医療情報室レポート
 

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2002年10月25日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:医療保険制度改革の行方 −その3−

 7月26日に可決成立した医療制度改革関連法の第一弾として、今月1日より高齢者一部負担金の見直しなど新たな制度がスタートしたが、診療所の定額制廃止を含めた負担月額上限の引き上げ、また、来年4月から実施される被用者本人の3割負担など、今回の改定も医療制度の抜本改革を先送りし当面の財源確保を国民にのみ求めたものであるといえる。
 坂口厚生労働大臣は、9月25日に公表した医療制度改革大臣私案を踏まえ、11月中にも医療制度改革の厚労省案を取りまとめるとしているが、日医をはじめとする関係諸団体や与党議員との調整についてはこれから本格化していくものとみられる。
 今回は、坂口大臣の医療制度改革に向けた私案を紹介するとともに、今後、医療制度改革論議の中でどの様な問題が浮上する可能性があるのか考えてみたい。
  



健保法等一部改正の概要

平成14年10月実施 平成15年4月実施
 ○一部負担金・自己負担額の見直し
  ・70歳以上は原則1割負担(一定以上所得者は2割)
  ・3歳未満乳幼児は2割負担に引下げ
 ○高額療養費の見直し
  ・70歳未満の高額療養費見直し
  ・70歳以上の高額療養費の新設
 ○老人医療受給対象年齢の引上げ等
 ○一部負担金・自己負担額の見直し
  ・3歳以上70歳未満は3割負担に統一
  ・外来に係る薬剤一部負担金の廃止
  ・任意継続被保険者期間の最大2年での統一
          (55歳以上退職の特例廃止)
  ・資格喪失後の継続療養の原則廃止


医療制度改革『大臣私案』


坂口厚生労働大臣は9月25日、医療制度の抜本改革に向けた大臣私案を以下の通り公表した。
大臣私案では、@国保、政管健保、組合健保の都道府県単位への集約 A新高齢者医療制度の創設 B診療報酬体系の見直しなどが大きな柱となっているが、厚労省は、この大臣私案をベースに議論を進め、11月中に「(改革の)明確なサイン」として厚労省案を取りまとめる考えを明らかにしている。
  

 基本的考え方

診療報酬体系については、患者の視点から質が高く効率的な医療を提供するとともに、医療技術や医療機関の運営コストが適切に反映されるよう、基準・尺度の明確化を図り、透明性の高い体系へと見直しを進める。
  

 改革の基本的方向

診療報酬体系を医療技術の評価(ドクターズフィー的要素)と医療機関の運営コストを反映した評価(ホスピタルフィー的要素)に再編。
  

1.医療技術の適正な評価(ドクターズフィー的要素)   

○医療技術については、出来高払いを基本としつつ、「難易度」や「技術力」、「時間」等を踏まえた評価を推進するとともに、重症化予防や生活指導を重視。
  

2.医療機関の運営コストを反映した評価(ホスピタルフィー的要素)   

○医療機関の運営コスト等に関する調査・分析を進め、入院医療の包括化を推進することとし、急性期については疾病特性や「重症度」に応じた評価手法の検討を進め、慢性期については患者の病態等に応じた評価を推進。
  

3.患者の視点の重視   

○医療機関等に関する情報提供や患者の選択を重視。   

○患者のニーズの多様化・高度化を踏まえ、高度先進医療を拡大。   

○診療所についてプライマリケア機能を重視。
  

 参考:坂口厚生労働大臣が示す「医療制度改革の道筋」



日医、今後の医療制度改革への対応

○高齢者医療制度(独立型保険方式)の創設   

厚労省では、高齢者医療制度の創設について「年齢リスク構造調整方式」を軸に議論が進められようとしているが、日医および日本経団連は、後期高齢者を対象とする「独立型保険方式」を従来より提唱している。   

【独立型保険方式】   

全ての高齢者を対象として各医療保険制度から独立した制度を創設する。   

【年齢リスク構造調整方式】   

現行の保険者を前提とし、保険者の責によらない加入者の年齢構成の違いによって生じる各保険者の医療費支出の相違を調整し、保険者間の負担の不均衡を調整する。   

○医療保険の再編・統合(一般医療保険の地域保険への一元化)   

組合健保も市町村国保も、各保険者間の規模や保険料に格差が大きく、社会保障の原則である公平性、平等性の観点からこれを是正することが必要。   

○診療報酬体系の見直し、医療提供体制のあり方の検討など   


今後、注意(阻止)すべき項目

9月30日に発足した小泉改造内閣は、改革の柱の一つである医療制度改革について、再任の坂口力厚労相を中心として今後議論を継続するものと思われるが、竹中経済財政担当相、石原行革担当相が揃って再任したことからも、経済財政諮問会議や総合規制改革会議における医療分野の議論が継続され、今後も引き続き、株式会社の医療参入問題や、混合診療の取り扱い等が焦点となってくる事が予想される。   

○混合診療の容認   

新小泉改造内閣に留任した坂口厚労相は、基本的に公的保険を基軸とする考えに変わりはないとしながらも、急速に発展する医療技術の革新に応じて制度的に議論すべきは議論するとの姿勢を示している。   

○株式会社の医療経営参入   

今月11日に決定した「構造改革特区推進のためのプログラム」で株式会社の医療参入が見送られたことに対して、総合規制改革会議の宮内議長は、第2弾・第3弾で実現を目指したいとしている。   


<医療情報室の目>

 今回の改定は、患者負担を大幅に増やし世界に誇れる我が国の医療保険制度を大幅に後退させるものである。窓口負担の定率化及び月額上限制が廃止されたことにより、受診抑制が必至と考えられるが、このことにより疾病の早期発見・治療に深刻な影響を与えることが一番の問題である。
 今後さらに、健保本人の負担が3割となり、被用者保険の保険料率に総報酬制が導入され、政管健保の保険料率の引き上げ等が予定されている。保険料率の引き上げは、実質的な賃下げとなり可処分所得の減少に繋がるため、3割負担も合わせると受診抑制への影響は非常に大きいものと思われる。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 中道 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄 均・江 頭 啓 介・入 江  尚


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