医療情報室レポート
 

bP14  
 

2007年11月30日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特 集 : 大都市における医療情勢と広報

 
いま医師会に求められているものは、政府が進める医療費抑制政策がもたらした地域医療崩壊と医療現場の混乱を阻止する防波堤となり、国民の健康を守る専門職能集団としての英知の結集である。日々変化する医療情勢の中で、高い公益性を堅持しながら「自助」、「公助」、「互助」の国民的コンセンサスを形成していく努力を怠ってはならない。

 10月20日に神戸市で十四大都市医師会連絡協議会が開催された。第1日目の分科会の1つである第3分科会では「医師会のイメージアップ戦略」に繋がる具体的手法や、予てよりこの連絡協議会で懸案事項となっていた広報のあり方について問題点を再検討し、時代に即した新たな方向性を探る各都市の取り組みが紹介された。
 医師会の広報活動は、医療情勢のめまぐるしい変遷の中で、対内・対外ともに新しい見地からの取り組みが求められている。今回は、第3分科会のテーマの「広報活動の新しい取り組み」にスポットを当て、各医師会の広報活動への取り組みと、十四大都市における医療の現状などをまとめた。
  

●広報活動の取り組み
   各医師会の主な対内・対外広報活動の現状や手段、医師会のイメージアップ戦略とは?
  対内広報活動(会員向け) 対外広報活動
(市民向け・広報誌の発行、テレビ番組制作など)
マスコミ・報道機関対策
(新聞社・テレビ局・ラジオ局)
会報(医報)
発行回数
(発行部数)
事紛争・医療事故に対する
会員への情報伝達
札幌市 ・年12回
(3,950部)
・機関誌への記事掲載
・講演会
・広報誌「健康さっぽろ」(年/120,000部×2回)
 ※誌上で野球観戦チケットやホテルの食事券が当たるアン ケートを実施する
   など読者を惹きつける工夫をこらす
・ラジオ番組「健康いちばん」(週1回)
・年2回懇談会を開催
・不定期に記者会見、プレス発表
仙台市 ・年12回
(1,760部)
  ・広報誌「てとてとて」(年/20,000部×2回)
 「健康だより」(年/63,000部×2回)
・ケーブルテレビ番組「家庭の医学」(週3回)

 ※毎月開催する市民医学講座を基に制作
・年1回懇談会を開催
千葉市 ・年12回
(1,070部)
・役員会 ・広報誌「すこやかChiba」(年/45,000部×2回) ・年1回懇談会を開催
東京都 ・ニュース 年12回
(22,000部)
・雑誌 年10回
(21,300部)
・医事紛争概況報告
 (事例集)作成
・講演会
・広報誌「元気がいいね」(年/200,000部×6回) ・不定期に懇談会を開催
・不定期に記者会見、
 プレス発表
川崎市 ・年6回
(1,300部)
・理事会、各区常会 ・広報誌「ほほえみがえし」(年/100,000部×2回)  
横浜市 ・年12回
(3,600部)
  ・広報誌「みんなの健康」(年/126,500部×6回)
・テレビ番組「メディカルチェックみんなの健康」(週1回)
・不定期に懇談会を
 開催
・不定期に記者会見、プレス発表
名古屋市 ・年12回
(約3,700部)
・理事会、協議会 ・広報誌「ヘルシーなごや」(年/180,000部×2回) ・年1回懇談会を開催
京都府 ・年24回
(5,000部)
  ・広報誌「Be Well」(年/60,000部×3〜4回)
 「みんなの健康KYOTO」(年/100,000部×1回)

・ラジオ番組に情報提供
・不定期に記者会見、プレス発表
大阪府 ・年6回
(17,800部)
  ・府民向け健康教育活動のイベントを開催
・面談や電話による健康相談の実施
・新聞内のコラム欄「ご近所のお医者さん」へ記事提供
・ラジオ番組「ドクターM」(週1回) 「季節の健康」(隔週1回)
・テレビ番組「げんきの素」(週1回) 「健康手帖」(隔週1回)
・年12回懇談会を
 開催
・不定期に記者会見、プレス発表
・ニュースレター配信
堺市 ・月会報12回
・年会報1回
(1,200部)
・勉強会、委員会 ・市広報誌へ記事提供  
神戸市 ・年12回
(2,870部)
・市医師会・各区医師会理事会 ・広報誌「健康と笑顔〜神戸市医師会だより〜」(年/36,000部×3回)
・市民公開講座の開催
・市広報誌へ記事を提供
・新聞内のコラム欄「ご近所のお医者さん」へ記事提供
・タウン誌へ記事提供
・テレビ番組内のコーナー「健康シグナル」(週1回)
・年2回懇談会を開催
・不定期に記者会見、プレス発表
広島市 ・年12回
(2,450部)
・委員会、協議会 ・広報誌「キラリ」(年/50,000部×4回)
・市民公開講座の開催
・新聞内のコラム欄「気になる医学」へ記事提供
・ケーブルテレビ番組内のコーナー「守れますか?あなたの健康」(隔月1回)
・ラジオ番組内のコーナー「医療相談教えて!ドクター」(週1回)
・年1回懇談会を開催
・不定期に記者会見、プレス発表
北九州市 ・年12回
(約2,100部)
・会員宛FAX
・講演会
・健康セミナーの開催
・電話による市民医療相談室の設置
 
福岡市 ・年12回
(2,300部)
・理事会
・講演会
・広報誌「福岡市民健康情報はーとふるふくおか」(年/100,000部×4回) ・年各1回懇談会、
 茶話会を開催
・不定期に記者会見、プレス発表

医師会のイメージアップ戦略
○ テレビ・ラジオ番組を持つ医師会もあり、ラジオ・テレビ番組への出演や市民のお祭りへの参画、市民公開講座の開催、医師会館を一般向けに開放するなど、市民に医師会への理解を深めてもらえるような企画や情報提供を行っている。
○ 12医師会が、一般市民向けの健康情報誌を発行しており、医療機関、公共施設、区役所、保育園、幼稚園、学校、老人会、市民相談会など幅広い所へ配布している。
○ 各医師会とも市民向けのホームページを持っており、また、12医師会がホームページ上に医療機関の検索システムを組み込んでいる。

●十四大都市医師会のフェイスシート

全国 東京都 京都府 大阪府 札幌市 仙台市 千葉市 川崎市 横浜市 名古屋市 堺市 神戸市 広島市 福岡市  
人口
(千人)
127,768 12,577 2,648 8,817 1,881 1,025 924 1,327 3,580 2,215 831 1,525 1,154 1,401  
65歳以上人口
(千人)
25,672 2,300 530 1,634 325 162 152 194 604 409 155 305 195 213  
高齢化率
(%)
20.1 18.3 20.0 18.5 17.3 15.8 16.5 14.6 16.9 18.5 18.7 20.0 16.9 15.2
医師数
(人)
270,371 34,463 5,387 8,332 5,796 3,134 2,259 2,470 6,173 5,895 1,508 4,058 2,899 4,700
医師会員数
(人)
164,254 20,425 2,554 5,909 3,552 1,684 1,005 1,151 3,524 3,302 1,105 2,692 2,170 2,053
医師会入会率
(%)
60.8 59.3 47.4 70.1 61.3 53.7 44.5 46.6 57.1 56.0 73.3 66.3 74.9 43.7
公的病院数 1,785 56 11 14 14 8 13 6 21 20 4 13 11 10
私的病院数 7,241 611 100 182 200 51 33 39 116 119 41 94 78 105
診療所数 97,442 12,269 1,644 3,269 1,271 858 733 872 2,641 1,945 740 1,558 1,209 1,394
養護老人
ホーム数
953 33 8 19 4 2 2 2 6 6 2 9 8 4
特別養護
老人ホーム数
4,966 334 61 163 38 27 24 24 65 48 25 61 42 27
軽費老人
ホーム数
(ケアハウス含む)
1,781 35 44 86 21 12 15 2 10 20 10 9 9 20  
高齢者生活
福祉センター数
410 1 2 4 4 - 2 - - - - 1 1 -  
医学部数
(1学年定員)
80
(7,600)
12
(1,112)
2
(200)
4
(365)
2
(120)
1
(100)
1
(95)
1
(100)
1
(60)
2
(165)
- 1
(95)
1
(100)
2
(200)
 
看護職員
養成施設数
(1学年定員)
1,692
(88,371)
119
(7,118)
36
(1,965)
90
(4,583)
14
(1,619)
9
(520)
9
(618)
5
(280)
12
(1,060)
15
(1,340)
14
(623)
14
(1,129)
5
(715)
9
(1,170)
 
理学療法士
養成施設数
(1学年定員)
231
(11,969)
15
(990)
3
(138)
22
(1,370)
3
(80)
6
(330)
4
(220)
- 2
(110)
12
(670)
- 6
(260)
2
(70)
6
(520)
 
作業療法士
養成施設数
(1学年定員)
178
(7,276)
12
(585)
2
(58)
13
(660)
4
(118)
5
(180)
2
(60)
- 3
(110)
6
(200)
- 4
(140)
2
(70)
4
(280)
 
1日平均
外来患者数
(人:人口10万対)
1,236.3 1,441.0 1,352.0 1,278.5 1,595.5 1,178.8 1,120.7 1,061.6 982.6 1,398.3 1,038.7 1,330.7 1,150.0 1,255.2
1日平均
入院患者数
(人:人口10万対)
30.3 33.8 31.9 32.1 42.9 39.2 28.0 25.8 24.4 35.3 29.1 32.6 32.7 41.3
病床利用率
(%)
84.8 79.9 84.6 85.2 85.8 80.3 81.1 79.3 82.6 83.5 88.3 83.0 87.1 87.9
平均在院日数
(日)
35.7 22.8 36.5 33.2 41.2 25.5 29.2 24.2 26.3 28.0 49.1 31.7 34.8 33.7
※参考資料 医師数、医師会員数 : 第46回十四大都市医師会連絡協議会「フェイスシート」、日本医師会会員統計資料集(平成18年12月31日現在)
         人口、65歳以上人口 : 厚生統計要覧(平成18年度)
         病院・診療所数 : 第46回十四大都市医師会連絡協議会「フェイスシート」、厚生統計要覧(平成18年度)
         養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム・高齢者生活福祉センター数 : 厚労省介護サービス施設事業所調査(平成14年度)
         看護職員養成施設数 : 医学書院看護学校便覧2006
         1日平均患者数(外来・入院)、病床利用率、平均在院日数 : 厚労省平成17年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況

※東京・京都・大阪は都府単位でデータを集計(東京、京都、大阪は都府医師会として十四大都市医師会連絡協議会に参加)
日本の平均在院日数は長いと言われることが多 いが、これは精神・療養病床が入っているためで あり一般病床のみに限ると18.1日となる

<医療情報室の目>
 十四大都市医師会連絡協議会は、昭和39年の名古屋を皮切りに全国の政令指定14都市の輪番により開催されている。毎回、基本資料として各都市のフェイスシートが示されるが、これを概観すると各都市の高齢化率、対人口比の医師数、医師会入会率、患者数、平均在院日数などの状況が一目瞭然である。各都市、各医師会の共通の課題、あるいは固有の事情などが浮かび上がり、全国の大都市に反映された我が国の医療情勢を窺い知ることが出来る。医師会員としては、医師会員の組織率にも大きな関心が向くが、医療費抑制政策に喘ぐ医師の団結が叫ばれて久しい中、我が福岡市医師会では全国平均を下回る43.7%の入会率であることに忸怩たる思いが募る。医師会の存在意義の周知徹底、医師会活動のPRなど確固とした方針の下で医師会が取り組んで行かなければならない課題は多い。
 今年、神戸で開催された第46回十四大都市医師会連絡協議会では、特に「広報活動の新しい取り組み」として、地域社会と双方向に関わる「開かれた医師会」としての広報活動が議論された。地域医療、引いては日本の国民医療の崩壊を防ぐためには、国民の理解と医療従事者への共感が不可欠であり、各地の医師会でも様々な試みがなされている。こうした中、日本医師会のテレビCMがCMフェスティバルで受賞し高い評価を受けたことは、敢えて「医師会」の負のイメージを採り上げたことなど、これまでの医師会の殻を破る大胆な一歩として医師会のイメージアップに貢献した。こうした活動の積み 重ねが国民のシンパシーを呼び、我々が切望する「良質な医療の提供」の土壌作りとなって実を結ぶのだ。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 工藤 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 原  祐 一(広報担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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