医療情報室レポート
 

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2003年9月26日
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:個人情報保護法−その2−

 個人情報保護法では「5,000件を超える個人情報を保有している個人情報取扱事業者」が対象とされ、医療機関も本法律の対象に含まれており、カルテ等の診療情報の開示が原則義務化されることになっている。
 本法律が成立する一方で、カルテ開示に関する個別法の法制化について、厚生労働省では本年6月に「診療に関する情報提供などの在り方に関する検討会」の最終報告書では見送ることとし、9月に通知した「診療情報の提供等に関する指針」で診療情報の提供を促進する指針を示している。本指針における「診療情報」等の定義については、前回の特集でガイドライン(案)の段階として一部紹介したが、今回はその他の内容について特集してみた。

個人情報保護法による情報開示




厚労省提示の診療情報の取り扱い


  厚生労働省通知の「診療情報の提供等に関する指針」では診療情報の開示について次の通りとしている。
   ※「診療情報の提供等に関する指針」ホームページ http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/150916-b.pdf

 ★診療情報の開示

 

診療記録の開示に関する原則

 
 
・医療従事者等は、患者等が診療記録の開示を求めた場合には、
 
 
 原則としてこれに応じなければならない。

 
 
・診療記録の開示の際、患者等が補足的な説明を求めたときは、
 
 
 医療従事者等は、速やかに応じなければならない。
 
 
(担当の医師等が説明を行うことが望ましい)

 

診療記録の開示を求め得る者
 
 
・診療記録の開示を求め得る者は、原則として患者本人

 

本人以外の場合
 
@
患者に法定代理人がいる場合には、法定代理人
 
 
(ただし、満15歳以上の未成年者については、疾病の内容に
 
 
よっては患者本人のみの請求を認めることができる。)
 
A
診療契約に関する代理権が付与されている任意後見人
 
B
患者本人から代理権を与えられた親族及びこれに準ずる者
 
C
患者が成人で判断能力に疑義がある場合は、現実に患者の
 
 
世話をしている親族及びこれに準ずる者


 ★診療情報の提供を拒否できる場合

 @診療情報の提供が、第三者の利益を害するおそれがあるとき

<事 例>
患者の状況等について、家族や患者の関係者が医療従事者に情報提供を行っている場合に、これらの者の同意を得ずに患者自身に当該情報を提供することにより、患者と家族や患者の関係者との人間関係が悪化するなど、これらの者の利益を害するおそれがある場合


 

診断をしていく上で患者の性格を家族等の第三者に聞き、カルテに記載する。患者の性格について記載されたカルテを患者本人に開示した時、患者と家族等との間で摩擦が生じる場合など


 A診療情報の提供が、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるとき

<事 例>
症状や予後、治療経過等について患者に対して十分な説明をしたとしても、患者本人に重大な心理的影響を与え、その後の治療効果等に悪影響を及ぼす場合


 

がんの告知がされていない患者の場合や精神障害者の患者の場合など


 

個々の事例への適用については個別具体的に慎重に判断することが必要。
 

医療従事者等は、診療記録の開示の申立ての全部又は一部を拒む場合には、原則として、申立人に対して文書によりその理由を示さなければならない。また、苦情処理の体制についても併せて説明しなければならない。


 ★遺族に対する診療情報の提供

 

医療従事者等は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対して、死亡に至るまでの診療経過、死亡原因等についての診療情報を提供しなければならない。
 

診療記録の開示を求め得る者の範囲
患者の配偶者・子・父母及びこれに準ずる者(これらの者に法定代理人がいる場合の法定代理人を含む。)
 

遺族に対する診療情報の提供に当たっては、患者本人の生前の意思、名誉等を十分に尊重することが必要である。


医療現場における情報取扱の変化


  医療現場では情報の取り扱いについて次のように変化すると考えられる。



<医療情報室の目>
★今後の問題点
 診療情報の取り扱いについてはカルテ開示の個別法制化が問題とされることが多いが、従来から日医では「診療情報の提供に関する指針」で示しているように、積極的な診療情報開示を勧めており、法的な枠組みという点から言えば、個人情報保護法で十分対応できると考えられる。
 カルテの記載について、現在では日本語・英語・ドイツ語・その他略語等で記載されている等統一されておらず、開示を前提とするならば記載内容・範囲、病名等の規格統一が必要になり、また、電子カルテの普及も進みつつあることから、同様にデジタル上の統一規格も必要となってくる。その他にも、診療情報管理士など専門の人員確保、大学や研修の時点から診療情報記載についての教育等の問題も予測でき、これらに係る整備・費用については国レベルの検討が必要であろう。
 患者側にも、診療情報が開示されることで、自分や家族にとって重い情報を受け止める場合もあり、開示後の自己責任の取り方や心理的なフォローも必要であると考えられる。
 また、各種ガン検診や血液検査などのデータの取り扱いについても変化することが予想されるが、個々人の情報が衛生指針の基本資料となり公衆衛生向上につながることについて幅広い広報と国民の協力が必要である。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄 均(広報担当)・江 頭 啓 介(地域医療担当)・入 江  尚(情報担当)


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