医療情報室レポート
 

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2002年6月28日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:株式会社の医療経営参入 −その2−
政府は、3月29日「規制改革推進3か年計画」の改定案を閣議決定した。
「新・3か年計画」の内容は、昨年12月に政府の総合規制改革会議が取りまとめた「規制改革の推進に関する第一次答申」をほぼ反映させた形となり、医療機関経営に関する規制の見直しについては、本年度中に検討を進めるとの方針が示された。
総合規制改革会議は、本年度の運営について「経済活性化のための規制改革」を主題に“分野横断的”な課題について検討を進めていくとしており、医療等を含む非営利色・公的関与の強い、いわゆる「官製市場」の規制改革を課題の一つとして取り上げ、株式会社の参入を第一の検討項目に位置づけている。
前回のレポートでは、株式会社の医療経営参入による問題点等について特集したが、今回は、これまでの政府の取り組み等主なものを取り上げ、その要点等について時系列的に整理してみた。

株式会社参入問題に関するこれまでの流れ

政府の取り組み

日本医師会の提言

総合規制改革会議(H13.5.11)
  初会合開催。総理の諮問会議として内閣府に設置され、規制の在り方の改革に関する基本的事項について総合的に調査審議するとともに、「規制改革推進3か年計画」の実施状況を監視することを目的とする。

総合規制改革会議「重点6分野に関する中間取りまとめ」公表
  医療分野における具体的施策の中に、医療機関の経営形態の多様化理事長要件の見直しなどが盛り込まれる。      (H13.7.24)

社会保障審議会医療部会(H13.9.17)
  初会合開催。厚労省の医療制度改革案をもとに、医療提供体制のあり方について議論を行っていく。

これからの医業経営の在り方に関する検討会(H13.10.29)
  初会合開催。医療法人制度の組織運営、医業経営の近代化のための方策等について検討するため、医政局長の私的検討会として設置。

総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第1次答申」を提出
  【医療に関する具体的施策】    (H13.12.11)
   ・医療機関経営の規制の見直し
     株式会社方式などを含めた医療機関経営の在り方を
     検討するべき。
   ・理事長要件の見直し
     合理的な欠格事由のある場合を除き理事長要件を
     廃止するべき。等

これからの医業経営の在り方に関する検討会(H14.3.25)
  【中間報告書による意見集約】
   @医療法人理事長要件の見直しについては、現行の制度・
    考え方を維持した上で、更なる緩和を図ることが適当である。
   A医療法人の経営情報の開示については、自主的開示が促進
    されるための環境整備を行うにとどめることが適当である。
    但し、公益性の高い特定医療法人等に対しては積極的開示
    を要請すべきである。

社会保障審議会医療部会(H14.3.28)
  意見書「医療提供体制に関する意見」をまとめ坂口厚労相に報告。
  株式会社方式の医療機関経営について否定的見解を表明。

「規制改革推進3か年計画」改定案が閣議決定(H14.3.29)
  「株式会社方式」等の文言を修正。

総合規制改革会議(H14.4.15)
  重点6分野を軸として、規制改革の横断的検討に着手する事を確認。
  医療分野への株式会社参入問題については、分野横断的に横串の議論を行っていく方針を明らかにする。

総合規制改革会議(H14.5.15)
  7月を目途に取りまとめる「中間報告」について論点整理。
  「株式会社参入」を再度盛り込む方向へ。

総合規制改革会議(H14.6.11)
  「営利を目的として開設しようとするものに対しては病院の開設の許可を与えない」とする医療法第7条5項の廃止など、医療法改正の検討を確認。


総合規制改革会議「基本方針」に関する声明(H13.7.17)
   【株式会社の医療経営参入の論点と影響】
    ・非営利法人との会計構造の相違から派生する医療費の増大
    ・実利追求型の資本の論理の横行
     → 医療倫理の崩壊 → 国民の健康権の侵害





 日医は、第9回総合規制改革会議における関係団体等ヒアリングの中で「重点6分野に関する中間取りまとめ」に対し、営利企業の参入と公民ミックスによるサービス提供について「命に値段をつける提案」として反対姿勢を表明。(H13.9.20)




 坪井会長は日医臨時代議員会の所信表明の中で「経済財政諮問会議、総合規制改革会議の基本方針については「医療政策をマネーゲーム化する意図ではないかと疑われるような発想のみが提示された」とし、「改革を混乱させた責任は甚だ重大」と非難。
(H13.10.16)





 坪井会長は都道府県医師会長協議会の挨拶の中で「老人医療費の伸び率管理、総額規制、株式会社による医療経営参入など、ヨーロッパとアメリカの管理医療の悪い部分を選りすぐって導入しようとする政府のやり方には絶対に反対」と明言。(H14.2.12)





 糸氏副会長は記者会見の中で「株式会社の参入により、医療費は高騰し、利益優先主義の経営により医療の公平性・平等性を失い質の低下を招きかねない。所得格差により医療の格差が生じることも危惧される」などを表明。(H14.3.20)





櫻井常任理事は、中国四国医師会連合総会の社会保障・地域医療分科会の中で「株式会社参入」が再度盛り込まれることに対し「米国の圧力が働いた可能性がある」と懸念を示し、国民皆保険制度を堅持するため「闘うべきだと思う」との構えを強調。(H14.5.25)

規制改革推進3か年計画(改定)

 総合規制改革会議「第一次答申」の医療分野では、医療機関の規程の見直しについて「株式会社方式などによる医療機関経営のあり方を検討すべき」などの提言がなされていましたが、「規制改革推進3か年計画」の閣議決定案では次のとおり一部文言の修正が行われました。

  【医療機関経営に関する規制の見直し】
   「株式会社方式などを含めた医療機関経営の在り方を検討」→「民間企業経営方式などを含めた医療機関経営の在り方を検討」

  【理事長要件の見直し】
   「理事長要件を廃止する」→「理事長要件を原則として廃止する」


賛成論派と反対論派
 
                        Q.株式会社による医療機関経営を認めるべきか?


 これまで、医療分野への株式会社参入の是非をめぐっては、医療界と経済界の間で激しい議論が交わされてきましたが、医療界(医師)の全てが反対論派というわけではありません。
 日本医事新報社が昨年10月に実施したアンケートでは、医師の16%が株式会社参入に賛成であるとの回答結果が出されており、賛成派、反対派それぞれの理由についても次のような回答がなされています。



<医療情報室の目>

 「規制改革推進3か年計画」の改定にあたっては、自民党厚労部会・医師会の強い反発の中、「株式会社方式」を「民間企業経営方式」と表現を後退させるなどの調整が図られたものの、内閣府は「民間企業経営方式」の意味について「株式会社、有限会社を含めるもの」との考えを示している。
 また、総合規制改革会議の宮内義彦議長は、民間が参入しづらい分野の一つとして医療分野を具体的に挙げたうえで「どのように(株式会社を)入れ込むか検討したい」と述べ、来月取りまとめを予定している「中間報告」に再び株式会社の参入を盛り込んでいく方針を明らかにしており、株式会社参入問題については今後ますます議論が本格化するものと考えられる。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
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担当理事 長 柄 均・江 頭 啓 介・入 江  尚


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