九州大学医学部を卒業、16年間小児科医としてこどもの病気の治療に携わり、そ の後福岡市役所に勤務。現在は、こどもの心の相談に総合的に対応する施設「えが お館」の名誉館長を務めていらっしゃいます。
〜福岡市こども総合相談センター「えがお館」名誉館長 坂本雅子さん〜
【坂本 雅子さんプロフィール】 1942年 鹿児島県生まれ。 1967年 九州大学医学部卒業。1983年まで九州 大学、済生会福岡総合病院などで小児 科医として勤務。 1983年 福岡市役所勤務。保健所や市役所で健 康づくり、感染症、高齢者、こどもの 問題などを担当。 1994年 福岡市健康づくり財団専務理事。 1998年 保健福祉局医監 1999年 福岡市助役 2003年 福岡市顧問。福岡市こども総合相談セ ンター「えがお館」名誉館長、福岡市健 康づくり財団理事長。
●えがお館はどんな機能を持っているのですか? 「えがお館」は、2年前に、福岡市の児童相談所といじめ・不登校などの相談を受 ける教育相談、それに青少年相談センターの3つの相談機関がひとつになって、赤 ちゃんから20歳までのこどもにかかわる相談を総合的に受けるためにつくられた こどものための施設です。年間約一万一千件の相談が寄せられています。 最近、こどもの虐待や、少年の事件、こどもが被害にあう事件など、こどもにと ってとても厳しい社会状況です。「えがお館」の役割が大変大きくなって来ました。
●えがお館の館長さんとして、お仕事の魅力やご苦労を聞かせてください。
根っからのこども好きで、小児科医から出発しています ので、こどもにかかわる仕事ができることは、幸せと思っ ています。強いて苦労と思うことをあげるならば「えがお館」 に寄せられるこどもの問題は、すぐに解決できないことが 多いことでしょうか。 体の病気の場合は、こども自身も訴えますし、家族や周 りの方も「どうしたの?」と聞きます。心の問題は、訴える ことが難しく、気付いてくれる大人もいないことが多いの
で、こどもたちはひとりで悩みながら生きています。子育てに困難を持っている家 庭も孤立しておられる場合が多い。なかなか、支援が届かない。からだの病気を早 期発見していくように、小さい頃からの家庭の子育てをみんなで支援していくこと が大切と日々痛感しています。
●今、小児科医として健診をされていらっしゃるとか。 ずいぶん長い間赤ちゃんの健診をすることはなかったのでちょっととまどってい ますが、勉強しなおして、福岡市の保健所の健診をちょっとだけ手伝っています。 お母さん達の話を聞いたり、赤ちゃんの診察をしたりしながら「子育てを応援する健 診」をしたいと思っています。
●ところで、森林浴ならぬこども浴という言葉を聞いたことがありますが、 こども浴の大切さについてはどう思われますか。 こどもには「人間浴」が必要とよく言われますね。さまざまな人に囲まれ、さまざ まな経験をしながら大人になっていく人間浴。反対に今、大人には「こども浴」が足 りないかもしれません。身近なところでこどもの持っている素晴らしさや、大人を 幸せにする力に触れる機会が少ないように感じます。 こどもには「人間浴」、大人には「こども浴」。こどもは、素晴らしい力を持ってい ます。次世代の少子化も、もっとこどもの力を信じて、こどもの力で乗り切った方 がいいのではないでしょうか。
●ご自身の健康については。 入院するような病気はしたことがないんです。風邪もあまりひきません。親に感 謝しなければいけないですね。ただ、更年期以降、油断すると太ります。コレステ
ロールも高くなりましたね。福岡市でミニドックを受 診された方のデータでも、60代の女性で50%を超 えて多いのが高コレステロール血症です。受診者の半 分以上が異常というのはほかにありません。
●坂本さんの健康法を教えて下さい。 健診はきちんと受けています。ガン健診、歯科健診なども必ず。そして、太らない ように毎日体重計にのってバランスの良い食事を心がけています。外食する機会も 多いのですが、食べ方を工夫しますね。油分の多いメニューは避けるとか、前後の 食事を減らして調整しています。そうしなければすぐに太ってしまいますから。 歩くことが一番大事だと思っているのですが、なかなかできずにいます。
●精神的な面での健康法はありますか。 ネガティブになりすぎないこと。考えてもどうしよう もないところまで来たらそれ以上は深追いしない。若い 頃ガンセンターで小児科医として働いていたとき教えら れたことです。 当時は、患者さんのことでいつも思い悩んでいました。 一日を終えても、明日はどうなるだろうか、ああでもな いこうでもないと考えてしまって。明日のことが不安。
そんな時、上の先生に言われたんです。「今日は精一杯したのだから、はやく保育園 に行って○○ちゃん(娘の名前)を連れて帰りなさい。明日また来て頑張ればいいじゃ ない」って。きっと私が悩んでいる姿を見るに見かねてのアドバイスでしょうね。そ の言葉は、目から鱗のアドバイスでした。それ以来、今日精一杯やって、明日はまた 明日考えるように努めています。少しは楽になりましたね。