医療情報室レポート
 

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2005年 7月 29日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:福岡県西方沖地震への対応−その2−
    モバイル一斉連絡システムの構築


 福岡県西方沖地震の発生から4ヶ月が経過した。今月23日には千葉県北西部を震源とする地震が発生し、東京都を中心に最大震度5強を記録した。天候については予報を元にある程度災害への対策は可能であるが、ある日突然襲われる「地震」への対策は蔑ろにされがちである。日常生活の中で携帯電話などによる通信網が当たり前のように存在する今、災害時における通信手段の確保は不可欠である。
 福岡市医師会では、阪神・淡路大震災から10年目を迎え、非常時の緊急連絡手段を今年2月から開発に着手、6月より「福岡市医師会モバイル一斉連絡システム」の運用を始めた。本システムは、災害時に携帯電話の通信状態が悪くなる影響を殆ど受けず、緊急連絡・安否確認ができるよう構築されたものである。
 医師会単位での緊急連絡システムの導入は全国的にも珍しく、今回は、本システムの概要やアンケート集計結果などについてまとめてみた。


システムの概要

 ★福岡市医師会モバイル一斉連絡システム

本会では、大規模災害や感染症の集団発生などの緊急時に携帯電話の電子メールを利用し「一斉配信・安否確認・情報伝達・情報収集と集計等」を簡単に実施できるシステムを民間企業と共同開発、本年6月1日から運用を開始している。
 
★災害発生時
  ○安否確認 ・・・ 登録会員に一斉同報し安否確認を行う。
登録会員は、送信されたメールからインターネット上のアンケート画面に接続。
登録会員本人の安否、周辺状況、医療機関の被災状況と診療の可否、患者の受け容れ可能体制などを回答。


  ○行政との連携 ・・・ システムで収集した情報を行政などと共有し被害者の救助活動などに活用。

 
★通 常 時
  ○会員への情報配信 ・・・ 会員に必要と思われる情報を配信予定。
(福岡市医師会週報の目次、講演会、研修会など)

  ○リサーチ機能 ・・・ 研修会の参加申込やアンケートの回答など簡単に利用可能。


 ★災害時の通信環境


災害時には通信環境に次のような状況が発生し通常の通信が出来ない。

 

1.

被災地の(通信)施設の機器の故障、断線など。

 

2.

被災者に向けた安否確認の殺到。
    電話が集中し繋がらなくなる輻輳と呼ばれる状況が発生。

 

3.

通信機関が通話を制限する。
    (被災地における救助要請の連絡、被災地内での安否確認など通話が必要となるケースがあるため)


連絡システムの利用イメージとアンケート結果

 

防災対策アンケート
 1 非常持ち出し品の準備について
  ・準備している 42 20%
  ・準備していない 69 34%
  ・リストアップのみ 33 16%
  ・特に準備していない 63 31%
 2 避難場所を決めていますか
  ・職場のみ決めている 27 13%
  ・自宅のみ決めている 34 17%
  ・職場も自宅も決めている 36 18%
  ・特に決めていない 106 52%
 3 ラジオ・テレビ以外の災害情報は?
  ・防災メールに登録 58 28%
  ・地震・津波メールに登録 15 7%
  ・その他のサービスに登録 11 5%
  ・特に考えていない 128 62%
 4 その他の防災対策は?
  ・iモード災害用伝言板サービスに登録 27 13%
  ・市防災マップを持っている 18 9%
  ・防災パック(災害時の必需品)を準備 21 10%
  ・携帯電話用手動充電器を持っている 24 12%
  ・特に考えていない 128 62%
 回答者数 205
 未回答者数 39
防災の日(6/20)アンケート
 ○福岡西方沖地震後、あなたの生活行動等はどのように変化しましたか?
  ・iモード災害用伝言板サービスに登録 49 21%
  ・避難場所を決めた 58 89%
  ・非常持出品を準備した 55 24%
  ・家具等の転倒、落下防止策を施した 93 40%
  ・自宅の耐震診断を行った 6 3%
  ・防災セミナー等に参加した 19 8%
  ・地域の防災組織に参加 3 1%
  ・防災情報をチェックするようになった 108 47%
  ・非常口を確認するようになった 64 28%
  ・携帯の充電をこまめにするようになった 79 34%
  ・携帯を買い換えた 8 3%
  ・変化無し 33 14%
 回答者数 231
 未回答者数 65
システムへの登録方法
本システムへの登録は福岡市医師会会員のみです。
登録される携帯電話からメールでご登録下さい。
登録先は本会会員専用ページに掲載しています。
会員専用ページ
  https://city.fukuoka.med.or.jp/members/mobilesystem.pdf
本システムへの登録料は無料です。
  (登録後のメール受信には受信料が発生します)

 

<医療情報室の目>
★災害時の通信システムの確保
 国内外を問わず、この数年、台風や大雨、地震、津波などの自然災害が相次いで発生している。また、自然災害のみならず、公共の交通機関の事故やテロ事件の拡大など人的な災害も絶えず、安全な地域は既に無いように思われる。
 災害対策の必要性が声高に叫ばれているところであるが、災害時における通信手段の確保は特に都市型災害において威力を発揮するのではないかと考えられる。
 本会のシステムでは、災害時に集計されたデータは行政(消防など)に提供され、被害状況の迅速な把握、避難場所への医師派遣、救急病院の許容を超えた場合の患者の受け入れなどに活用される予定である。
 本システムは一地域医師会内のシステムではあるが、将来的には行政や保健医療福祉の関係機関を含め、県内全体、更には国内全体の緊急医療ネットワークを構築していくことが国民の生命を守る我々医療従事者の責務ではないかと考える。
 本会の連絡システムは運用を始めたばかりで登録している会員は未だ少数ではあるが、本会会員には本システムへのご理解を賜り、是非ご協力をお願いしたいと考える。

★システム導入のポイント
 過去の大規模災害の事例から、どんなに最新の通信機器を駆使したシステムでも、制御を担う基地局が大きな被害を受ければ全く機能しないことを学んだ。
 本会が選択したシステムは、関東大震災クラスの地震にも耐えうる大手民間携帯電話会社のサーバセンターが制御していること、また、防災担当者の携帯電話からも遠隔操作(情報発信・情報収集)を可能にしたことが大きな導入ポイントである。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 津 田 泰 夫(広報担当)・入 江 尚(情報担当)・大 木 實(渉外担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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