医療情報室レポート
 

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2007年12月21日  
福岡市医師会医療情報室  
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特集:平成19年をふりかえって

 平成19年は、7月に、医療では医師確保対策などが争点とされた第21回参院選が行われ、 「消えた年金問題」の逆風を受けた自民党が歴史的惨敗を喫した。9月には安倍総理が突然の辞任を表明し、後継の福田康夫新内閣が誕生するなど 政界は慌ただしい動きが続いた。また、資金管理団体の事務所費など「政治とカネ」の問題や、官僚の収賄事件など政官界のスキャンダルが世情をに ぎわした。
 国民の生活に直結する出来事としては、日本郵政公社の民営化、住民税の引き上げ、バイオ燃料の需要増による穀物・関連日用品の価格高騰、世界的 原油高などがあげられる。
医療界においては、政府は5年間で1.1兆円の社会保障費を削減する歳出改革を緩めない姿勢を示した。来春の診療報酬改定を控え、日医は厚労省 に診療報酬本体の5.7%、医療費ベースで1兆4,500億円の引き上げを要求していたが、政府は本体部分で0.38%のプラスとしながらも、全体で0.82% のマイナス改定と決定した。医療関係者にとって来年もまた厳しい状況が続く。
 今回は、年末恒例の特集として今年1年間の出来事をまとめ “平成19年をふりかえって”みた。
  

●平成19年の主な出来事

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
1月
日医会員数16万4000人(2006.12.1付)、 対前年比0.8%の微増
日医、「日本医師会女性医師バンク」スター ト、福岡県医師会が西日本センター窓口へ
市医、「特定健診・保健指導検討プロジェクト」設置
厚労省、へき地医療対策に42億7,700万円計上
厚労省、2006年人口動態推計の年間推計公表、出生数(108万6,000人)6年ぶりに増加
柳澤厚労相、「産む機械」発言で通常国会波乱の幕開け
中医協、入院基本料の7対1看護の基準見直 しを求める建議書を厚労省へ提出
中国、上海−南京・浙江省杭州市間を結ぶ中国高速鉄道が運行開始
ヒラリー・クリントンアメリカ合衆国上院議員、2008年のアメリカ合衆国大統領選挙への出馬を表明
安倍晋三総理大臣、日中韓首脳会談に出席北朝鮮の核兵器放棄を求める共同声明を発表
2月
日医、医療提供体制の国際比較の検証結果を公表
市医、100周年記念モニュメント除幕式
市医、創立100周年記念式典、記念講演、祝賀会
厚労省、「情報化グランドデザイン案」公表、平成23年からレセプトデータを分析、公表へ
厚労省、平成20年度から実施される特定健診・保健指導で標準プログラム確定版決定
中医協、次期診療報酬改定に向け医療技術評価体制・方法決定
イラク、バグダードでイラク戦争後最大規模の 自爆テロ発生、130人以上が死亡
NASA、国際宇宙ステーションの長期滞在搭乗員に、日本人宇宙飛行士の若田光一氏を選出
日米両政府、日米共同訓練を航空自衛隊築城基地で行うことに合意
3月
日医、医師確保対策として卒後臨床研修修了後の一定期間にへき地勤務の義務化を提言
日医、「医療安全管理指針のモデル」改訂
厚労省、「医療広告ガイドライン案」公表
厚労省、タミフルの10代への使用を原則差し控えるよう警告
柳澤厚労相、「健康ITカード」導入を表明
中医協、「支払い側7人・診療側7人・公益6人」体制で再スタート
第101回医師国家試験合格者発表、合格者7,535人、合格率87.9%、うち女性の割合33.4%
インドネシア、スマトラ島中部でマグニチュード 6.3の地震
インターネット検索大手Google、携帯電話専 用検索エンジン提供開始
安倍首相、日本が初めてアメリカ以外と安全保障の協力関係を結ぶ「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名
能登半島地震発生、地震の影響で柏崎刈羽原発の安全性が問題に
4月
日医、「グランドデザイン2007・総論」公表
日医、「総合医」の養成に関する一部の新聞報道を明確に否定
市医、「看護学校改革プロジェクト」設置
厚労省、平成20年度からスタートする医療費適正化計画の参酌標準を提示
厚労省、行政処分情報を含む医師の資格確認検索システム開設
社会保険庁、政管健保の平成19〜23年収支見通しを公表、累積赤字は最大で8,100億円
改正医療法施行
400床以上の病院を対象にレセプトオンライン請求開始
ソロモン諸島付近で、マグニチュード8.0の地震
アメリカ、バージニア州のバージニア工科大学構内で、32人死亡、15人負傷とアメリカ合衆国史上最悪となる銃乱射事件
JR長崎駅前で、伊藤長崎市長が銃で撃たれ死亡、暴力団幹部を現行犯逮捕
統一地方選挙実施
北海道夕張市の財政再建計画がスタート
5月
第176回世界医師会(WMA)中間理事会開催、岩砂日医副会長が理事会副議長に再任
日医、執行部の医療政策活動をスピーディに支援することを目的に「総合医療政策課」新設
厚労省、従来の医療費適正化策を示す「医療効率化プログラム」提示
厚労省、許可制標榜科として「総合科」を新設する方針を発表、日医は反対表明
自民党、医師不足対策を検討する「緊急対策特命委員会」設置
フランス、大統領選挙でニコラ・サルコジ国民運動連合党首が初当選
熊本市慈恵病院「こうのとりのゆりかご」の運用開始
松岡農水相、資金管理団体の光熱水費や事務 所費の不透明な支出など「政治とカネ」をめぐる問題で自殺
6月
日医、「経済財政改革の基本方針2007」に対する見解を表明
日医、医師会立病院の診療費未収金が平成17年度で平均1,939万円に上ることを公表
「骨太方針2007」閣議決定、次年度予算最大限歳出削減へ
ドクターヘリによる救急医療を全国的に整備 することを目的とするドクターヘリ特措法成立
2006年人口動態推計で出生率1.32、昨年度より上昇
イギリス、グラスゴー国際空港で自動車が空港ビルに突っ込むテロ発生
「消えた年金記録」問題発覚
コムスン、全事業所指定打ち切りへ
国から地方への税源移譲のため、住民税引き上げ
ミートホープ社、牛肉ミンチの品質表示偽装発覚

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
7月
第21回参院選自民惨敗、日医連推薦武見敬三氏落選
日医、今後の社会保障費のあり方に関する見解を公表
日医、「看護職員の需給に関する調査─2007年5月調査─」の結果を公表
日医、平成20年度税制改正要望事項を公表
日医主催「第3回男女共同参画フォーラム」開催(横浜市)
「第39回九州地区医師会共同利用施設連絡 協議会」開催(長崎市)
第21回参院選公示、医療では医師確保対策など争点
平成18年平均寿命男性79.00歳、女性85.81歳で前年度より上回る
サブプライム問題の影響により世界中で株価の急落や株式市場が混乱
第119回IOC総会で、2014年冬季オリンピック開催都市がソチ(ロシア)に決定
中国、段ボール肉まん騒動、後にやらせ報道と判明
久間防衛大臣、原爆投下をめぐる発言の責任をとり辞任、後任に小池百合子氏が就任
8月
日医、「グランドデザイン2007・各論」公表
日医、「終末期医療に関するガイドライン」の中間答申を取りまとめる
日医、私立病院における地球温暖化防止に向けた計画策定委員会を設置
日医、がん対策推進基本計画の閣議決定を受け「がん対策推進委員会」設置
「第38回中・四・九地区医師会看護学校協議会」開催(北九州市)
安倍改造内閣発足、新厚労相に舛添要一氏就任
政府、社会保障について2,200億円の抑制を行うとする「平成20年度予算の全体像」を取りまとめる
厚労省、平成20年度予算概算要求、前年度予算より6,835億円増の総額22兆1,604億円
厚労省、文科省、総務省「緊急医師確保対策に関する取り組み」で全国で医学部定員285人増を決定
平成19年人事院勧告行政職で月額1,352円のプラス改定、医師は2,500円増
厚労省、「2005年度国民医療費の概況」公表、国民医療費33.1兆円で前年比3.2%増
ペルー沖でマグニチュード7.9の地震、死者330人以上
タイ、バンコクでユニバーシアード開幕
バリー・ボンズがハンク・アーロンのメジャー通算本塁打記録の755本に並ぶ
大阪で第11回IAAF世界陸上選手権開催
9月
日医、テレビCMがACCゴールドを受賞
市医、中村裕一会員、第59回保健文化賞受賞
市医、映画「シッコ」割引鑑賞券販売斡旋
市医、「入会金等検討プロジェクト」設置
「第44回九州首市医師会連絡協議会」開催(福岡市)
福田康夫新内閣発足、舛添厚生労働大臣が再任
政府、C型肝炎インターフェロン治療に公費助成、高齢者負担増の凍結、後期高齢者医療制度保険料徴収一部凍結を決定
厚労省、平成19年度からの実施を目指し、標榜出来る診療科名拡大を発表
スマトラ島南部沖でマグニチュード7.9の地震
日本の月探査衛星「かぐや」、打ち上げに成功
石屋製菓、「白い恋人」の賞味期限改ざん発覚
10月
日医、厚労省の後発医薬品使用促進の提案に反対表明
日医、厚労省へ次期診療報酬改定で医科5.7%の引き上げを要望
日医、4月の医療法改正への対応を目的とした「医療安全対策マニュアル」作成
「第46回十四大都市医師会連絡協議会」開催(神戸市)
厚労省、「後発医薬品の使用促進アクションプログラム」公表
厚労省、「医療経済実態調査報告」公表、病院を中心に経営状態の悪化が浮き彫りに
舛添厚労相、フィブリノゲン投与追跡調査、患者告知で日医に協力要請
南北首脳会談が、7年ぶりに北朝鮮平壌で開催
パキスタン、ブット元首相を狙った爆弾テロ、136人が死亡
国際サッカー連盟、2014年FIFAワールドカップ開催国をブラジルに決定
郵政民営化、日本郵政公社が「日本郵便」に
「赤福餅」、製造年月日の偽装表示発覚
11月
日医、平成18年度生涯教育制度申告書の集計結果を公表
市医、多田秀敏元会長、日医最高優功賞受賞
杏花会80周年記念式典、記念講演会
中医協、次期診療報酬改定率の議論始まる
財務省財政制度等審議会、次期診療報酬改定をマイナス改定で合意、日医は不適当と主張
東京地裁、混合診療認める異例の判決、国は提訴の方針
パキスタン、ムシャラフ大統領が非常事態宣言、全土に戒厳令が布かれる
プロ野球の日本選手権シリーズで中日ドラゴンズが北海道日本ハムファイターズを破り53年ぶり2回目の日本一に
吉兆、消費期限、賞味期限切れの菓子、惣菜の販売、料理でも牛肉産地偽装が発覚
防衛装備品納入をめぐる収賄の疑いで守屋前防衛事務次官と妻を逮捕
12月
日医、「国民医療を守る決起大会」に日本歯科医師会、日本看護協会など医療関係団体とともに参加し、 充実した医療提供体制の確保に向けた決意を表明
日医、新しいテレビCMを放映
市医、役員一次選挙告示
市医、福岡市国保特定健診・特定保健指導 実施登録医療機関募集
厚労省、宙に浮く年金記録の約5,000万件中、945万件の特定が困難との調査結果を公表
政府、「2008年度予算編成の基本方針」を閣議決定、医療について勤務医対策、地域医療の確保、効率化によるコスト削減努力を掲げる
韓国大統領選挙、前ソウル市長李明博氏が 当選、10年ぶり保守政権誕生
原油価格の高騰に伴い、食パンや洋菓子、ガソリンなど、暮らしに身近な商品の値上げが相次ぐ
日本漢字能力検定協会が募集する「今年の漢字」が「偽」に決定
インフルエンザが観測史上最速でシーズン入り

<医療情報室の目>
 過去最高益を更新する企業や久しぶりの賃上げを 実施した企業も多く、景気が回復しそして加速したと言われながらも、国民一人一人としては豊かさを実感できなかった今年の日本経済。 それは、中央と地方の経済格差をさらに拡大させ、「加速しすぎた経済至上主義」の風潮が、粉飾決算などに見られる企業の不祥事や、 品質事故・品質偽装など倫理観の欠如を招く結果をもたらした。
 社会保障面では、2007年の「厚生労働白書」で、病床数の抑制や患者負担の引き上げといった従来の医療費抑制策は、もはや限界に来たとの認識が示され、 今後は生活習慣病対策などの予防重視に政策を転換するとしているが、国民医療費の増加を悪とし、「適正化」の名の下に医療費を抑制するという 政府の基本方針に変化は見られない。日本の国民医療費は、経済規模に比べて決してハイレベルではなく、むしろ低い水準に抑えられていることを 政府は国民に明らかにすべきだ。そして国民の健康と命に直結する医療費削減という誤った政策を正し、国庫負担増により国として応分の責任を 果たすとともに、様々な税浪費の実情にメスを入れて財政の健全化を実現すべきではないか。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 工藤 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 原  祐 一(広報担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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