医療情報室レポート
 

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2006年 3月24日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:平成18年度診療報酬改定

 平成18年の診療報酬改定は−3.16%(本体-1.36%、薬価・材料価格-1.8%)の大幅引き下げとなっている。
 今改定では「医療費適正化」を目標に、「医療制度改革大綱」や第五次医療法改定案に基づき政府の医療制度「構造改革」がより一層推進された内容となっている。
 主な特徴は、小児・産科医療、麻酔・病理診断、救急医療、IT化、在宅医療が重点化項目とされ、慢性期入院医療、入院時の食事、検査、初再診料等は適正化(主に引き下げ)となっている。
 また、診療報酬改定の過程には、中医協改革による委員の変更、過密なスケジュールの中で厚生労働省の意向が強く表れたこと、内閣による改定率の決定、中医協の公聴会の開催、改定内容についてパブリックコメントを求める等、従来の内容決定に至るまでの過程とは全く異質の形となり、今後の診療報酬改定にも多大な影響を与えるものと考えられる。
 今回は、主な改定内容と厚生労働省が目指す今後の医療の方向などについて纏めた。
  

平成18年度診療報酬改定 主な内容

医療費の内容の分かる領収証の交付の義務化 点数表の各部単位(初・再診料、在宅医療、検査、投薬、注射等)で金額の内訳が分かる領収証を無償で交付することとなった(実施まで6カ月の経過措置を設定)。
また、今回、名称による現場の混乱を少しでも小さなものとするため、日医の社会保険診療報酬検討委員会からの指摘も踏まえ「指導料」を「管理料」に変更。
処方せん様式の変更 処方せんの「備考」欄中に新たに「後発医薬品への変更可」のチェック欄を設ける。
これまでの処方せん様式も使用可。
ニコチン依存症管理料 ニコチン依存症と診断された者のうち、「禁煙を希望する患者」に対する一定期間の禁煙指導を診療報酬上評価することになった。今後は、保険導入の効果を医療機関からの「禁煙成功率」の報告等により検証することになっている。
初・再診料 初診料は病診格差を是正し270点に統一。
再診料は一般病床200床未満の病院で1点、診療所で2点引き下げられたほか、継続管理加算は廃止。
外来診療料は2点引き下げ。
その他、同一医療機関内で同日に複数の診療科を受診した場合、二つ目の診療科の初診に限り135点が算定可。
入院料 従来、減算であった入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策が、入院基本料の要件となった。
在宅医療 新たに診療報酬上の制度として「在宅療養支援診療所」を創設。
24時間患家の求めに応じて、他の医療機関との連携を図りながら往診・訪問看護等が提供できる体制を構築。
小児医療 深夜における小児救急医療の対応体制の評価を充実。
地域連携小児夜間・休日診療料の要件が緩和されたほか、小児入院医療管理料が引き上げられ、更に検査・処置・手術等における小児の加算も引き上げられた。
産科医療 ハイリスク分娩管理加算、ハイリスク妊産婦共同管理料が新設された。
リハビリテーション 施設基準により区分していた現行体系を、四つの疾患((1)脳血管疾患等(2)運動器(3)呼吸器(4)心大血管疾患)別の評価体系に改変。集団療法は廃止され、個別療法のみとし、各々に算定日数の上限が設定された。
また、同時に、消炎鎮痛等処置の同一月内逓減制が廃止された。
手術の施設基準 症例数による加算を一旦廃止、今後、検討会を設けて、手術成績との関係に関する調査・検証を速やかに実施することとなった。
急性期入院医療 一般病棟の入院基本料を看護職員の実質配置、看護師比率、平均在院日数によって簡素化された区分に再構成。
また、紹介率を要件とする入院基本料等の加算(紹介外来加算・紹介外来特別加算、急性期入院加算、急性期特定入院加算、地域医療支援病院入院診療加算2)は廃止され、その代わりに、救急医療管理加算を拡大するなど、急性期医療の評価を別途行うことになった。その他、各勤務帯で看護職員一人が何人の患者を受け持っているか、病棟内に掲示することとなった。
有床診療所 有床診療所入院基本料の看護職員の配置による区分を簡素化。
14日以内の評価が引き上げられる一方、15日以降の評価が引き下げられ、短期間の入院施設としての役割が明確化された。更に現行の医師の数による加算が40点から100点に引き上げられた。
慢性期入院医療 療養病棟入院基本料に医療区分およびADLの状況による区分に基づく患者分類を用いた評価を導入。
(平成18年7月実施)医療保険と介護保険の役割分担の明確化が図られた。
臓器移植術の保険導入 心臓移植、脳死肺移植、脳死肝臓移植、脳死膵臓移植が保険導入。
入院時食事療養費 一日単位で評価を行っている取り扱いを改め、一食当たりの費用を設定。特別食加算が見直されたほか、特別管理加算、選択メニュー加算が廃止された。
透析 人工腎臓にエリスロポエチンが包括、夜間・休日加算が当初廃止とされていたが、それぞれ300点となった。

厚生労働省の計画

厚労省では医療費適正化として次の内容を計画しており、今改定を含めた今後の方向性を示している。
医療費削減を推進する計画は今後の診療報酬改定にも大きく影響するものと考えられる。(以下厚労省資料より作成)
医療費適正化計画の推進
(医療費適正化の総合的な推進)
  医療費の伸びが過大とならないよう、糖尿病等の患者・予備群の減少、平均在院日数の短縮を図るなど、計画的な医療費の適正化対策を推進する。
(医療費適正化計画の推進)
  (1) 国の責任のもと、国及び都道府県等が協力し、生活習慣病対策や長期入院の是正などの計画的な医療費適正化に取り組む。
  (2) 計画の推進のための支援措置を講ずる。健康増進計画や医療計画、介護保険事業支援計画と整合のとれたものとして作成し、施策の連携を図る。
  (3) 計画を確実に実施するための検証を行う。
※ 医療制度改革大綱より抜粋

各種取り組みと医療費適正化の関係

 

<医療情報室の目>
★平成18年度診療報酬改定の意味
  医療に於ける初診料・再診料は医師の技術料の最も基本部分であり、又、医療機関に於ける経営の骨組みである。再診料については逓減制廃止の際に1点ずつ引き下げられており、今改定における更なる引き下げは医療の質・継続性を無視した改定と言える。また、今改定では「患者の視点重視」とした観点が取り入れられたことから、医療提供側の事情が十分に取り入れられなかったことは否めず、医療機関にとっては今改定により多大な減収があることが予想されるが、現実的にどれ程の影響になるのか試算は困難である。
  また、今改定においては、多くの項目を適正化(マイナスに)し、在宅医療や小児科・産科などが重点化された厚生労働省の意向が強く働いた結果となり、数年後を見据えた今後の診療報酬改定の方向性を示した内容であるとも言える。
  国民皆保険制度が成立してから、約45年続いた医療保険制度の在り方が今改定で大きく変わっていく可能性を孕んでいるとも考えられ、診療報酬の引き下げが医療の質・安全をも低下させ、最終的に国民が十分な医療を受けることができなくなる恐れがあることは常に訴え続けていかなければならない。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 津 田 泰 夫(広報担当)・入 江 尚(情報担当)・大 木 實(渉外担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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