医療情報室レポート
 

bS6  
 

2002年3月1日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:ペイオフ対策
          
 
金融機関が破たんした場合に預金保険機構が預金者に対し元本1,000万円とその利息を直接支払う「ペイオフ」が、平成14年4月から解禁となる予定です。従来は預金全額保護の特例措置により預金の全額保護が保障されていましたが、14年4月以降は破たん金融機関の財産の状況に応じ、元本1,000万円とその利息を超える部分の払い戻しが一部カットされる場合があります。
今回は、医業経営の面で各医療機関でも対策が必要となるペイオフについて特集します。

 
※ 預金保険機構:
金融機関が預金等の払戻しを停止した場合などに預金者を保護し、信用秩序の維持に資することを目的として政府、日本銀行及び民間金融機関の出資により設立された機関

ペイオフとは
万が一金融機関が破たんした場合に、預金保険機構から「保険金」として預金者に直接支払うことを「ペイオフ」という。 預金全額保護の特例措置の終了により、元本1,000万円とその利息を超える部分が一部カットされることがあるという意味で、 「ペイオフ解禁」というように使われることもある。


ペイオフ解禁の時期と預金の種類


   
定期制預金等は平成14年4月から
 
定期預金・定期積金・貯蓄預金・掛金・通知預金・納税準備預金・元本補てん契約のある金銭信託(ビックなど貸付信託を含む)
 
  金融債(保護預かり専用商品に限る)・これらの預金等を用いた積立・財形商品  

決済制預金は平成15年4月から
  普通預金・当座預金・別段預金

対象外の預金等  
  外貨預金・譲渡性預金・無記名預金等・架空名義預金等・導入預金等・元本補てん契約のない金銭信託(ヒットなど)





実際の預金保護方法

−資金援助方式を優先−
   万が一金融機関が破たんした場合に、預金保険機構から預金者に直接保険金を支払う「ペイオフ方式」は、破たん金融機関の金融機能が停止し精算されるため、健全な金融機関を受け皿として営業を譲渡し、決済サービスなどの金融機能を移管させ維持する資金援助方式」を優先し、混乱や処理コストを最小限度に止める方針とのことです。

−元本1,000万円超の部分は概算払い率に応じ払戻−
   「ペイオフ方式」「資金援助方式」いずれの場合においても、保証されるのは元本1,000万円とその利息までであり、元本1,000万円を超える部分とその利息については、破たん金融機関を破産手続きした場合に弁済が見込まれる額(精算見込額)を考慮して決定される概算払い率に応じた支払額となります。

「名寄せ」作業

−1金融機関につき1預金者−
   保険金の支払い保証額は、1金融機関につき、個人、法人ともに元本1,000万円とその利息となります。
   1預金者が、破たんした金融機関の複数の支店に預金等の口座を有している場合には、当該金融機関単位で預金者の名義ごとに名寄せ」が行われ、その合計額が対象になります。

−法人代表者名義と個人名義−
   法人の代表者名義の預金等は、その法人の預金として計算され、代表者個人の預金等に「名寄せ」されることはありません。

−個人事業所の場合−
   法人格を持たない個人事業者は、事業用の預金であっても個人用の預金と「名寄せ」され、1預金者として扱われます。

−複数の預金の取扱い−
   普通預金や定期預金などを1金融機関に複数保有し、合わせて1,000万円を超える場合、保険金の支払保証は次の順序で決められます。
   @当座預金 A普通預金 B定期預金など期限のある預金については弁済期(満期日)が早いもの、弁済期が同じ場合は金利の低いものを優先する。

借入金がある場合

−預金との相殺可能−
   預金者が破たんした金融機関から借り入れを行っている場合、その借り入れについて、預金規定・借入約定等の定めに基づいて預金等と相殺できる場合があります。相殺を行う場合は預金者が破たん金融機関にその旨を意思表示することが必要となり、預金保険機構や破たん金融機関が自動的に行うものではありません。
   預金者が元本1,000万円を超える預金等を有している場合、元本1,000万円を超える部分は一部カットされることがありますので、一般的には借入金と相殺した方が預金者にとって有利になると考えられます。
   尚、定期預金等期限(満期)のある預金等については、満期が到来していない場合でも相殺できるよう多くの金融機関において預金規定の改定が進められていますが、相殺ができるように規定を改正しているどうかは取引金融機関に照会する必要があります。

ペイオフ対策
  (想定される対策の一部を紹介するもので、推奨するものではありません。)

−金融機関の分散−
   複数の金融機関に預金を分散し、それぞれ元本1,000万円以内に収める。
    → 金額が巨額な場合資金管理が煩雑

−金融機関の選択−
   金融機関が発行するディスクロージャー誌やホームページ等により、自己資本比率や不良債権の状況等をチェックし、経営状態を把握する。
   外部の格付け機関が発表している金融機関の格付けを参考にする。
   → 格付け機関により評価が異なる場合があるなど判断が困難

−借入金との相殺−
   借入金がある場合は預金との相殺が可能であるか取引金融機関に確認しておき、破たんした場合は預金と借入金とを相殺する。
   → 預金者からの意思表示が必要

−決済性預金への移行−
   普通預金や当座預金は平成15年3月末まで全額保護されるため、時限的な対策として定期制預金等から預金を移行させる。
   → 有効期限は1年間、利息の減少



<医療情報室の目>

★金融機関自身の経営努力・預金者の自己責任
当然のことながら、金融機関が破たんしないことが最も重要であり、今回のペイオフ解禁を控え各金融機関の健全経営に向けた努力が求められます。また、預金者自身も自己責任が求められることから、医業経営の面からも制度への理解と情報収集を行い、これから検討していく必要があると考えます。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 百冨 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 江 頭 啓 介・入 江  尚


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