医療情報室レポート
No.235

2019年12月20日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集:令和元年(平成31年)をふりかえって

 本年4月30日、平成の天皇陛下が御退位され、約30年続いた「平成」が幕を閉じた。5月1日には皇太子徳仁親王殿下が第126代天皇に御即位され、「令和」という新たな歴史の幕が上がる大きな時代の節目の一年となった。
 昨年に引き続き、地球規模の温暖化の影響と思われる集中豪雨や強大な台風が発生し、九州北部や東日本に甚大な被害をもたらすなど、今年も全国各地で自然災害が相次いで発生した。また、高齢者の運転事故やあおり運転、痛ましい児童虐待の事件などが多数報道された。我々の暮らしに直結する消費税の増税が5年半ぶりに行われ、8%から10%への増税分に対する診療報酬改定は行われたものの、前回の当レポートNo.234(消費税増税が医療界に与える影響)でも特集したとおり、「控除対象外消費税問題」の根本的な解決には至っていない。
 一方、明るいニュースとしては、吉野彰旭化成名誉フェローがノーベル化学賞を受賞し、アジアで初めてラグビーワールドカップが日本で開催され、日本が初の8強入りを果たす快挙を成し遂げるなど、未来への希望が持てるような話題もあった。
 今回は、毎年恒例の特集である今年一年の出来事をまとめ、“令和元年(平成31年)をふりかえって”みた。

●令和元年(平成31年)の主な出来事

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス


・日医会員数17万1,150人(2018.12.1付)、前年比951人増で6年連続増加。
・日医認定産業医制度による認定産業医数が10万224名となり10万人突破。
・「第55回九州首市医師会連絡協議会」開催(熊本市)
・2018年の救急出動件数、前年比13万1,889件増の634万5,517件、9年連続過去最多更新。
・国立感染研究所、2018年の梅毒感染者数が前年比約1,100人増の6,923人と公表。
・帝国データバンクが倒産動向調査結果公表。2018年の医療機関の倒産件数は前年比15件増の40件。
・厚労省が「毎月勤労統計調査」にて不正な調査、統計を行っていたことが発覚。
・福岡市「要介護認定事務センター」開設、全区の要介護認定事務を集約化。
・法務省は2018年の外国人入国者数が前年比267万人増の3,010万人で過去最多更新と発表。
・千葉、小4女児虐待死事件。
・中国の月探査機が月の裏側へ着陸成功。
・第160回直木賞受賞作、真藤順丈「宝島」。
第160回芥川賞受賞作、上田岳弘「ニムロッド」と町屋良平「1R1分34秒」。
・レスリング吉田沙保里選手が現役引退表明。
・テニス大坂なおみ選手、全豪オープンで日本人初大会優勝。
・横綱稀勢の里が引退。


・県医、経済連携協定に基づく看護師候補者で帰国者の再挑戦支援事業に関する覚書をインドネシア保健省と締結。
・マイナンバーカードを健康保険証として使用できる健康保険法改正案が閣議決定。
・厚労省、妊婦加算の凍結等を受けて設置された「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」の初会合を開催。
・北海道胆振地方中東部を震源とする地震、厚真町で震度6弱。
・大阪や三重を中心に麻しん流行。患者数が220人を超える。
・小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」への着陸に成功。
・家畜伝染病「豚コレラ」感染拡大、5府県で確認。
・沖縄県民投票で辺野古埋め立て「反対」7割。


・日医、「第6回赤ひげ大賞」表彰式開催。
・市医臨床検査センター、「天神ラボラトリー」を中央区舞鶴(あいれふ内)に開所。
・市医、「第8回慢性腎臓病(CKD)市民公開講座」開催。参加者425名(天神スカイホール)
・2018年の全国の自殺者数は前年比481人減の2万840人、9年連続減少。
・厚労省、「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書公表。2024年度から適用する医師の時間外労働の上限等を示す。
・福岡市、妊娠を希望する女性などを対象とする風しん抗体検査と予防接種を委託医療機関で開始。
・内閣府が中高年の「引きこもり」調査結果公表。全国で61万3,000人、8割近くが男性。
・日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告保釈。日産・ルノー・三菱で提携協議の新会議設置。
・米大リーグ、マリナーズのイチロー選手が現役引退発表。
・東京都の病院で昨年8月、透析中止を選択し女性が死亡していたとの報道。


・市医、最大10連休となるゴールデンウィーク中の外来実施医療機関が検索できる特設ページをホームページ上に開設。 ・福岡県、任期満了に伴う福岡県知事選実施。現職の小川洋氏が3回目の当選。
・抗体保有率が低い男性を抗体検査と予防接種対象とする風しんの追加的対策開始。
・厚労省、医師偏在是正法の施行通知を発出。医療計画で定める内容に「医師確保計画」や「外来医療計画」を新たに規定、追加。
・旧優生保護法に基づいて不妊手術を受けた被害者を救済する「強制不妊救済法」が成立。
・「退位礼正殿の儀」が行われ、天皇陛下が御退位。約30年続いた「平成」の幕が閉じる。
・ゴールデンウィークが初の10連休。
・2024年に紙幣刷新が公表。新千円札に日医初代会長の北里柴三郎氏の肖像が採用。
・日米欧などの国際研究チームが世界で初めて
ブラックホールの影を撮影することに成功。
・パリの中心部にあるノートルダム寺院で大規模火災が発生。
・東京・池袋で自動車暴走死傷事故、2名死亡。


・日医の道永麻里常任理事が女性としてアジア初の世界医師会役員に就任。
・県医、災害時に被災地の要請に応じ、民間検診機関に所属する保健師や栄養士を派遣する協定を福岡県と締結。
・医療機関でのオンライン資格確認導入等を盛り込んだ医療保険関連法案が成立。
・世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を新たな依存症として認定。
・皇太子殿下が第126代天皇に御即位。「令和」に改元。
・トランプ米大統領、令和初の国賓として来日。
・2020年東京五輪のチケット抽選申込開始。
・川崎市で児童ら20人殺傷、容疑者自殺。


・日医、英国医師会の年次総会へ初出席。 ・警察庁、認知症か疑いによる行方不明の届出件数公表。2018年は前年比1,064人増の1万6,927人、過去最多更新。 ・G20が日本で初開催。大阪で地域首脳会議、福岡で財務大臣・中央銀行総裁会議が開催。
・ハンセン病元患者家族訴訟、国に損害賠償を命じる判決。
・中東ホルムズ海峡で日本タンカーに攻撃。
・香港で学生らが大規模デモを実施。
・福岡市早良区百道の交差点付近で多重事故。2名死亡。


・「第50回中四九地区医師会看護学校協議会」開催(広島市)
・「第50回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会」開催(佐賀市)
・市医、現市医会館の建設に尽力した故松田一夫第18代福岡市医師会会長の胸像を館内に設置。第28回会館記念日にて除幕式。
・市医、「大隅良典先生特別講演会」開催。参加者230名(ソラリア西鉄ホテル)
・福岡市医師連盟、参議院議員選挙に立候補した羽生田たかし先生の応援動画制作。
・第25回参議院議員通常選挙。自民党と公明党の政権与党が改選定数の過半数を得た。
・改正健康増進法により、学校や病院等での敷地内禁煙が開始。
・厚労省、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の初会合を開催。
・日本の商業捕鯨が31年ぶりに再開。
・大阪の仁徳陵などの古墳群が世界遺産に登録。
・京都アニメーションで放火事件が発生。36名死亡。
・かんぽ生命社長が不適切契約で謝罪。
・第161回直木賞受賞作、大島真寿美「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」。
第161回芥川賞受賞作、今村夏子「むらさきのスカートの女」。


・福岡市三師会、福岡市長へ要望書提出。 ・厚労省、「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」が報告書を取りまとめる。
・大阪大、iPS細胞から作成した目の細胞を患者に移植する世界初の臨床研究実施を公表。
・福岡市、見守りから安否確認までを一体化して実施する「ICTを活用した単身高齢者あんしん見守り」の実証事業を開始。
・九州北部で集中豪雨が発生。佐賀県の病院では周囲が冠水、数日間孤立状態。
・茨城県の常磐道で、あおり運転後に運転手を殴打した男が逮捕。
・政府、輸出手続きで優遇対象とする「ホワイト国」から韓国を除外決定。
・米国で電子たばこの関連が疑われる初の死者が発生。
・ゴルフ渋野日向子選手、全英オープン初優勝。


・日医、台風15号で被害が出た千葉県にJMAT派遣。
・日医、元国会議員の訪朝団に同行。医療支援目的の北朝鮮への幹部派遣は初。
・市医、「第8回地域包括ケア推進のための市民向け講演会」開催。参加者478名(アクロス福岡)
・安倍内閣、第4次改造内閣が発足。
・厚労省、「平成29年度国民医療費の概況」を公表。前年度比9,329億円増の43兆710億円。
・厚労省、全国の公立病院等で再編や統合を議論すべきとする全国424の病院を実名公表。
・総務省、「統計からみた我が国の高齢者」を公表。65歳以上の高齢者人口は前年比32万人増の3,588万人で過去最多を更新。
・政府の「全世代型社会保障検討会議」が初会合。
・台風15号が関東地方に上陸。千葉県を中心に住宅被害が7万棟を超える等甚大な被害。
・東京電力福島第1原発事故、東電旧経営陣に無罪判決。
・アジア初の「ラグビーワールドカップ2019」が日本で開催、日本8強入り。
10

・日医、「いい(11)医(1)療の日」ロゴマークを決定。
・日医のキャラクター「日医君」のオリジナルLINEスタンプを販売開始。
・「第56回九州首市医師会連絡協議会」開催(下関市)
・市医、「前厚労省健康局長宇都宮啓先生特別講演会」開催。参加者128名(本会講堂)
・消費税増税に伴う診療報酬改定。診療報酬改定率本体0.41%、薬価-0.51%。
・厚労省、大阪医科大の元講師が在職中に国へ必要な届出をせずに再生医療を行った疑いで同大に立ち入り検査実施。
・総務省消防庁、熱中症による救急搬送数(5〜9月)を公表。7万1,317人で昨年に続いて過去2番目の多さ。
・福岡市、国家戦略特区において都市部での遠隔服薬指導解禁。
・「即位礼正殿の儀」が執り行われる。
・消費税率が10%に変更。一部商品の税率を8%に据え置く「軽減税率制度」が初導入。
・ノーベル化学賞に吉野彰旭化成名誉フェロー選出。
・台風19号等の影響で東日本に集中豪雨発生。河川氾濫や洪水、土砂災害等の甚大な被害。犠牲者98名。
・沖縄県の首里城で火災発生。正殿など主要な建物が全焼。
・関西電力幹部が原発地元有力者から多額の金品を受領していた問題が発覚。
・福岡ソフトバンクホークスが3年連続日本一。
11

・日医、政府の「全世代型社会保障検討会議」にて受診時定額負担の導入に明確に反対。
・「第58回十四大都市医師会連絡協議会」開催(北九州市)
・「第119回九州医師会連合会総会・医学会」開催(佐賀市)
・市医、「第43回ふくおか市民糖尿病教室」開催。参加者240名(あいれふ)
・市医、中村哲会員(勤務医会)が「日医最高優功賞」受賞。
・福岡市医師連盟、羽生田たかし先生応援動画の功績により、日本医師連盟表彰を受賞。
・安倍首相の通算在職日数が歴代最長。
・厚労省、「2018年度介護給付費等実態統計」を公表。介護サービス等の年間実受給者数は前年度比1.1%減の597万3,500人。介護費用は初めて10兆円を超す。
・厚労省、「2018年人口動態統計」を公表。出生数が前年比2万7,746人減の91万8,400人で過去最少。
・厚労省の委託を受け久里浜医療センターが「ゲーム障害」に関する初の実態調査結果公表。
・「福岡市制施行130周年記念式典」開催。
・大学入試共通テストへの英語民間試験導入が見送り。
・東京五輪のマラソンと競歩の開催地を札幌市へ移すことが決定。
・東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場が完成。
・ローマ教皇が38年ぶりに来日。
・農林水産省、「豚コレラ」の名称を国際的に使用される「CSF」に変更。
12

・アフガニスタンで支援活動中の中村哲会員が武装集団に銃撃され死亡。享年73歳。
・福岡県保健・医療・福祉推進協議会、「国民医療を守るための福岡総決起大会」開催(福岡県医師会館)
・市医訪問看護ステーションの営業日時を拡大(毎日9〜17時)。
・令和2年度診療報酬改定率が本体0.55%増に決定、うち0.08%は働き方改革対応分。
・国立国際医療研究センター病院が薬剤耐性菌で2017年に年間8,000人が死亡したとする国内での初調査の結果を公表。
・東京大医科学研究所がエボラワクチンの臨床研究を国内で初実施。
・今年の漢字は「令」に決定。
・今年の新語・流行語大賞は「ONE TEAM」に決定。
・大学入試共通テストへの国語と数学の記述式問題導入が見送り。 

      ※ゴシック表記は福岡市医師会関係

医療情報室の目

 12月4日、本会会員でアフガニスタンで支援活動中であった「ペシャワール会」現地代表の中村哲先生が銃撃され逝去されるという衝撃のニュースが伝えられた。中村先生の功績が称えられ、今年11月には日本医師会から「日医最高優功賞」が贈呈されたばかりであったが、あまりに突然で痛ましい知らせに、我々医療関係者だけでなく日本中が悲しみに包まれている。中村先生ほどアフガニスタンの人々に貢献し、感謝された日本人はいないだろう。ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 さて、来る令和2年度は診療報酬改定の予定で、本体部分の改定率は前回同様0.55%引き上げられ、そのうち0.08%は働き方改革対応分を含むことが決定された。薬価部分は1.01%引き下げられ、診療報酬全体では0.46%の引き下げ(医療費全体としては約500億円の削減)となり、平成26年度改定から4回連続のマイナス改定となった。
 75歳以上の高齢者の自己負担割合の引き上げ(1割から2割)や、紹介状なしで大病院を受診した場合の増額や対象病院の拡大(400床以上から200床以上)が示される等、人生100年時代に向かって全世代型社会保障改革が必要との根拠に基づき、負担と給付の在り方の見直しが迫られる中、医師会として厳しい局面を迎えている。
 新元号の「令和」には「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」という意味が込められている。新たな時代の社会保障が互いに心を寄せ合い、支えあうことで充実した制度を築き、後世まで続く安心・安全な社会の実現のため、我々医療人は時代の変化に柔軟に対応しながらも国民のための医療提供体制を堅持していかなければならない。

編 集 福岡市医師会:担当理事 庄司 哲也(情報企画担当)・清松 由美(広報担当)・松浦  弘(地域医療担当) )
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡下さい。
(事務局担当 情報企画課 上杉)
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