医療情報室レポート 
 

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1999年10月29日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:結核緊急事態宣言
本年7月26日、厚生省から「結核緊急事態宣言」が発表されました。
かつて国民病と呼ばれた結核も、医療の進歩や結核対策の成果によりその数も年々減少を続け
“結核は過去の病気”との認識が医療関係者の間でも一般的となっていました。
しかしながら、平成9年に新規患者数が38年ぶりに増加し、新聞紙上には連日のように結核
の集団感染を報じる記事が掲載されています。
我々医師は、集団感染を未然に防ぐためにも患者の早期発見に努めなければなりません。
今回は結核感染対策について特集しました。

 結核患者の動向 
減少を続けてきた新規発生結核患者数が、
平成9年には38年ぶりに前年を上回りました。
 各 国 の 状 況 
日本の結核の状況は先進諸国中では最下位クラスで、
30年以上も遅れています。
 結核の新たな問題点 
○国民及び医療・行政担当者の結核に対する認識の低下(結核は過去の病気との錯覚)

○薬の効かない多剤耐性結核の出現

○続発する集団感染院内感染

高齢者の結核患者の増加

○結核蔓延状況の地域間格差の拡大

 医療機関における留意点 

  −診療に際して−
○咳や微熱が続く患者が受診した場合、結核も念頭において診察する。
  −院内感染対策−
○職員の健康管理: 結核予防法第4条に基づき、定期健康診断の実施を徹底する。
検診結果は翌月の10日までに保健所に届出が必要。
○設備環境の管理: 菌陽性患者を収容する病室がある場合、空気がエアコンのダクト等を通じて他の部屋に流入させないための措置が万全であるかを確認する。
○衛生管理・教育: 医療機器、介護器具などは衛生的な使用に努める。
職員に対して、結核についての知識の普及を図る。 
  −法 的 届 出−
結核予防法第22条第1項:医師は、診察の結果受診者が結核患者であると診断したときは、 2日以内に、その患者について省令で定める事項を、もよりの保健所長に届け出なければならない。 
  ※省令で定める事項(結核予防法施行規則第13条)
  1.患者の住所、氏名、生年月日性別及び職業並びに患者の属する世帯の世帯主の氏名
  2.病名
  3.初診の年月日
  4.診断の年月日
  5.医師の住所(病院又は診療所の名称及び所在地)
○結核予防法第23条第1項: 病院の管理者は、結核患者が入院したとき、又は入院している結核患者が退院したときは、7日以内 に、その患者について省令で定める事項を、もよりの保健所長に届け出なければならない。 
 ※省令で定める事項(結核予防法施行規則第14条)
  ・入院したとき
    1.患者の住所、氏名及び患者の属する世帯の世帯主の氏名
    2.病名
    3.入院の年月日
    4.病院の名称及び所在地

  ・退院したとき
    1.患者の住所、氏名、生年月日性別及び職業並びに患者の属する世帯の世帯主の氏名
    2.病名
    3.退院時の病状及び菌排泄の有無
    4.退院の年月日
    5.病院の名称及び所在地

 
 結 核 の 治 療 

  −公 費 負 担−
一般患者に対する医療:結核予防法第34条により、結核患者に対する医療費の100分の95を公費より負担を受ける。
従業禁止、命令入所者の医療: 結核予防法第35条により、都道府県より従業の禁止又は結核療養所への入所を命ぜられた場 合、医療に要する費用については公費により負担を受ける。一部負担については患者・配偶 者等の費用の負担能力により決定される。
  −指定医療機関−
結核予防法第36条により、同法第34条・35条に規定する医療を行うためには、都道府県より指定を受けなければならない。
  −治 療 法−
リファンピシン(RFP)とイソニコチン酸ヒドラジド(INH)を中心とし、ほかにいくつかの抗結核薬を合わせた化学療法が行 われるが、昔と異なり大体6カ月から9カ月で終了する。これを短期化学療法と呼ぶ。わが国では昔の名残か長期療養させる医 療機関が多かったが、ようやく短期療法が徹底してきた。
尚、服薬を中途で止めると耐性菌をつくりやすいので、これを防止するために、医療従事者の見ている前で確実に服薬させる ことがWHOで奨励されている。

<医療情報室の目>
★まず我々医療従事者が感染源にならないように
 院内感染が拡大する要因の一つとして医療従事者が感染源となることが指摘される例があります。
 抵抗力のある従事者には発病せず、患者に感染し発病するケースがMRSAなど他の感染症においても見受けられます。
 職員の定期健康診断は、労働安全衛生法、結核予防法によりその実施が定められています。更に充分な対策としては胸部X 線撮影に加え喀痰検査や雇入時のツ反検査が望ましいとされています。
 また、院内の衛生管理は感染症対策としては最低限のことだと思います。基本的部分をきちんと行うことが感染防止につな がることは先生方も十分に理解されているところと思います。

★早期発見が院内感染・集団感染防止の基本的かつ有効な方策
 咳や痰が2週間以上続くような患者の場合、結核も念頭におき検査等を実施することが重要です。
 医療機関には疾病により抵抗力の低くなった方や高齢者が入院・受診することが多く、感染が広がる可能性が非常に高くな ります。まず早期発見に努め、患者発生時は速やかに保健所へ届け出るなど適切な対応をとることが基本です。
 尚、本会の週報に月1〜2回、福岡市保健福祉局より結核新規発生状況について特色ある症例を中心に事例を紹介しており ます。日常診療の場で結核患者早期発見の参考資料として是非ご一読下さい。

日本医師会雑誌に院内感染予防の手引きを掲載予定
日本医師会感染症危機管理対策室等の協力により、厚生省にて「結核院内感染(施設内)感染予防の手引き」が作成されました。
医療機関を対象として、外来や病床、精神病院での対応など個々に応じた具体的な対応が示されているほか、職員の健康管理や 構造設備面での対策等必要最小限の事項が記載されています。日医雑誌11月15日号に掲載される予定です。是非ご一読のう え防止策に努められますようご案内します。

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