医療情報室レポート
 

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2005年 5月 2日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:福岡県西方沖地震への対応 −その1−

 「まさか福岡で・・・」福岡市民の多くがそう感じた福岡県西方沖地震。平成17年3月20日に九州北部を突如襲った地震の規模はマグニチュード7、震度6弱を記録した。福岡市は今まで地震が少ない地域で、古い記録には約100年前にマグニチュード6級の地震の記録が残っているものの、同規模の地震の記録は気象庁にはなく(気象庁の発足は昭和31年)、専門家でさえも想定外の地震であった。
 また、地震後の余震は多くの場合、内陸部で本震後の3日以内、海域では10日以内に発生するとされているが、本震から1ヶ月経過した4月20日にはマグニチュード5.8、震度5強の強い余震に襲われた。
 今回のレポートでは、地震の概況や本会の取り組み等についてまとめてみた。



地震概要


 ★地震の概況

1.

日 時:平成17年3月20日(日)10時53分
震 源:福岡県西方沖
規 模:マグニチュード7.0
震 度:震度6弱〜5強
被 害:[人的] 死者1名 重傷者50名 軽傷者822名
    [物的] 住宅全壊128 半壊4,143

2.

日 時:平成17年4月20日(日)6時11分
震 源:福岡県西方沖
規 模:マグニチュード5.8
震 度:震度5強 (3/20地震発生後、最大の余震)
被 害:[人的] 軽傷者53名 (4/20以降)
    [物的] 住宅被害203

※1、2共に福岡市のデータ



 ★阪神淡路大震災以降の国内の主な地震

発生年月日
(マグニチュード)
震央地名 人的被害 物的被害 最大震度 津波
地震名

平成 7年 (1995年) 1月17日

7.3
兵庫県南部地震
死 6,433
不明 3

家屋被害 248,412※

7※

阪神・淡路大震災

平成12年(2000年)10月 6日

7.3
鳥取県西部
負 182

住家全壊 435
半壊 3,101等

6強
 
平成12年(2000年)鳥取県西部地震

平成13年(2001年) 3月24日

6.7
安芸灘
死 2
負 288

住家全壊 70
半壊 774等

6弱
 
平成13年(2001年)芸予地震

平成15年(2003年) 5月26日

7.1

宮城県沖

負 174

住宅全壊 2棟
住宅半壊 21棟等

6弱
 

平成15年(2003年) 7月26日

6.4

宮城県北部

負 677

住宅全壊 1276棟
住宅半壊 3,809棟等

6強
 

平成15年(2003年) 9月26日

8
釧路沖
不明 2
負 849

住宅全壊 116棟
住宅半壊 368棟等

6弱

255cm
平成15年(2003年)十勝沖地震

平成16年(2004年)10月23日

6.8
新潟県中越地方
死 40
負 4,574

住家全壊 2,867棟
住家半壊 11,122棟等

7

 
平成16年(2004年)新潟県中越地震
※気象庁のデータを元に作成
※阪神・淡路大震災の物的被害及び最大震度は兵庫県のデータ
※震度は体感および周囲の状況から推定されていたが、平成8年4月からは計測震度計により自動的に観測されている。

福岡市医師会の被害

会員医療機関の被害
・・・
建物内外部壁面や天井の亀裂・崩落、水道管の破損、窓ガラス等破損
   
 
医療機器転倒・破損、書庫等器物の破損、PC機器落下・破損  など
医師会館の被害
・・・
会館壁面の亀裂・崩落、書庫等器物の倒壊・損壊、PC機器落下転倒
   
 
電球垂れ下がり、書類の散乱、湯呑み・置物類の破損
   
 
医師会検査センター炭酸ガス培養装置・冷蔵庫 など
福岡市医師会の取り組み

 ★大規模災害対策プロジェクト

福岡市医師会では大規模災害に備え、平成16年10月に「大規模災害対策プロジェクト」を設置。
  (第1回H17/3/16の4日後、第2回H17/4/12の8日後に被災)

医療機関(被災した医師会員)を対象とした災害時対応マニュアルを作成
  ・医療機関は当日、翌日、2日後に何をするのか
    (特に救護所からカルテについて問い合わせが多くなることが考えられる)
  ・通信可能または通信不能の場合の対応

 ★連絡システムの導入

災害時にも通信可能な連絡システム導入(※災害時には携帯電話が繋がらなかった)
  目 的
災害時:安否確認・情報伝達
   
通 常:会員サービスへの情報提供
  内 容
携帯電話メールを利用した「一斉配信・安否確認・情報伝達・情報収集と集計等」を簡単に実施できるシステム
 ★震災フォーラムの開催

福岡市医師会では今回の地震を教訓として次のとおり震災フォーラムを開催することにしている。
  (震災フォーラム第1部「災害と子どもの心のケア」は終了)


 
震災フォーラム第2部:「ITを活用した防災対策」
  日 時 平成17年5月14日(土)15時
  会 場 タカクラホテル福岡
     〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-7-21 TEL:731-1661
  内 容 展示ブース(15時〜17時)
     ○モバイル一斉連絡システム(会員向け「ケータイ教室」同時開催)
     ○日医標準レセプトソフト(ORCA)
     ○福岡市医師会ネットワークシステム(Sefu)
    防災対策講演会(17時〜18時)
     「なぜ電話は繋がらなかったのか!−福岡県西方沖地震−」
       NTTドコモアイ九州潟rジネス営業部長 長崎 忠巳 氏
  対 象 会員、会員家族、従業員
    ※日医生涯教育講座5単位

 
震災フォーラム第3部:市民公開講座「災害・医療フォーラム福岡」
〜 地域の備えを考える 〜
  日 時 平成17年7月30日(土)16時
  会 場 メルパルクホール
     〒810-8541 福岡市中央区薬院4-14-52 TEL:523-1100
  内 容 基調講演
     1)「阪神淡路大震災からの検証−10年を経ての災害医療について−」(仮題)
        日本医師会理事・神戸市医師会会長 川島 龍一 先生
     2)(演題未定)
        福岡大学工学部教授 多賀 直恒 先生
    パネルディスカッション
     (パネリスト)
     ○福岡市長       山崎広太郎 氏
     ○神戸市医師会会長   川島 龍一 氏
     ○福岡大学工学部教授  多賀 直恒 氏
     ○福岡市こども未来局長 荒瀬 泰子 氏
     ○福岡市医師会理事   大木  實 氏
  後 援 福岡市、西日本新聞社
  対 象 会員、会員家族、従業員、一般市民

参加希望の方は福岡市医師会週報第3号(H17/4/15)添付の参加申込書により、本会医務課までFAX(852-1510)にて
お申し込み下さい。

 

<医療情報室の目>
★災害への対応
 「地震はない」と考えられていた九州北部での震災であったため、衝撃も大きく、また、未だ多くの住民が避難生活を余儀なくされている。しかし、阪神淡路大震災も新潟県中越地震も(地震)想定外の地域であったことを思えば、国内どこで大きな地震災害が起きても不思議ではない。今回の経験により改めて災害対策の必要性を痛感した。
 災害発生の際、医療機関は救護所としての面と被災者としての面を持つことになる。
 まずは、患者・従業員・家族の安否確認が必要で、その後は被災状況の把握、救護所として診療が可能かといった判断になると考えられる。また、通信手段が遮断される為、災害時の緊急連絡システムの構築は不可欠である。
 現在、本会では大規模災害対策プロジェクトにて、特に医療機関における災害時の対応を作成し、原案がまとまったところである。今後は、行政と協議を重ねていくことになるが、行政との連携が最も重要な段階である。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 津 田 泰 夫(広報担当)・入 江 尚(情報担当)・大 木 實(渉外担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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