医療情報室レポート
 

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2012年12月21日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1505・FAX852-1510 

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特集:平成24年をふりかえって

 平成24年は、昨年の東日本大震災からの復興も踏まえ、日本再建への足掛かりとなることが期待された年であった。しかし、一向に回復の兆しが見えない経済・雇用情勢に加え、領土問題を巡る近隣諸国との外交摩擦が生じるなど、日本の国内外における情勢は厳しさを増し、逆に深い闇の中へと突き進んでいるように感じられる。
 一方、医療に目を向けると、4月に実施された診療報酬・介護報酬同時改定において診療報酬が2回連続のプラス改定となったほか、10月には京都大学の山中伸弥教授が日本人として25年ぶりのノーベル生理学・医学賞を受賞するなど医療関係者にとって喜ばしい話題があった。また、医師会の動きとしては、4月、日本医師会長に福岡県の横倉義武会長が就任したほか、私たち福岡市医師会も公益法人制度改革の流れを受けて一般社団法人への移行を果たすなど、大きな転換期ともいえる年であった。
 ところで、衆議院解散を受けた総選挙が今月16日に行われ、自民党が3年3ヵ月ぶりに政権与党に返り咲くことが確定した。いよいよ新政権による舵取りが始まるといえるが、混迷しきった政治をどこまで変えることができるのだろうか。
 今回は、毎年恒例の特集である今年一年の出来事をまとめ、“平成24年をふりかえって”みた。


●平成24年の主な出来事

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
1月
日医会員数16万5,745人(2011.12.1付)、前年比96人減で2年連続の減少
市医、次期役員等選挙を実施
2011年の医療機関の倒産件数は32件。2年連続で減少となる
厚労省、2011年人口動態推計の年間推計を公表、出生数105万7,000人で前年比1万4,000人減
野田第1次改造内閣が発足。5人の閣僚が入れ替わる
オウム真理教事件の平田信容疑者が逮捕される
霧島連山の新燃岳が189年ぶりに噴火
台湾、総統選挙が実施され、現職の馬英九総統が再選
2月
日医会長選告示。現職の原中勝征氏、副会長の横倉義武氏、京都府医師会長の森洋一氏の3名が立候補を表明
復興庁が発足
政府、マイナンバー法案を閣議決定
政府、社会保障・税一体改革大綱を閣議決定
天皇陛下、冠動脈バイパス手術を受けられ無事成功
東京スカイツリーが竣工
AIJ投資顧問が企業年金資金約1,500億円の大半を消失
全米シングルチャート7作連続1位の記録を持つ歌手のホイットニー・ヒューストン(米)が急逝
3月
日医、「災害医療と医師会」をテーマに医療政策シンポジウムを開催
市医、「CKD福岡市民公開講座」を初開催
市医、「医療・介護保険診療支援講演会」を初開催
第106回医師国家試験合格者発表、合格者7,688人、合格率は前回から0.9ポイント増の90.2%
2011年の全国の自殺者数が30,651人に。14年連続で3万人を超える
ロシア、大統領選挙が実施され、ウラジーミル・プーチン首相が再び大統領に就任
米韓FTAが発効
4月
市医、1日付で「一般社団法人」へ移行
市医、成人病センターに壁村哲平院長が就任
市医、江頭会長が看護学校長に、福田量前学校長が名誉学校長にそれぞれ就任
日医役員選挙、次期会長に福岡県の横倉義武会員を選出。九州からは2人目の日医会長の誕生となる
市医、福岡市より委託を受け「島しょ診療所事業」を開始
国民医療推進協議会、「TPP参加反対総決起大会」開催
6年ぶりとなる診療報酬・介護報酬の同時改定。診療報酬の改定率は全体(ネット)で0.004%の引き上げ
熊本市(人口約73万人)が全国20番目、九州では3番目の政令指定都市に移行
インドネシア・スマトラ島でマグニチュード8.6の地震が発生
アメリカで6年ぶりとなる乳牛のBSE感染を確認
北朝鮮、事実上の長距離弾道ミサイルを発射
関越自動車道で高速バス居眠り運転事故が発生し、7人が死亡
5月
日医、多様な考え方や価値観、情報に触れることにより、これからの医療の担い手である医学生に必要な広い視野をもってもらうことを目的として、医学生向け情報誌「ドクタラーゼ」を創刊
市医、「医療・介護保険診療支援実務者講演会」を初開催
新型インフルエンザ等対策特別措置法が公布
総務省、本年4月1日現在の人口推計を公表。15歳未満の子どもの数は前年比12万人減の1,665万人で31年連続の減少
北海道泊発電所の定期検査に伴う運転停止により国内全ての原発が稼働停止
フランス、大統領選挙が実施され、フランソワ・オランド氏が初当選
沖縄、本土復帰40周年
日本、太平洋側の広い範囲で金環食観測
東京スカイツリーが開業。開業72日目で来場者数100万人を達成
6月
市医、法人移行後初となる第1回定例代議員会を開催、江頭啓介会長を始めとする福岡市医師会新執行部が発足
日医、東日本大震災を含めた災害対策を柱とする2013年度予算の概算要求に向けた要望を公表
厚労省、2年に1回実施される柔道整復療養費及びあん摩マッサージ指圧・はり・きゅう療養費の改定を延期。年度内の療養費改正に向け、療養費適正化の検討に入る
野田第2次改造内閣が発足。5人の閣僚が入れ替わる
カナダ、メキシコのTPP交渉参加が認められ、交渉参加国は11ヵ国となる
オウム真理教事件の菊地直子容疑者および高橋克也容疑者が逮捕される。これで一連の事件の特別手配犯は全員逮捕となった
三笠宮寛仁親王殿下ご薨去

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
7月
「第44回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会」開催(宮崎市)
「第51回十四大都市医師会連絡協議会」開催(札幌市)
日医、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との連携により超高速インターネット衛生「きずな」を利用したテレビ会議を実施。今後、災害時における医療現場の通信手段の確保・環境整備を図る
平成21年度平均寿命男性79.44年、女性85.90年。女性は27年ぶりに長寿世界一の座を香港に明け渡す
厚労省、第2次「健康日本21」基本方針を告示
食品衛生法に基づき、生食用牛レバーの販売が禁止される
ロシアのメドベージェフ首相が国後島を訪問
上野動物園のパンダが出産するも生まれた子どもは6日後に死亡
九州北部で記録的な豪雨(平成24年7月九州北部豪雨)。死者30人、行方不明者2人
2012年上半期の日本の貿易赤字が過去最大の2兆9,158億円を記録
夏季オリンピックがロンドンにて開幕。日本は史上最多となる38個のメダルを獲得
福岡都市高速道路環状線が開通
8月
「第43回中・四・九地区医師会看護学校協議会」開催(鹿児島市)
日医、おたふくかぜと水痘を含む7ワクチン(HPV、Hib、小児用肺炎球菌、成人用肺炎球菌、おたふくかぜ、水痘、B型肝炎)全てを定期接種化することを要望
社会保障と税の一体改革関連法案が成立
厚労省、2011年度医療費動向調査の結果を公表。前年度から1.1兆円増の37.8兆円で過去最高となった
韓国の李明博大統領が竹島に上陸
尖閣諸島の魚釣島に香港の活動家が上陸
北海道で白菜の浅漬けによるO157の集団食中毒が発生し、7人が死亡
9月
市医、「第5回福岡市救急医療市民公開シンポジウム」開催
日医、防災功労者内閣総理大臣表彰受賞
罰則付きとしては全国初となる「福岡県飲酒運転撲滅運動の推進に関する条例」が全面施行
不活化ポリオワクチンが定期予防接種に導入される
2011年の死因別死亡数で「肺炎」が「脳血管疾患」を抜いて第3位に。第1位は「悪性新生物」、第2位は「心疾患」で3大要因が入れ替わったのは53年ぶり
日本政府、尖閣諸島を20億5,000万円で購入し国有化。中国全土で大規模な反日デモが起こる
10月
「第49回九州首市医師会連絡協議会」開催(那覇市)
市医、「ニコニコペース健康教室30周年記念行事」開催
市医、「地域包括ケア推進のための市民向け講演会」を初開催
日医、臨時代議員会において、公益法人制度改革に伴い「公益社団法人」へ移行することを決定
野田第3次改造内閣が発足。10人の閣僚が入れ替わる
東京駅・丸の内駅舎の復元工事が竣工
iPS細胞を作成した京都大・山中伸弥教授のノーベル生理学・医学賞の受賞が決定
2012年ミスインターナショナル世界大会で吉松育美さんが日本人初のグランプリ受賞
レスリング女子世界大会と五輪合わせて史上最多となる13大会連続優勝を達成した吉田沙保里選手が国民栄誉賞を受賞
11月
市医竹嶋康弘会員(西区)、日医最高優功賞受賞
衆議院解散
総務省消防庁が2011年の救急出動状況を公表、出動件数570万7,655件、搬送人員は518万2,729人となり共に過去最高を記録
3種混合に不活化ポリオワクチンを加えた4種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ)が定期予防接種としてスタート
アメリカ合衆国大統領選挙において、バラク・オバマ氏が再選
数世帯の家族が殺害された「尼崎事件」が発覚。主犯とみられる女性は12月に留置所内で自殺
中国、習近平氏が総書記に選出される
女優で国民栄誉賞受賞の森光子さん死去
12月
市医、4番目の連携パスとなる「慢性腎臓病(CKD)地域連携パス」の運用開始
2007年参議院選挙で日医連が推薦した武見敬三氏が繰り上げ当選。任期は来年夏予定の参議院選挙まで
第46回衆議院議員総選挙で日医連推薦候補者は約9割にあたる223人が当選。市医連推薦候補者3名も全員当選を果たす
第46回衆議院議員総選挙実施。自民党が3年3ヵ月ぶりに政権を奪還
厚労省、2011年版「国民健康・栄養調査」の結果を公表。喫煙者の割合は20.1%で前年比0.6ポイント増となる
福岡市、平成26年の完成に向けて新こども病院の建設に着工
歌舞伎俳優の中村勘三郎さん死去
フィリピン、台風24号の直撃により死者1,000人超の被害
山梨県の中央自動車道笹子トンネルで天井崩落事故が発生し、9人が死亡
アメリカ、小学校で銃乱射事件。児童20人を含む26人が死亡
北朝鮮、事実上の長距離弾道ミサイルを発射
ダイヤス食品広島支社の給食弁当で1,000人超の集団食中毒発生
韓国、大統領選挙が実施され、朴槿恵候補が当選。韓国初の女性大統領誕生へ


<医療情報室の目>
 今年一年も、経済や外交情勢の悪化とともに、政局の混迷に国全体が翻弄された一年だったが、11月の電撃的な衆議院解散を受けて実施された衆議院総選挙では、自民党が圧倒的な勝利を収め約3年ぶりに政権に返り咲いた。今月26日に発足する安倍新政権には民主党から引き継ぐ政治的課題が山積しているが、今後の社会保障、医療政策の在り方にはどう向き合っていくのだろうか。これまで「公助」を前面に打ち出してきた民主党に対し、自民党は社会保障政策に関し「自助・自立」の必要性を訴えている。しかし、こと社会保障に関しては、そのあるべき姿の実現と安定的財源の確保に向けて、過日、自公民3党の合意により“社会保障と税の一体改革”が成立したばかりである。社会保障費が増え続ける中、給付抑制等の議論も必要ではあろうが、新政権には、有識者らで構成される「社会保障制度改革国民会議」などの議論も踏まえ、長期的視点に立った社会保障政策の道筋を定めてもらいたい。
 来年の干支は「巳」である。医師会のシンボルマークにも使われている蛇は医療・再生・知恵の象徴であり、日本では富の象徴とも考えられている。来年が日本の景気回復、社会保障の更なる充実への始まりの年となることを願うばかりである。

 ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡下さい。
   (事務局担当 情報企画課 下田)

  

担当理事 今任 信彦(情報企画担当)・松尾 圭三(広報担当)・寺坂 禮治(地域医療、地域ケア担当)


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