる
東北地方太平洋沖地震の津波などの影響を受け、福島県第一原子力発電所で原子力事故が発生。政府は国際原子力事象評価尺度に基づく事故評価を最終的に深刻な事故であるレベル7にまで引き上げる
九州新幹線鹿児島ルート全線開通
4月
東日本大震災:市医、福岡県医師会医療チームJMATに参画し、現地での医療支援活動に従事
統一地方選挙実施
医学部の入学定員数、8,923名で過去最高を記録
富山県、福井県、神奈川県の焼肉チェーン店「焼肉酒家えびす」で死者5人を出す集団食中毒が発生
5月
日医、受診時定額負担制度について「患者の受診控えによる重篤化を招く恐れがある」として反対の考えを示す
市医、定款検討委員会、公益法人改革に伴う移行後の本会定款等諸規定について答申
民主党の社会保障と税の抜本改革調査会、「受診時定額負担制度」導入に向けた検討を提言
福岡市、市立こども病院の人工島移転を正式決定
国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビン・ラディンがパキスタンで死亡
福岡県出身の炭鉱労働者山本作兵衛の筑豊炭鉱記録画が日本で初めてユネスコ世界記憶遺産として認定
6月
市医、第63回定時総会、公益法人改革に伴う移行後の新定款案を議決
厚労省、医療経済実態調査を実施。例年の6月単月調査(非定点)に加え、改定をはさんだ2事業年度の決算データの調査(定点)を追加
B型肝炎訴訟、国と原告が和解基本合意書に調印
高速道路料金のETC休日特別割引(地方部上限1,000円)が終了
小笠原諸島がユネスコ世界自然遺産(日本で4例目)に、平泉(岩手県)がユネスコ世界文化遺産(同12例目)にそれぞれ登録
チリ、プジェウエ火山が半世紀ぶりに噴火。近隣諸国で航空交通に多大な影響
理化学研究所と富士通が共同開発しているスーパーコンピュータ 「京」が計算速度世界最速を記録

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
7月
日医総研、「さらなる医療の信頼に向けて―無罪事件から学ぶ」をテーマにシンポジウムを開催
「第43回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会」開催(佐賀市)
市医、福岡市慢性腎臓病(CKD)連絡協議会を設置
平成21年度平均寿命男性79.64年、女性86.39年。女性は5年ぶりに減少するも26年連続長寿世界一を達成
政府、消費税問題について2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げることを社会保障・税一体改革の成案に明記
予防接種法改正。今後、平成21年に発生したインフルエンザ(A/H1N1 2009)と同程度の感染力を持つ新型インフルエンザは予防接種法で対応
FIFA女子W杯サッカードイツ大会で日本(なでしこジャパン)が初優勝
58年間続いた地上アナログテレビ放送が終了。地上デジタル放送へ完全移行
新潟・福島県で3日間に亘る記録的な大雨。新潟県三条市の笠堀雨量観測所では、期間降水量が約1,000mmを記録
スペースシャトル「アトランティス号」が最終飛行。すべてのスペースシャトルが退役しシャトル計画は延べ135回の飛行をもって30年の歴史に幕
中国温州市、死者40人を出す中国高速鉄道の衝突・脱線事故
南スーダン共和国、アフリカ大陸54番目の国家として独立
8月
日医、消費税対策や診療報酬に対する事業税非課税の存続などといった2012年度の医療に関する税制改正を要望
日医、日本看護協会と両団体の連携強化などを目的とした初の意見交換会を開催。(日医会館)
市医、医療・介護保険診療支援会議発足
市医、8月4日を「はしかの日」に制定。前後1週間を「はしか予防接種週間」に
「第42回中・四・九地区医師会看護学校協議会」開催(今治市)
中医協、東日本大震災の被災地を視察、各県や各県・地区医師会と復興に向けた要望などについて意見交換を行う
リビア内戦が終結し、41年に亘るカダフィ政権が崩壊
9月
「第50回十四大都市医師会連絡協議会」開催(京都市)
菅内閣の内閣総辞職を受け、野田佳彦氏が第95代内閣総理大臣に就任
野田首相、診療報酬・介護報酬同時改定について基本的にマイナスはないとの考えを示す
フランス・マルクール、原子力関連施設爆発事故。5人が死傷
中国・上海、地下鉄追突事故。280人以上が負傷
台風12号により紀伊半島を中心に甚大な被害。死者78人、行方不明者16人
10月
日医、厚労省の各種統計調査の発展に寄与した功績により厚生労働統計功労者として大臣表彰を受賞
「第48回九州首市医師会連絡協議会」開催(宮崎市)
市医、「福岡市救急医療市民公開シンポジウム」開催
市医、認知症の早期発見を目的とした3ヵ月間の調査研究事業を開始
市医、30歳代を対象とした福岡市独自の成人健診「よかドック30」を開始
中医協および介護給付費分科会、診療報酬・介護報酬同時改定に向け初の意見交換会を開催
藤村官房長官、TPP交渉参加に関し、安心・安全な医療が損なわれないように対応することを表明
福岡市、よかドック(特定健診)受診率向上キャンペーン実施
タイ、7月から続く洪水の被害が拡大。国土の3分の1が水没し、688人が死亡。被害総額は推定3兆4,550億円
アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏死去
世界人口が70億人を突破
トルコ東部、死者600人超のマグニチュード7.2の地震が発生。翌11月にもマグニチュード5.6の地震が発生し、被災者支援を行っていた日本人1名を含む37人が死亡
円相場、10月31日に戦後最高値更新(1ドル=75円32銭)
11月
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、TPP交渉参加について、日本の公的保険制度の除外を明言するよう政府に要請
日医、子宮頸がん予防(HPV)ワクチン、ヒブ(Hib)ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの公費補助延長を要望
県医、「子ども虐待防止フォーラムin福岡」開催(日医、SBI財団共催)
市医、釜山広域市医師会と姉妹医師会協定を締結
市医、公益法人改革に伴い「非営利型一般社団法人」への法人形態移行を申請
市医、「福岡市医師会方式急性心筋梗塞の連携パス」運用開始
市医福嶋恒彦会員(博多区)、日医最高優功賞受賞
野田首相、TPP交渉参加を表明。医療分野については日本の医療制度堅持を強調
野田首相、主要20か国・地域(G20)首脳会議において消費税引き上げを国際公約として明言
福岡市国保、ジェネリック医薬品利用案内通知発送(ジェネリック医薬品使用促進事業)
オリンパスによる1千億円を超える損失の隠蔽が発覚
医師で宇宙飛行士の古川聡さん、日本人最長となる167日間の宇宙滞在を終え地球に帰還
プロ野球福岡ソフトバンクホークス、8年ぶり5度目の日本一達成
オウム真理教事件、13人目の死刑判決。起訴された189人全員の判決が確定し一連のオウム裁判が終結
12月
日本医師会などの医療関連団体で組織する国民医療推進協議会、「日本の医療を守るための総決起大会」開催(日医会館)
政府、次期診療報酬の改定率を全体でプラス0.004%、介護報酬のプラス1.2%を決定
政府税制調査会、診療報酬の事業税非課税措置や自由診療の事業税軽減税率の次年度継続を決定
今年の世相を表す漢字が「絆」に決定
北朝鮮、金正日総書記が死去
米国オバマ大統領、「イラク戦争終結」を宣言
日本政府、福島第一原発の「冷温停止」を宣言
フィリピン、台風被害で死者1,200人超の被害


<医療情報室の目>
 平成23年はかつてない激動の一年であった。「東日本大震災」では大地震に加え大津波・原発事故が重なるなど、過去に例を見ない被害をもたらした。特に原発事故は事故評価が世界で2例目となるレベル7とされ、今なお収束の目途が立たないなど、日本だけではなく世界にも混乱を招く事態となってしまった。政府の対応も後手に回り、国民の信任を失った菅内閣は総辞職に追い込まれたが、後任の野田首相も、先に閉会した国会において国家公務員給与削減法案、郵政改革法案などの重要法案の先送りなど、実行力不足から支持率が下がりつつある。有為転変の世の中、野田内閣には強烈なリーダーシップを発揮して、国民へ光ある未来への道筋を示してくれることを期待したい。
 来年は医療界にとって大きな転換期になると思われる。4月に予定されている診療報酬・介護報酬の同時改定は、超高齢社会へと突入する日本にとって、今後の社会保障の方向性を決める重要なファクターとなりうる。また、仮にTPPへの参加が正式に決定すれば社会保障制度が根底から変わる可能性も否定できない。たしかに高齢化、生産年齢人口の減少下では現状の制度ですべての医療をカバーすることは財政上もはや不可能だし、時代に即した制度の在り方を検討する時期に来ていると考えるが、「何時でも、何処でも、誰でも」という皆保険制度の柱は堅持しなければならない。我々医療人は衆知を結集して時代の変革に柔軟に対応し、国民のために医療を提供していく責務を負っている。来年はそのきっかけとなる年にしたい。

 ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡下さい。
   (事務局担当 情報企画課 下田)

  

担当理事 原  祐 一(広報担当)・原村耕治(広報担当)・竹中賢治(地域医療、地域ケア担当)


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