医療情報室レポート
 

bX8  
 

2006年 6月 30日
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

印刷用

特集:医療制度改革−その2−

 6月14日、参院本会議で与党の賛成多数で可決、医療制度改革関連法が成立した。法律の内容は、増え続ける医療費抑制のため、高齢者の自己負担増や高齢者医療制度の創設、介護療養病床の廃止、生活習慣病対策等が中心となっている。今年10月から順次実施されるが、特に高齢者には負担が更に重くのしかかり、医療機関への影響も計り知れない。
 医療制度改革法成立早々、自民党では「歳出改革に関するプロジェクトチーム」を立ち上げ、更なる医療費抑制の検討を進めている。今後5年間に社会保障分野(雇用保険、生活保護、介護、医療)で合計1兆1000億円の削減を目指すもので、患者・医療機関への更なる負担が懸念される
 今回は、改革の主な内容と改革内容に対する医師会の対応についてまとめた。
  

 
健康保険法等の一部を改正する法律案から


 
医師会の対応




医療制度改革法の問題点について、4月26日の衆議院厚生 労働委員会で内田健夫常任理事が、次いで6月7日には参議院で竹嶋康弘副会長が参考人として日医の見解を述べた。

これに続いて本会議前日の6月13日に、西島英利参議院議 員他の働きかけ等により医療現場の混乱を回避する為の付帯決議が厚生労働委員会で採択された。


付帯決議全文
日本医師会:
「医療制度改革関連法案の付帯決議について」
http://www.med.or.jp/nichikara/futai/index.html
医療制度改革関連法案に対する日医の基本的な考え方
1. 本法案の趣旨は、患者の立場から、安全で質の良い医療を効率的、持続 的に提供する体制を構築し、併せて国民皆保険制度を将来とも堅実に維持することを図ったものと考える。
2. 医療現場の視点で見ると、公平・公正で良質な医療の確保という点で、 なお問題点が存在する。今後参議院での国会審議の中で附帯決議、政省令の運用などの形でこれらが解決され、よりよい医療提供体制が確立されることを希望する。
3. 医療現場に過大な負担を課すものがあり、地域の医療提供体制に困難 な状況が生じることが危惧される。地域特性を踏まえ、医療現場の意見を十分に反映し、柔軟な対応がなされることを望む。
4. 患者の視点からみると、早期退院、総治療期間短縮、在宅医療推進、 情報提供推進等を進めることで、より良い医療提供体制につながると考えられるかもしれないが、現実には基盤整備の遅れ、公的医療 機関の民間への委譲などによる不採算医療の切り捨て、新たな患者負担増の発生という大きな問題を内包していると考えられる。

 
医療制度改革関連法案の付帯決議から
保険外併用
療養費制度
保険外併用療養費制度は、医療における安全性・有効性が十分確保されるよう対処するとともに、保険給付外の範囲が無制限に拡大されないよう適切な配慮をすること。
後期高齢者
医療制度
後期高齢者医療広域連合の設立をはじめ、その創設の準備が円滑に進められるよう、都道府県、市町村、広域連合、医療保険者等に対する必要な支援に努めること。
高齢者の負担 高齢者に対する高額療養費の自己負担限度額の設定、療養病床に入院する高齢者の食費及び居住費の負担の設定、後期高齢者医療制度の保険料の基準の策定に当たって、その負担が過度とならないよう留意し、低所得者への十分な配慮を行うこと。
高額療養費
自己負担限度額
家計に与える影響、医療費の動向、医療保険財政の推移等を踏まえ、検討を加えるとともに、その適用の利便に資するため、政管健保は把握している情報の速やかな通知に努め、国民健康保険においても通知が行われるよう保険者の努力を促すこと。
療養病床再編成 すべての転換を希望する介護療養病床及び医療療養病床が老人保健施設等に確実に転換し得るために、老人保健施設の構造設備基準や経過的な療養病床の類型の人員配置基準につき、適切な対応を図るとともに、介護保険事業支援計画も含め各般にわたる必要な転換支援策を講ずること。
産科・小児科医師
不足
産科、小児科を始めとする特定の診療科及びへき地医療における医師不足問題に対応するため、地域の実情を考慮した医療機能の効果的な集約化・重点化の促進と拠点病院への搬送体制の整備等について、地域医療の関係者が参画する都道府県の医療対策協議会における検討を踏まえ、必要な措置が講ぜられるよう支援を行うこと。
小児救急医療 小児救急医療拠点病院への支援等による24時間対応が可能な体制の確保、小児救急電話相談事業等保護者が深夜等でも相談ができるような施策の充実、患者の容態に応じた適切な受診についての啓発に努めること。
産科医療 安心して出産できる体制の整備を進めるため、地域における産科医療の拠点化・システム化を図るとともに、助産師の一層の活用を図ること。
産科・小児科医療 小児医療・産科医療両者の連携・協力の下に、地域における周産期医療体制の整備を図るとともに、NICU(新生児集中治療室)の確保と、その長期入院患者の後方支援施設も含めた支援体制の構築に努めること。
医療計画制度の
見直し
数値目標の設定や、達成のための措置の結果、地域格差が生じたり、患者・住民が不利益を被ることがないよう配慮すること。また、医療連携体制の構築に当たっては、地域の医療提供者の意見を十分尊重するとともに、地域医療連携については、地域連携クリティカルパスの普及等を通じた連携体制の確立を図るため、診療報酬上の評価等によりその支援に努めること。さらに、在宅医療を推進するため、診療報酬上の在宅医療の対象範囲の見直しを検討すること。
医療事故対策 医療事故対策については、事故の背景等について人員配置や組織・機構などの観点から調査分析を進めるとともに、医師法第二十一条に基づく届出制度の取扱いを含め、第三者機関による調査、紛争解決の仕組み等について必要な検討を行うこと。
皆保険制度 国民生活の安心を保障するため、将来にわたり国民皆保険制度を堅持し、安易に公的医療保険の範囲の縮小を行わず、現行の公的医療保険の範囲の堅持に努めること。

<医療情報室の目>
★医療制度改革の目的は
 今回成立した医療制度改革法の「健康保険法等の一部を改正する法律」の改正の趣旨には、「医療保険制度の将来にわたる持続的かつ安定的な運営を確保するため、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編、統合などの措置を講ずること」とある。「医療費適正化」すなわち「医療費削減」であり、国民(今回の場合は特に高齢者)・医療提供側の一方的な負担を強いる「財政主導の制度改革」がまたしても断行されることになった。
 ところで、6月1日に厚労省が発表した平成17年の人口動態統計によれば、出生数と死亡数の差である自然増加数が史上初めてマイナスとなり、人口が減少に転じたことが分かった。加えて、合計特殊出生率が1.25と今年も過去最低記録を更新し、歯止めがかからぬ少子化に、政府も少子化対策に必要な財源を歳出入改革で確保するとともに税制措置の検討も予定している。
 しかし、経済格差は益々進行し、自殺による死亡が3年連続3万人を超える等、社会的な不安定要因が増大している中で、医療費の自己負担増や年金給付の引き下げ、介護保険や公的年金の保険料の引き上げ等、社会保障に関してだけでも、次から次に負担増を求める政策が進められている状況では、国民は将来の不安を益々煽られ、局所的に少子化対策を立てても笛吹けど踊らずということになりかねない。
 医療制度改革が何の為の改革であるのか、今一度原点に立ち戻る必要がある。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 原  祐 一(広報担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


  医療情報室レボートに戻ります。

  福岡市医師会Topページに戻ります。