医療情報室レポート
 

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2003年 2月28日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:3割負担は本当に必要なのか

本年4月から予定されている被用者保険本人自己負担3割への引き上げに対し、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会の四師会は、その実施凍結を強く主張し、各地の都道府県医師会、郡市区医師会においても積極的に3割負担実施反対運動を展開している。
しかも、ここへきて野党四党の凍結法案提出や、地方議会で凍結を求める意見書が採択されているほか、連合など労働者団体や市民団体などからも凍結・延期の声が上がっており、更には自民党内でも慎重意見が出されるなど、3割負担実施の是非を問う動きが急速に拡がりを見せてきた。
“今、何故3割に引き上げなければならないのか”“3割負担は本当に必要なのか”今回は、不況にあえぐ経済状況下、更に国民に追い打ちをかけるような政策といえる3割負担実施の必要性について考えてみたい。
  


負 担 の 状 況

 
★わずか5年半で50%増

被用者保険本人の自己負担は、昭和59年(1984年)にそれまでの初診時定額(800円)負担から、定率性が採用され1割負担となり、平成9年(1997年)に2割に引き上げられました。
それからわずか5年7カ月で1.5倍となる3割へ引き上げられようとしています。
★既に家計負担は5割に近い

国民医療費の財源別構成は、公費、保険料、患者負担で表されていますが、被用者保険の保険料は事業主との折半となっています。
そこで日本医師会では、公費、事業主、家計(保険料+患者負担)という区分を用い、「負担の主体」を明確にした指標を示しています。(右図参照)
図表からも、国民医療費の増に対し公費の支出は据え置かれ、全ては国民(家計)に転嫁されてきたと言えます。
経済不況による給与所得の大幅な減少、企業業績の悪化などの現状並びに諸外国の公費支出割合との比較からも、今後の医療費増に対する支出は公費負担の増額により賄われるべきです。
 

保険財政の状況

★財政状況は改善された

3割負担の必要性は、医療保険の財政事情の悪化、特に政府管掌健康保険の破綻回避のためであるとしています。
しかし、日本医師会は3割負担を実施しなくても既に財政状況は改善されるとして、数字を示し強く主張しています。
○日医が示す政管健保財政改善の要素とその影響(試算)
1.診療報酬マイナス改定(H14.4実施)
               → 14年4〜8月医療費:前年同期1935億円減、政管健保は前年同期比4%減 ※

2.高齢者の一部負担定率制の導入(H14.10実施)
               → H14年10月診療分医療費:前年同月比3.3%減、医科入院外7.7%減

3.賞与に対し同一保険料を徴収する「総報酬制」の導入(H15.4実施予定)
→  厚労省は3割負担を導入しても黒字額は594億円に止まると推計しているが、これら医療費の減少傾向を織り込んだ日医の試算では、3割負担の実施を凍結しても、(政管健保の)単年度収支は2468億円の黒字へと大幅に改善する
                               ※日本医師会「JMA PRESS NETWORK」ニュース(2003.2.13)より
                                 ホームページアドレス http://www.jmapress.net/

★政管健保の事業運営安定資金等の推移
1. 2001年度の政管健保の決算は、単年度収支で4,710億円のマイナス、事業運営安定資金残高は5,071億円のプラスであった。
2. 2002年度の予算編成時に厚生労働省は、政管健保の収支見通しを立て、単年度収支で7,782億円の赤字、事業運営安定資金も1,812億円のマイナスとした。これが3割負担導入の根拠とされた。
3. しかし、診療報酬の引き下げや、それに伴う受療自粛等により、医療費の状況は大きく変化した。状況変化を折り込んで平成14年度値を推計すると、単年度収支は3,162億円の赤字となるが、事業運営安定資金は1,909億円のプラスを維持する。事業運営安定資金ベースで見ると3,721億円改善することになる。
4. 2003年度になると総報酬制による保険料徴収が開始される。その効果等により、単年度収支は4,995億円の黒字となり、事業運営安定資金も6,904億円のプラスとなる。
 
5.  2004年度に入ると、対象年齢引き上げ効果による老人保健拠出金の削減が本格化する。その効果等により、単年度収支は6,129億円のプラスとなり、事業運営安定資金も13,033億円のプラスとなる。
6.  2002〜2004年度の3年間で、事業運営安定資金は1.5兆円改善されるため、3割負担導入の必要性はない。
7.  その後の2年間(2005年度・2006年度)についても、2001年度並みの給付等の伸びがあったとしても、事業運営安定資金はさらに約1.2兆円増加し、向こう5年間を展望しても3割負担導入の必要はない。
 
                                     <日医ニュース第991号(平成14年12月20日)より>

<医療情報室の目>

★ペイオフ解禁延期より3割負担実施凍結が国民に安心を与える
 3割負担の実施は、診療報酬マイナス改定の影響が表れる前に決定されたことであり、その後の医療費の大幅減少に伴う保険財政事情の改善が見られるのであるから、再度検討(凍結・延期)を議論することは何ら不思議ではないと思う。生活に直結する本問題は、国債30兆円枠の公約破棄やペイオフ解禁の延期より、よほど柔軟に対応すべき問題ではないかと考える。

★患者は受益者ではなく受難者
 小泉首相が唱えた「三方一両損」における、患者も痛みを分かち合うという考え方の根底には、「医療を受ける患者は受益者」という認識があるように思える。果たして患者は受益者だろうか。否、医療を受けなければならなくなった「受難者」といえる。身体への負担とともに金銭的な負担を今以上に強いることが果たして国策だろうか。保険の概念からも、これ以上窓口負担を増やすことはできるだけ避けるべきであると考える。

★社保本人2割、国保3割は不公平ではない
 患者負担の違いだけをみて制度の不公平を指摘することがあるが、国保は加入者の保険料に加え、公費を50%注入して運営している。従って制度全体で考えると保険料負担率の高い被用者保険の本人窓口負担が2割であっても不公平ではないといえる。3割負担とすることが逆に制度間の不公平を生むことになる。

★受診抑制が更なる医療費増を招く
 患者負担増により期待される医療費の削減は一時的なものであると考えられる。「必要な受診」までもが抑制され、結果的に重症化に伴う医療費の増加がもたらされる。日医総研のリサーチでは、乳幼児医療費の助成制度の適用状況と外来受診率との関連が示され、患者の経済負担がある場合に外来受診が抑制される可能性を指摘している。患者負担への転嫁という安易で小手先だけの改革ではなく、早急に抜本的改革が望まれる。先ず、高齢者医療の改革が急務であろう。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 百富 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄 均・江 頭 啓 介・入 江  尚


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