医療情報室レポート
No.228

2018年12月21日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集:平成30年をふりかえって

 平成30年は、大阪北部地震や西日本豪雨災害、北海道胆振東部地震など全国各地で自然災害が相次ぎ、甚大な被害に見舞われた。災害は地域のライフラインに深刻な影響を与え、日々の診療継続が危ぶまれることなどから、医療現場においても迅速かつ応急的に診療ができる周到な準備が求められる。
 また、世界に目を向けると、史上初となる米朝首脳会談が開催され、朝鮮半島の緊張が緩んだかにみえたが、米中の貿易摩擦激化により経済の停滞が懸念されるなど、米国のトランプ大統領に世界が翻弄される一年となった。
 一方、国内における明るいニュースとしては、2月に開催された平昌冬季五輪で、日本は冬季五輪最多となる計13個のメダルを獲得したほか、ノーベル生理学・医学賞を本庶佑京都大特別教授が受賞するなど未来への希望が持てるような話題もあった。
 今回は、毎年恒例の特集である今年一年の出来事をまとめ、“平成30年をふりかえって”みた。

●平成30年の主な出来事

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス


・日医会員数17万199人(2017.12.1付)、前年比3,170人増、過去最高を更新。
・日医、「情報通信機器を用いた診療に関する検討委員会(プロジェクト)」を設置。
・日医の新イメージキャラクターが応募作品から「日医君(にちいくん)」に決定。
・帝国データバンクが倒産動向調査結果を公表。2017年の医療機関の倒産件数は25件。 前年比9件減。
・第158回直木賞受賞作、門井慶喜「銀河鉄道の父」。第158回芥川賞受賞作、石井遊佳「百年泥」と若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」。
・関東甲信で大雪発生。都心では4年ぶりと なる積雪20センチ超。
 2

・日医、「第6回赤ひげ大賞」表彰式開催。
・市医、「第10回福岡市救急医療市民公 開講 座(目からウロコの救急医療)開催。 参加者221名(電気ビルみらいホール)
・厚労省、社会保障給付など厚生労働行政の業務効率化等を検討するICT利活用推進本部の初会合を開催。
・情報通信機器を用いた診療に関する検討会の初会合開催。情報通信機器を用いた診療を「オンライン診療」という名称に定義。
・平昌冬季五輪にて、日本は冬季五輪最多となる計13個のメダルを獲得。
・将棋の羽生善治竜王、囲碁の井山裕太棋聖 に国民栄誉賞授与。
・米フロリダ州で高校銃乱射事件発生。生徒ら
17人が犠牲に。


・元日医会長植松治雄氏死去。享年86歳。
・市医、「第7回慢性腎臓病(CKD)市民 公開講座」開催。参加者443名(天神スカ イホール)
・市医、福岡市医師会成人病センターを学校法人福岡大学へ事業譲渡。
・第112回医師国家試験合格者数は9,024人、 合格率は前回から1.4ポイント増の90.1%。
・2017年の全国の救急出動状況、前年比約13万件増の634万2,096件となり、8年連続過去最多更新。
・2017年の全国の自殺者数は2万1,321人(前年比576人減)となり、8年連続減少。
・平昌パラリンピックにて日本勢は金3個を含む、計10個のメダルを獲得。
・森友学園をめぐる財務省決裁文書改ざんが発覚。


・世界医師会が世界保健機関と協力関係を 強固とするための覚書に調印。
・市医、大木實会員(早良区)、「瑞宝双光章」 受賞。
・市医、坂本雅子会員(勤務医会)「瑞宝小綬章」 受賞。
・診療報酬・介護報酬同時改定。
診療報酬改定率本体0.55%、薬価-1.74%、
全体で-1.19%。介護報酬改定率0.54%。
・医療の必要な要介護高齢者の長期療養・生活施設を新たに「介護医療院」として創設。
・愛媛県松山刑務所より、服役中の男性が脱走。 同月、広島県にて逃走中の男性を逮捕。


・東京都医師会の尾ア治夫会長ら都の四師会、小池東京都知事に対し「都受動喫煙防止 条例」(仮称)の制定を求める署名 19万6,458人分を提出。
・市医、「オンライン診療の適切な実施に関 する指針」に関する説明会開催。
・厚労省、人口動態推計(2017)を公表。
出生数94万6060人(前年比3万918人)とな り11年連続で減少。
・沖縄や愛知を中心に麻しん流行。患者数 150人を超える。
・日本大学アメフト部危険なタックル問題で内田 前監督、井上前コーチが除名処分に。
・将棋の藤井聡太が史上最年少で六段から七段 に昇段。

・日医、任期満了に伴う会長・副会長選挙を 実施。会長は、現職の横倉義武氏が4期目の当選。副会長は、今村聡氏、中川俊男氏、 松原謙二氏の現職3人が再選。市医、平川俊夫会員(東区)、常任理事に当選。
・市医、第14回定例代議員会開催。
長柄均会長による執行部、2期目を迎える。
・働き方改革関連法案が成立。
・警視庁が認知症又はその疑いによる行方不明の届け出数を公表。2017年は1万5,863人、 5年連続で1万人を超え、過去最多を更新。
・世界保健機関(WHO)、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)を公表。
・国家戦略特区での遠隔服薬指導実施。
・大阪府北部にて震度6弱の地震が発生。
犠牲者4名。
・初の米朝首脳会談開催。
・「潜伏キリシタン関連遺産」世界遺産に。


・日医、「第1回外国人医療対策会議」(都道府県医師会・外国人医療対策担当理事 連絡協議会)を開催。
・市医、「運転免許を有する認知症高齢者への対応に関する研修会」開催。
・ギャンブル等依存症対策基本法案が成立。
・厚労省、医療における控除対象外消費税の補填率計算ミスを公表。診療報酬の補 填において、大幅な不足があることが明 らかに。
・福岡市、35歳及び40歳の市民を対象に胃がんリスク検査(ピロリ菌検査)を開始。
・麻しん流行終息宣言 (沖縄6月11日、福岡7月4日、愛知7月9日)。
・西日本豪雨が発生。犠牲者220人以上、平成最悪の気象災害となる。
・オウム松本死刑囚ら元幹部の死刑執行。
・タイにて、洞窟で遭難した少年ら13名救出。
・第159回直木賞受賞作、島本理生「ファース トラヴ」。第159回芥川賞受賞作、高橋弘希 「送り火」。
・フィギュアスケート男子、羽生結弦選手、国民栄誉賞を歴代最年少で受賞。
・サッカーW杯、フランス20年ぶりの制覇。


・日医、「受動喫煙防止対策に関する動画」を
作成。渋谷のスクランブル交差点の大型 ビジョンで放映。
・「第49回中四九地区医師会看護学校協議会」開催(島原市)。
・厚労省、「平成29年度介護給付費実態調査結果」を公表。介護サービスの年間累計受給者数は60,424.1 千人で前年度比-3.0%。
・東京医科大学医学部をはじめとする、私大医学部での不正入試の発覚。
・群馬県で防災ヘリ墜落、9人死亡。
・中央省庁による障害者の雇用水増し問題が発覚。28の行政機関で計3,700人を不正に計上。


・日医、日本医学会と共同で英文の総合学術誌「JMAJOURNAL(ジャーナル)」 を創刊。
・市医、「第7回地域包括ケア推進のための市民向け講演会」開催。参加者360名(アクロス福岡)
・「第49回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会」開催(鹿児島市)。
・総務省が「統計からみた我が国の高齢者」を 公表。65歳以上の高齢者推定人口3,557万人となり前年から44万人増。
・厚労省、「平成28年度国民医療費の概況」 を公表。42兆1,381億円で前年度比2,263億円の減。
・風しんの流行。全国の患者数600人超に。
・自民党総裁選、安倍首相、3選。
・大型台風21号が四国、近畿を縦断。関西空港、 冠水し孤立。犠牲者11名。
・北海道で震度7の地震が発生。道内全域で停電。犠牲者41名。
・テニス、大坂なおみ選手、日本勢初の全米OP優勝。
・第1回公認心理師国家資格試験実施。
10

・日医、第1回外国人医療対策委員会を開催。
・日医、新たに「JMAT(日医災害医療 チーム)研修」を開始。
・横倉義武日医会長が第68代世界医師会長の任期満了を迎え退任。
・「第57回十四大都市医師会連絡協議会」 開催(仙台市)。
・総務省消防庁、熱中症による救急搬送数2018年4月30日〜9月30日)を公表。9万5,137人で過去最多を更新。死者数は、160人で過去2番目となった。
・厚労省、日本アレルギー学会と共同で、 国として初めてのアレルギー情報サイト 「アレルギーポータル」を開設。
・ノーベル生理学・医学賞に本庶佑京都大特別教授が選出。
・東京豊洲市場が開場。
・市制施行により、福岡県那珂川市が誕生。
・2015年にシリアで反政府武装勢力に拘束さ れていた、フリージャーナリスト安田純平氏、解放。
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・市医、「第42回ふくおか市民糖尿病教室」 開催。参加者279名(あいれふ)
・「第118回九州医師会連合会総会・医学会」開催(城山ホテル鹿児島)。
・宮ア良春元市医会長、「日医最高優功賞」 受賞。
・市医、大内伸夫会員(西区)「瑞宝双光章」受賞。
・厚労省、人生の最終段階における医療ケアについて話し合う取り組みである「アドバンスケアプランニング(ACP)」の愛称を「人生会議」に決定。
・福岡市、任期満了に伴う福岡市長選挙実施。 現職の高島宗一郎氏が3回目の当選。
・SMBC日本シリーズ、福岡ソフトバンクホークス が2年連続日本一に。
・日産ゴーン会長、金融商品取引法違反容疑で逮捕。
・新天皇即位に伴い、2019年ゴールデンウィークを最大10連休とする法案が閣議決定。
・福岡市中央区地行浜に大型商業施設 「MARKIS福岡ももち」が開業。
12

・日医・東京都医、小池東京都知事に、2020年 東京五輪・パラリンピックにおける熱中症対策強化要望書を提出。 ・厚労省、風しん対策として、特に抗体保 有率が低い、39〜56歳の男性にワクチン接種を原則無料とする方針を決定。
・改正出入国管理法成立。
・今年の新語・流行語大賞は「そだねー」に決定。
・今年の漢字は「災」に決定。
・ソフトバンク携帯電話の通信障害発生。
最大約3,060万件の影響。
・華為技術(ファーウェイ)、中興通訊(ZTE) の製品を政府調達から排除。

医療情報室の目

   平成30年の世相を表す漢字は「災」。これは、西日本豪雨や北海道地震、記録的な猛暑などの自然災害が発生し、多くの被害をもたらしたことや、スポーツ界におけるパワハラ問題、財務省の決裁文書改ざん、大学の不正入試問題といった「人災」があったことなどが選定の理由とされている。
 さて、来年は新天皇が即位し新たな時代を迎えることになるが、来年5月1日の即位日が祝日となりゴールデンウィークは最大10連休となるため、一部では社会・経済への影響を不安視する声が上がっている。これは、医療現場においても例外ではなく、連休前後の医療機関への患者集中や、休暇期間中の手術・処置対応などへの様々な問題が懸念されており、新時代の幕開け早々、医療現場に混乱が生じる可能性がある。さらに長期的な視点に立つと、働き方改革の推進や新たな外国人労働者の受け入れ拡大など、来年以降、医療や介護の現場が大きく変わることも想定される。
 しかし、いずれにしても、医療現場に何らかの問題が生じた場合に直接の不利益を被るのは患者である。私たち医療者はそのことを常々肝に銘じ、患者に「災」をもたらすことがないよう、国の施策や動向を注視し、地域の医療ニーズに応えていく必要があるだろう。

編 集 福岡市医師会:担当理事 庄司 哲也(情報企画担当)・清松 由美(広報担当)・松浦  弘(地域医療担当) )
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡下さい。
(事務局担当 情報企画課 石橋)
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