保険証1枚で誰もが平等に医療を受けられる。そんな日本の医療制度が崩
壊しかけています。今回は、日本医師会の常任理事、西島英利さんに、日
本の医療制度の「今」をわかりやすく解説していただきました。

1枚の保険証でいつでも、どこでも、
 誰でも
問‥国民皆保険制度というのはどんな医
療制度でしょうか?知っているようで、
みんなよく知らないんではないかと思い
ますが?
西島‥今、日本は「国民皆保険制度」をと
っています。先進国と比べても日本の保険
制度は一番進んでいます。主には、国民健
康保険と、健康保険組合の2つで保険制度
が構成されていますが、国の制度で作られ
ている保険ですから、1枚の保険証で、い
つでも、どこでも、誰でも、必要な医療が
受けられます。
この、「いつでも、どこでも、誰でも」と
いうのが重要なポイントです。外国の、例
えばアメリカの医療保険制度は、民間の保
険会社が運営をしていますから、誰でも、
どこでもというわけにもいきません。保険
によってまかなえる治療が違ったり、医療
機関が指定されていたりしますから。

アメリカと比べると・・・
問‥具体的にはどういうことでしょうか。
西島‥例えば心臓の手術なんかした時に、「とても
あなたが入っている民間保険では出来ません」とい

うような話になります。「これだけの保険だったら

ココまでですよ」それがアメリカの民間保険なんで
す。何日間しか入院させないというのもあるので、
払えないなら出ていきなさい、というわけです。
 実は、日本でもこの制度を取り入れようという
動きがあるんです。
 
新たな動き
問‥それは、皆保険制度とどう違うんですか?
西島‥1枚の保険証でいつでも、どこでも、必要な医療を受けられるというのが
公的保険制度ですね。
 ところが、治療法に関して、まだ本当に効果があるのかどうかが分からないと
いうものがあります。でも、その治療法をやってみたいという人もいるわけです
ね。ところが、効果があるかどうかがわからないもには公的保険はつかえない、
その病気の治療に関してはすべて自由診療、自己負担となるんです。
 患者さんの側から考えると、「この自由診療はちょっと高いですけども、こっ
ちがいいですよ。」と言われたら、患者さんは藁をもつかむ気持ちですから「じ
ゃあそれやってください。それぐらい自分で払います。」と言いかねないですよ
ね、命の問題だから。そうすると経済的に誘導されちゃうわけです。本当に、そ
の治療が効果的かどうかというのが、全然検証されないまま、「実はこれはです
ね、うちの独特のやり方でやってね、こっちの方が良いんですよ。」といわれた
ら、信用しちゃうでしょ。これを認めないというのが今の保険制度です。
 財務省も、今の公的保険の守備範囲の見直しという言い方をしていますが、今
公的保険で見られる部分を縮小して基本的なと
ころしか見ない、後は全部自由診療にして、民間
保険会社に肩代わりをさせる、これが混合診療な
んです。
 今は、収入に応じて健康保険料は違いますよね。
だけど、医療の内容は何でも受けられるじゃない
ですか。でも、混合診療が解禁されてくると、ど
れだけ民間保険をかけているかで受けられる治療
が変わってくるし、お金がなけりゃ民間保険がか
けられない、つまり治療を受けられないというこ
とになるんです。それが今、目の前に来ているの
です。
 
特定療養費制度
問‥それは大変ですね。この混合という
言葉は、国民健康保険の1枚の保険証と
民間の保険との混合という意味になるん
ですね。
西島‥本来は公的保険と自由診療の「混合
」なんですが、結果的にそうなっちゃうん
ですよ。
 ただ、現在混合診療全部認めていないの
かと言うと、実はそうじゃなくて、本当に
必要な医療は、特定療養費制度という制度

があります。これと、これと、これは、いわゆる混合診療を認めるよ。という制

があるんです。
 それは大学病院とか、最新の治療とか研究している所から申請があって認めら
れれば、公的保険制度とセットで、治療が出来るようになっています。これが、
特定療養費制度です。ですから、今の制度で患者さんが困らないようにちゃんと
なっているのですね。
 
やっぱり日本の国民皆保険制度一番!!
問‥効率性や医療の質についてはどうなんでしょうか
西島‥最近、効率的な医療、質の高い医療を行うために株式会社の病院経営を
解禁せよ、ということが盛んに言われていますが、すでに解禁しているアメリ
カでは株式会社の病院の方が、死亡率が高いという結果が幾つもの本に出てい
ます。それはどうしてかといいますと、利益を追求しますと、コストが問題で
す。医療の中で一番大きなコストは、実は人件費なんですよ。その人件費のな
かで一番多い人件費が看護師なんです。ということは、コストを下げるという
ことになると、看護師の数を減らして、コストを下げるというやり方を、実際
にしているわけですね。ですから、結局、看護
師の数が少ないということは、医療の質が下が
るわけですから、当然、死亡率が高くなるわけ
ですね。
 現在、日本の医療費は世界の先進諸国の中で
最低ランク(18番目)なんですが、寝たきり
で無い人の寿命が何歳なのか、いわゆる「健康
寿命」は世界一です。そうすると、これだけ安
い医療費で、世界一の健康寿命を出してきてい
る、つまりこれ以上の効率性は無いですよね。
 もう一つ、大切なポイントは、世界一乳児の死亡率が低いということです。
このようなことからも、日本の国民皆保険制度が一番だといえるのではないで
しょうか。
 
 なるほど、患者の側としてもいろいろ学ぶ必要性がありますよね。
 では、最後に、「医者の不養生」という言葉がありますが、先生ご自身
の健康法をお聞かせ下さい。
西島‥私の一番の健康法はですね、お酒を飲む時は楽しく飲んで、そして、楽
しくカラオケを歌う。これですね。楽しくお酒を飲むというのは大事なんです
ね、愚痴を言ってお酒を飲むのは健康上よくないですね。そして、散歩でしょ
うね。今、徒歩で1日40分ぐらい歩きます。ちょっと早足でね。