医療情報室レポート
 

bV2  
 

2004年 4月 23日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

印刷用

特集:医療と消費税

消費税が平成元年(1989年)に3%で導入され15年が経過した。平成9年(1997年)には5%に引き上げられ、現在は社会保障費の財源として消費税増税の議論が交わされている。消費税導入当初、仕入れ時における消費税の影響が不明なまま、非課税を受け容れた医療においてその影響は医業経営上深刻な負担となっている。
また、平成15年度の税制改正において消費税法が改定され平成16年4月1日より施行されている。
今回の改定では、消費税の納税義務が免除となる事業者免税点が変更されるほか、仕入れにかかる消費税額をみなし仕入れ率で算定できる簡易課税制度の適用上限の引き下げ、価格表示での総額(税込み価格)表示などが実施されることとなった。
今回のレポートでは、医療にかかわる消費税について改めて考えてみると共にその影響や4月からの改定内容、また、日医の今後の対応等について特集した
  


医療機関における消費税の流れ
 
消費税は損税

 ★消費税課税の原則
  @ 最終消費者が消費税を負担する
  A 事業者には損が発生しない

 ★医療機関が被る損税
  消費税は医療、福祉、教育、金融、資本取引等一部に関しては非課税措置をとっているため、医療機関の収入である診療報酬については非課税となっている。すなわち、医療機関は患者から診療報酬についての消費税を徴収することが出来ない仕組みとなっている。
しかし、薬剤費・医療機器・医療材料費・水道光熱費・外注事項(検査・給食・その他の委託料)など、医療提供に必要なサービスについては全て消費税が課税され、消費税課税の原則に反し、最終消費者ではない医療機関が消費税を負担している。
一般的に医療は非課税であるため、医療機関に消費税は無縁のものであると思われがちであるが、消費税は医療機関の経営を経済的な負担(損税)として圧迫し続けている。

 ★逆ざやの問題
  医療情報室レポートNO.70「薬価制度」の中でも触れているが、薬剤費・医療機器・医療材料費等の消費税については医療機関で負担しており、薬価調整幅が益々低くなっていく中、仕入れにかかる消費税5%は逆ざやの問題を起こしている。
さらに院内処方の医療機関では管理料が必要で、既に赤字を引き起こしているのが現状である。 消費税増税論議が行われる中、現状の医療への適正な措置については何の議論も行われず、早急な改善が必要である。

平成16年4月改正の内容

 ★4月1日から実施されている改正消費税法の主な点
  1) 事業者免税点制度の適用上限の引き下げ (納税義務を免除される事業者の特例)
 

  2) 簡易課税制度の適用上限の引き下げ (仕入れ消費税額をみなし仕入れ率で簡易に計算する方法)
 
 簡易課税制度を適用することが出来る基準期間における課税売上高の上限が従来の2億円から5,000万円に引き下げられた。
 

    簡易課税制度の概要
      消費税の税額は、通常は次のように計算する。 (課税売上高)×4%−(課税仕入高)×4%
       しかし、基準期間における課税売上高が5,000万円(H16.4〜)以下で、制度適用の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる簡易課税制度の適用を受けることができる
 この制度は、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするというもの。この一定割合をみなし仕入率といい、売上げを卸売業、小売業、製造業等、サービス業等及びその他の事業の5つに区分し、それぞれの区分ごとのみなし仕入率が適用される。
   みなし仕入率      
  第一種事業( 卸 売 業 ) 90%    
  第二種事業( 小 売 業 ) 80%    
  第三種事業( 製 造 業 等) 70%    
  第四種事業(その他の事業) 60%    
  第五種事業(サービス業等) 50% 医業の場合はみなし仕入れ率50%

  3) 総額表示の義務づけ  
 事業者(医療機関)が消費者(患者)に対して、値札やチラシあるいはカタログなどによって商品等の価格を予め表示する場合には、消費税額を含めた支払総額の表示が義務付けられてる。尚、併せて税額や税抜き金額を表示することは差し支えない。
  (注) 消費者に対する価格表示であれば、値札やチラシだけでなく、次のようなものを含め全てが対象
 例・・・新聞、雑誌、テレビ、インターネット、ホームページなどを利用したものなど


今後の動き

  日本医師会定例代議員会は最終日の2日、植松治雄・新執行部が代表・個人質問への答弁を行った。
消費税による医療機関の損税について、医療機関の損税を解消するため、軽減税率の適用などを求める具体案をまとめ、自民党や政府の税制調査会に働きかけていく意向を示した。稲倉正孝代議員(宮崎)の質問に植松会長が答弁した。
医薬品や医療材料を購入するときにかかる消費税は、診療報酬が非課税であるために、患者に転嫁することができず、医療機関の持ち出しになっている。
植松会長は、「医療の公共性を考えると、軽減税率だったら何とかなるのではないか。早急に検討することを精力的にやり、それを自民 党や政府の税調に上げて、政治力とのペアで取り組む必要性を感じている」とした。従来の執行部は、診療報酬を課税対象にしたうえで、税率を0%にする「ゼロ税率課税導入」を主張していた。
    <日本医師会「JMA PRESS NETWORK」ニュース(2004.4.2)>
  前倒しで税制改正論議 自民税調、早くも始動
自民党税制調査会(津島雄二会長)は8日、党本部で総会を開き、2005年度税制改正に向けた議論を開始した。党税調の例年の活動期間は11〜12月だが、増大する社会保障費用の財源確保のため、07年度をめどに実施する方針の「消費税を含む抜本的税制改革」(04年度大綱)も視野に入れ、諸課題を整理するため、「勉強会」を開催する形で大幅に前倒しした。特に05年度税制改正では、年金制度改革と地方税財政の「三位一体改革」を踏まえ、所得税の定率減税の縮小・廃止を含めた個人所得課税の抜本的見直しなどが大きなテーマ。税制改正大綱の決定は例年通り、年末となる見通し。
    <日本医師会「JMA PRESS NETWORK」ニュース(2004.4.9)>


<医療情報室の目>
★消費税は今後増税に
   医療は消費税導入時に消費税非課税を安易に受け容れたが、税率が3%から5%へ引き上げられ、今又、年金目的消費税など新たな増税についての議論が行われている。今後、税率がさらに上がれば、今以上に薬剤・医療材料の購入制限や人件費の削減を余儀なくされるであろう。消費税の基本的理念と社会保障全体の財源との関係の推移に注目しておきたい。
★総額表示はまやかし?
   今回改定された消費税法における総額表示について、何故今になって総額表示にするのか、よく分からないまま始まった感が強い。その理由を財務省は、従来の税抜き価格表示では清算の際にいくら払えばよいか解らないので、消費税相当額を含む支払総額が一目で分かるようにするために行ったと説明している。しかし、実際に消費者はそんなに困っているわけでもなく、必要ならば、消費税導入当初から実施するべきであっただろう。
 制度導入から10年以上経過してからの総額表示制実施は将来の増税を見越した下準備であり、消費者の痛税感を無くし、感覚を麻痺させるものであると言っても過言ではない。
 近い将来の消費税増税は免れないと言われているが、我々医療従事者にとっても多大な影響を与え続けている消費税増税について、政府の動向に注視していく必要がある。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 津 田 泰 夫(広報担当)・入 江 尚(情報担当)・大 木 實(渉外担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


  医療情報室レボートに戻ります。

  福岡市医師会Topページに戻ります。