医療情報室レポート 
 

bP7  

1999年9月30日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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 特集:准看護婦(養成)制度  
 
 
  厚生省の「准看護婦の資質の向上に関する検討会」と「准看護婦の移行教育に関す
  る検討会」がそれぞれ報告書をまとめて終了しました。
  そもそも両検討会は平成9年12月に坪井日本医師会長と厚生省の谷健康政策局長
  (当時)との間に交わされた文書により設置されたものであり、翻せば准看護婦制
  度の存続が前提で検討が開始されたといえます。
  昨今、両検討会の話題に加え看護協会の活動等が報道される中で、あたかも准看護
  婦制度が廃止されるような印象をお持ちの先生もおられるかも知れませんが、准看
  護婦制度は堅持されております。
  しかしながら検討会にてまとめられた新カリキュラムへの対応など、今後の課題も
  多く残されています。
  今回は准看護婦制度について、これまでの経過、日医の見解などについてまとめま
  した。
 
 
准看問題−これまでの経過
 
 
   ○平成7年10月:厚生省内に「准看護婦問題調査検討会」設置
 
   ○平成8年12月:准看護婦問題調査検討会報告書、「21世紀初頭の早い段階を目途に、看護婦養成制度の統合
              に努めること」を提言
 
   ○平成9年8月:日本医師会「看護問題検討委員会」報告書をまとめ、21世紀の看護体系に三層構造が必要で
              あり、現在の准看護婦制度を改革して存続させることを提言
 
   ○平成9年12月:坪井日医会長宛に厚生省の谷健康政策局長名で「准看護婦問題調査検討会報告書の今後の対
              応について、@地域医療の確保と看護の質の向上を図る観点から、まず准看護婦養成の質
              的向上のための検討から行う。A移行教育については看護職員の資質の向上のため、また
              就業経験が長い准看護婦が希望している看護婦への道を広げるためのものとして検討す
              る。」との文書通知
 
   ○平成10年3月:厚生省内に「准看護婦の資質の向上に関する検討会」「准看護婦の移行教育に関する検討会」
              発足
 
   ○平成11年4月:「准看護婦の移行教育に関する検討会」報告書、移行教育を就業経験が10年以上ある准看を
              対象に5年間の時限措置として実施、理論教育は放送大学を活用するなどを盛り込む
 
   ○平成11年6月:「准看護婦の資質の向上に関する検討会」報告書、准看養成カリキュラム時間数を現行の1500
              時間から約400時間多い1890時間以上とし、平成13年4月から実施することを盛り込む
 
 
准看護婦の移行教育に関する検討会−報告書概要−
 
 
   ○移行教育は就業継続を前提とする。
 
   ○移行教育の対象は就業経験10年以上の准看護婦・士で希望する者
 
   ○特別の措置として実施する観点から5年間の時限措置とする
 
   ○教育時間は31単位930時間
 
   ○自宅で学習でき全国的に均一な教育を可能とするため、理論学習は放送大学の活用を原則とする
 
   ○実習等技術学習については既存の養成所の空き時間を活用
 
 
准看護婦の資質の向上に関する検討会−報告書概要−
 
 
   ○准看護婦養成カリキュラムの総時間を1890時間とする
 
   ○基礎科目を現行の約半分の105時間にする
 
   ○専門基礎科目には「看護と倫理」「患者の心理」を、専門科目には「精神看護」を新たに設ける
 
   ○50人以下としていた1学級定員を施行後校舎の新築、増改築または全面改築を行う場合40人以下とする
 
   ○従来2人以上としていた専任教員を専門科目ごとの5人の配置とする(準備期間を考慮し当分の間は3人で可)
 
 
日本医師会の見解
 
 
   ○准看護婦制度及びその養成所存続問題は既に解決されたこと
       「准看護婦の移行教育に関する検討会」「准看護婦の資質の向上に関する検討会」両検討会は准看護婦
       制度の存続か廃止かを検討するものではなく、准看護婦制度の存続を前提として、あくまでも「准看護婦」
       の資質の向上を目的としている。
 
   ○日本の看護体制には三層構造が不可欠
       わが国の看護体制は看護職員の三層構造(看護婦・准看護婦・看護補助者)を維持しつつ質的向上を図
       っていくことが本筋である。地域のかかりつけ医の6割強は准看護婦を採用しており、准看護婦制度廃止
       は即、地域医療の崩壊につながり、国民に大きな不利益を与える。また、少子・高齢社会に対応する医療
       介護提供体制の整備・再構築のためには、准看護婦制度の存続は不可欠である。
 
 
医師会の取り組み
 
 
   ○第30回中国四国九州地区医師会看護学校協議会(8月21・22日開催)、厚生大臣宛に要望書を採択
 
     要望内容:@准看護婦養成の存続(准看護婦制度の堅持)
 
            A准看護婦および看護婦養成所運営補助金の削減を是正し、従来通りの補助金の復元
 
            B准看護婦養成所のカリキュラムの改正、指定基準等改正に伴う専任教員増および条件整備に対
              する補助金の増額
 
            C准看護婦の移行教育についての十分な情報提供、技術学習の移行教育所に対する援助・協力
 
            D看護婦養成所(2年課程)の指定基準等改正に伴う専任教員増および条件整備等に対する補助金
 
            E臨床実習病院確保への援助・協力
 
            F国家試験の模範解答および合格基準の公表
 
 
今後の検討課題
 
 
   ○新カリキュラムへの対応
       「准看護婦の資質の向上に関する検討会」にて決定された総時間数1890時間は、平成13年度から実施され
       る予定といわれている。もしこのまま完全実施されれば、カリキュラムをいかに組むか(就業しながらの授業
       実施が継続できるか)、専任教員、実習施設の確保ができるか、またその体制整備のための予算措置を確
       保できるかどうかが大きな問題。
 
   ○移行教育の実施
       技術学習を行う移行教育所として既存の養成所の空き時間を利用することを想定しているが、5年間の時限
       措置であり、どれだけの養成所が協力してくれるか、受講者は就業継続が前提であるが勤務先の理解が得ら
       れるかなどの課題が残されている。
 
 
<医療情報室の目>
★これからの高齢社会において准看護婦の役割は重要
 少子高齢社会の到来、介護保険制度の施行に伴い、多様な看護・介護サービスが要求される中、地域医療を  支えるかかりつけ医を補助する看護職として准看護婦はますます重要な職種であると認識しています。  単に看護婦免許を取得するための必要条件的資格としてでなく、看護職を目指す者の選択肢の一つとして  制度の中で確立させるべきであると考えます。
 そのためには、制度の廃止論議ではなく、現在の看護体制の在り方、地域の実状、地域医療への貢献度等、  十分に整理して検討していくことが望まれるところです。

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